2021 Fiscal Year Annual Research Report
中近世日本の画題生成における明代出版文化の受容と展開に関する総合的研究
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20H01238
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
齋藤 真麻理 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (50280532)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
門脇 むつみ 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 准教授 (00406779)
山本 嘉孝 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (40783626)
粂 汐里 国文学研究資料館, 研究部, 特任助教 (50838050)
黒田 智 金沢大学, 学校教育系, 教授 (70468875)
齊藤 研一 立正大学, 文学部, 特任准教授 (80846410)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 画題 / 狩野派 / 戯画 / 奈良絵本 / 明代版本 / 林家 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は昨年度に行った江戸時代前期の画題をめぐる検討結果を踏まえ、画題生成の一つの達成点として17世紀狩野派内で制作された「戯画図巻」に研究対象を絞り、計2回の共同研究を開催し、並行してそれらの画題と関連する諸作品の個別研究を推進した。その結果、「戯画図巻」諸本の各場面の分析が進み、万治・寛文頃の江戸の伊達「六方」の風俗や特有の言語表現が「戯画図巻」に取り込まれてゆく趣向、『卜養狂歌集』と通底する当代性、『法然上人絵伝』など先行絵巻とその表象の反映などが明らかとなった。水神信仰や相撲などの諸芸能の絵画表象と画題の比較検討も行われ、さらに個別の作品研究等からは、『付喪神絵巻』、勝軍地蔵をめぐる言説と表象、若冲の画壇などが溯上に上り、画題の生成と継承の実態を広く捉えることとなった。 とりわけ、漢画題に長けた狩野派の営為を明らめるためには、漢学と画題の関係性の検討が必須であり、中世と近世の連続性と断絶について総合的に理解する必要がある。従って、本年度は近世前期の漢学を領導した林家の営為に着目し、林家の儒者たちが、内実としては中世の五山文学からの流れを多分に継承しつつも、表向きには平安時代の朝廷の漢詩文や儀式を思慕することにより、自身を中世の禅僧たちと差別化し、新しい時代の儒者として自身の地位を確立しようとした過程を明らかにした。 さらに資料の探索にも傾注する中で、中之島香雪美術館蔵「探幽狂画」の熟覧が叶ったことは特筆される。本作は河鍋暁斎の旧蔵本で、明和7年(1770)刊『狂画苑』の素材ともなっている。熟覧によって新たに得られた書誌学的知見から、本作の本来の配列を伝える痕跡が見出された。本作は狩野派における画題の継承を明視する上でも重要な作であり、江戸時代前期の出版文化と狩野派の営為とを結ぶ視点を獲得することとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の流行により、資料調査に困難が生じているため。 主要な海外の所蔵機関(アメリカ合衆国、フランス共和国、イギリス、中華人民共和国)への渡航調査が実施できない状況が続いた。原本調査に代えて、二次的な方法として関連資料の撮影を打診したが、海外機関は十分な体制が整わなかった。 国内の美術館等における調査についても、受け入れ時期や人数が制限されているため、十分な資料調査を行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症の流行は一進一退の状況が続いているが、国内の美術館や博物館については調査の受け入れを始めたところも出てきており、国内調査に注力し、関連資料の調査を重ねて行く。海外の所蔵機関については、できる限り、複写の交渉を行う。
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Research Products
(8 results)