2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20H00941
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
青木 達也 宇都宮大学, 地域デザイン科学部, 技術専門職員
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Project Period (FY) |
2020-04-01 –
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Keywords | 歴史的遺産 / 馬車鉄道 / 鉱山都市 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、日本の近代化・産業化に寄与した歴史的遺産が地域の再生に活用されている。そして、歴史的調査・研究が地域の個性と魅力を引き出す支えとなっている。 日光市足尾町では近代鉱山都市として栄えた歴史とその遺産を活用したまちづくりを進めており、調査研究が進められて来た。 本研究はこれまで調査が十分に進められていなかった「馬車鉄道」を対象とし、その歴史的変遷の詳細を明らかにしながら、価値の検証及び当該遺産の絞り込みに資するための知見を取り纏めようとするものである。古河機械金属が所蔵する一次史料、明治期の鉱山法、他鉱山の軌道類が示されている文献、鉄道および軌道の法に関する文献、地元の識者に聞き取り調査を進めて得られた史料や文献を中心に調査を進めた結果、足尾銅山では富鉱脈の発見とそれに伴う生産体制の増強がきっかけとなり、燃料、生活物資、銅、機械類の輸送の必要性の向上、そして、道路整備と荷車による増強を経て、索道と馬車鉄道の手段が採られることが一次史料で裏付けられた。また、荷車のための道路整備がその後の馬車鉄道に活かされていたことも明らかとなった。いっぽう、鉱山と鉄道の政策の観点からすれば、馬車鉄道の敷設事業はちょうど鉱山の法と軌道の法により鉱業者に対して坑外に軌道を敷設する権利が示された時代に進められた事業であったため、国が進めた鉱山と軌道の法律の整備に従いつつ、足尾銅山側に敷設の許可を与えることになる県や町において、どのような論拠から許可を与えるべきかといった迷いが生じていたことも明らかとなった。このほか、敷設工事に関する指示や運用上の規則などを記した命令の内容、日光と細尾間の軌道が途中で馬車鉄道から牛車鉄道へと変更となった事情なども明らかとなった。なお、馬車鉄道の敷設計画図の発見もあったため、今後の遺構調査への発展が期待できる成果が得られた。
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