2021 Fiscal Year Annual Research Report
日本列島で土器を使い始めた人々の形態・遺伝子・食性・健康状態を解明する
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20H01374
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
澤田 純明 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 准教授 (10374943)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安達 登 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (60282125)
江田 真毅 北海道大学, 総合博物館, 教授 (60452546)
米田 穣 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (30280712)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 更新世 / 縄文時代草創期 / 日向洞窟 / 人骨 / 動物骨 / 年代測定 / DNA / 生活誌 |
Outline of Annual Research Achievements |
土器の利用開始は、ヒト社会に強いインパクトを与えた人類史上の重大イベントである。「どのような人々が土器を使い始めたのか」という人類史上の重大問題に答えるため、山形県日向洞窟から出土した約13,000-11,000年前の縄文時代草創期人骨群を対象とし、多角的な考古科学研究を実施することを目的として、本研究計画を立案した。 本年度は、山形県立うきたむ風土記の丘考古資料館および高畠町郷土資料館が保管する人骨・動物骨資料を調査し、以下1-7の研究を実施した。1)人骨の形態解析、2)人骨の放射性炭素年代測定、3)人骨のmtDNA解析、4)人骨の安定同位体食性分析、5)人骨の古病理学的研究、6)コラーゲンタンパク分析に基づく骨片の種同定、7)動物考古学的研究に基づく生業活動の復元。 本年度の研究において、年代不明の人骨群から新たに縄文草創期および早期初頭に帰属する人骨資料を見つけ出し、その一部についてはmtDNA解析にも成功した。確認されたmtDNAハプログループについて検討を進めた結果、縄文時代人に広くみられるmtDNAハプログループの祖先型とみなせるとの予察的所見を得た。また、人骨の形態学的特徴には、弥生時代以降の日本列島集団とは異なり、縄文時代人に共通する傾向が認められた。動物骨の年代測定からは、縄文時代草創期、早期、前期、古代と幅広い年代値が得られており、帰属年代が多岐にわたる動物骨資料が混在している様相を確認できた。動物骨の年代測定結果は、縄文草創期資料の分析を進めるうえで、年代測定による対象資料の帰属年代決定が必須であることを示すものである。次年度以降も引き続き人骨と動物骨の年代測定を進め、本年度に実施した各種分析を継続・発展させる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
山形県立うきたむ風土記の丘考古資料館および高畠町郷土資料館が保管する人骨・動物骨資料の調査と分析を実施し、年代測定、mtDNA解析、人骨形態分析などにおいて一定の成果をあげた。これまでの成績に鑑み、今後分析予定の資料についても年代測定やmtDNA解析が成功する見込みを得ている。人骨の形態解析や古病理学的研究、骨片のコラーゲンタンパク分析、動物骨の同定についても着実に進行しており、研究の遂行に不安はない。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に引き続き、山形県立うきたむ風土記の丘考古資料館および高畠町郷土資料館が保管している日向洞窟出土人骨・動物骨資料を調査し、以下1-8のの研究を進めることを計画している。1)人骨の同定と形態解析:部位の同定、年齢推定、性別判定、Martin法による骨計測を行い、人骨の個体識別と形態学的系譜関係の解明を試みる。2)人骨の放射性炭素年代測定:AMS法により放射性炭素年代を測定し、各人骨の帰属時期を明らかにする。3)人骨のmtDNA解析:日向洞窟人骨群のmtDNAのハプログループを明らかにする。4)人骨の核ゲノム解析:次世代シークエンサーを用いた核DNAの解析を実施する。mtDNAと核DNAの情報を総合し、日向洞窟人類集団の系統的位置づけを解明する。5)人骨の安定同位体食性分析:人骨から試料を採取して炭素・窒素安定同位体分析を実施し、当該期の食性を明らかにする。6)人骨の古病理学的研究:関節疾患、骨膜炎、感染症、齲蝕、生前喪失歯などの病変と、エナメル質減形成やクリブラ・オルビタリアなどのストレスマーカーの出現状況を総合的に検討し、生前の健康状態と生活環境を復元する。7)コラーゲンタンパク分析に基づく骨片の人獣鑑別:肉眼観察で同定の困難な小片のコラーゲンタンパク分析を実施し、確度の高いヒトの同定を試みる。8)動物考古学的研究に基づく生業活動の復元:動物利用の様相を明らかにし、土器利用を開始した日向洞窟の人びとの生業活動を復元する一助とする。
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Research Products
(5 results)