2020 Fiscal Year Annual Research Report
単一細胞レベルでのカルシウム反応計測に基づくスクリーニングシステムの確立
Project/Area Number |
20H01005
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
石川 有紀子 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 技術職員
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Project Period (FY) |
2020-04-01 –
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Keywords | 共発現 / 受容体 / オレキシン |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者の所属する研究室では、新規睡眠障害治療薬の開発を目指して、覚醒維持に不可欠な神経ペプチドであるオレキシンの受容体を標的とした低分子化合物の探索を行っている。その評価にはオレキシン受容体の安定発現株(CHO細胞等)の細胞内カルシウム上昇反応を指標としてきたが、よりin vivoに近い条件での低分子化合物への応答を検討するために、新たに一過性発現系でのカルシウム反応解析の最適化を目指している。 先行研究ではオレキシン1型受容体のC末端に緑色蛍光蛋白GFPを連結させた発現ベクターと、オレキシン2型受容体に赤色蛍光蛋白mCherryを連結させた発現ベクターを一過性に共発現させた細胞を作成し、オレキシンに対する単一細胞レベルでのカルシウム反応を計測することに成功した。しかしながらこの方法では、それぞれの受容体および蛍光蛋白が必ずしも同量で発現するとは限らないという問題があった。 そこで本研究では、共発現系における受容体発現量を等しくするために2Aペプチドを用いたターゲッティングベクターを新たに構築し、細胞内のカルシウム反応を比較した。その結果、オレキシン1型受容体あるいはオレキシン2型受容体の単一発現系と比べ、オレキシン1型・2型受容体共発現系ではオレキシンに対する細胞内カルシウム上昇が有意に減少することが明らかになった。これは受容するのが同じオレキシンでも受容体発現パターンによって細胞内シグナル伝達が異なることを示唆している。脳内ではニューロンタイプによってオレキシン受容体の発現パターンも異なる。オレキシン受容体活性化の機能的意義は覚醒だけでなく情動など多岐にわたり、受容体の型によっても異なる。本研究の成果はオレキシン機能の多様性に受容体の発現パターンとシグナル伝達の差異が寄与することを示唆する。今後、この発現パターンによる応答性の違いのメカニズムについて追求する。
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