2020 Fiscal Year Annual Research Report
大腸菌による無機物質接着性と金属吸着性を併せ持つペプチドの発現方法の検討
Project/Area Number |
20H00947
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
佐藤 幸保 秋田大学, 理工学研究科, 副総括技術長
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Project Period (FY) |
2020-04-01 –
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Keywords | 金属吸着性ペプチド / シリカ微粒子形成能 / 遺伝子組換え大腸菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
筆者の所属研究室では,接着性ペプチドと金属結合性アミノ酸からなるペプチドを種々のターゲット金属と結合させた後に多孔性シリカ粒子と混合すると,このペプチドは多孔性シリカ粒子の細孔内に安定的に接着し,金属脱離後に残ったインプリント空孔はターゲット金属に対して高い選択性を有することを明らかにした。しかし,化学合成法による金属吸着性ペプチド(Metal Binding Peptide;MBP)の生産は高コストであるため,遺伝子組換え大腸菌を用いて安価に発現・生産する方法を検討した。
はじめに,MBPの遺伝子を有する発現ベクターpCOLADuet-1-MBPを構築し,これにより形質転換した大腸菌BL21(DE3) を用いてMBP生産を試行したが,明確なMBPの発現を確認することができなかった。
次に,珪藻の持つ天然のバイオシリカは塩基性ポリペプチドに含まれるR5ペプチドがケイ酸を沈着させて形成されることに着目し,ペプチドの周りにシリカ微粒子形成能を持つ遺伝子組換え大腸菌の作成を目指した。MBPの両端にR5ペプチドを付加したポリペプチドR5His6の遺伝子を有する発現ベクターpCOLADuet-1-R5His6を構築し,pCOLADuet-1-R5His6またはpCOLADuet-1-MBPを用いて大腸菌BL21(DE3)を形質転換した。TEOSの存在下で組換え大腸菌を培養して得られたMBP-シリカおよびR5His6-シリカは,FT-IRでは 1080 cm-1 付近にSi-O伸縮振動に由来するピークが見られた。また,SEM-EDSによりSiを主成分とすることが分かった。一方,空のベクターを導入した大腸菌ではTEOS共存下においてシリカ形成は認められなかった。 これらの結果から,遺伝子組換え大腸菌の培養によりMBPまたはR5His6が結合したシリカ粒子を直接生産できる可能性が示された。
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