2020 Fiscal Year Annual Research Report
ショットガンプロテオミクスによるアユ由来環境DNAの起源解明
Project/Area Number |
20H01170
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 真司 東北大学, 工学研究科, 技術専門職員
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Project Period (FY) |
2020-04-01 –
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Keywords | 産卵床 / 環境DNA / プロテオミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
環境DNA解析は魚類の産卵床探索にも応用され,サケ科やアユの産卵場の位置推定に貢献している.これまでの研究により天竜川では砂州下端側に形成される湧水流路内の瀬(湧水瀬)でアユ産卵床の存在が確認され,推定卵数とアユ由来環境DNA濃度との間には正の相関関係が認められた.しかしながら,アユ由来環境DNAには複数の起源物質(体液,表皮,筋肉,糞など)が含まれていると予想され,実際の起源物質やその構成は明らかになっていない.そこで,本研究はショットガンプロテオミクスによるアユ由来環境DNAの起源推定を行う事を目的とした. 天竜川下流域を調査対象流域とし,各地点で水質及び物理環境の測定を行い,同地点でアユの産卵床調査を実施した.各地点で採水を行い,水中のFPOM(fine particulate organic matter)を採集し,有機物組成分析に供した.当初の計画ではFPOM及びアユの各部位についてプロテオミクス解析を行う予定だったが,期間前半にMSの電源部が故障したため測定が不可能となった.そこで,まずタンパク質分析の試料前処理条件の検討を行い装置復旧後に速やかに測定に移れる体制を整えた.試料中のタンパク質の可溶化はMPEX PTS reagentsを用いて行いMS解析用試料を得た. 調査の結果,28地点中3地点で産卵床が確認され,同地点でアユ由来環境DNAも検出された.MS解析用試料については,分光光度計を用いて総タンパク質量を測定し.抽出条件の最適化を達成した.以上の結果より,FPOMに含まれるアユ由来環境DNAの起源物質を同定するためにはプロテオミクス解析が不可欠であることが明らかとなった.本研究期間で,MS解析用試料の前処理条件の最適化までは達成しており,装置が復旧し次第,測定及びデータ解析に取り掛かる予定である.
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