2020 Fiscal Year Annual Research Report
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20H01440
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大塚 直 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (90143346)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 佳幸 京都大学, 法学研究科, 教授 (00273425)
山口 斉昭 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (00318320)
後藤 巻則 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 教授 (20255045)
米村 滋人 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (40419990)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リスク / AI / 自動運転 / 不法行為 / 差止 |
Outline of Annual Research Achievements |
リスクとして、因果関係と共同不法行為論に関して建設アスベスト訴訟を取り上げ(瀬川信久「建設アスベスト訴訟における因果関係の認定と共同不法行為論」)、また、公法を含めたリスク論について、リスク概念の多義性(下山憲治「リスク概念の多義性とリスク管理の法的制御」)、コロナ禍の法的問題(磯村哲=米村滋雄「コロナ禍の法的問題」)を扱った。さらに、新たなリスクとして、自動運転を取り上げた(山口斉昭「自動運転について」)。 また、研究会報告以外では以下の通りである。 気候訴訟に関して検討し、気候関連のリスクの特殊性について検討した。平穏生活権ないし安定気候享受権の考え方により権利法益侵害を構成しうること、一方、因果関係については従来の考え方では立証が極めて困難であることを示した。 福島原発事故に伴う損害賠償訴訟では、原告によって平穏生活権侵害が主張され、それを受け入れている裁判例とそうでない裁判例があるが、平穏生活権の本来の考え方からは、不安を基礎とする健康被害の可能性を問題とするため、自主避難者にこの概念を用いることは適当であるが、強制的指示に伴う避難者に用いることは適当でないことを論じた。また、福島原発事故における国の過失については、原発被害の甚大さから予防的・警戒的な判断が必要となるが、このような考え方をとる裁判例とそうでない裁判例がみられることを論じた。 科学と裁判に関するWSを開催し、メンバーとして大塚と米村が参加した。そこでは1)民法709条の因果関係要件を事実的要件として捉えるべきか評価的要件として捉えるべきか、2)損害の発生の抑止を不法行為法の機能としてどの程度重視するかについて議論がなされた。メンバー2名の間ではこの点について見解は異なるが、それぞれの議論に関して様々な観点を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リスク概念、建設アスベスト訴訟、コロナ禍という具体的問題と取り上げ研究会で報告してもらい議論をした。また、気候訴訟、原発損害賠償訴訟、科学と裁判における因果関係と損害論など、それ以外の問題についても議論を進め、リスクの抑止と受容という観点からの研究の第1歩を記すことができた。コロナ禍で対面の研究会は開催できなかったが、オンラインで研究会を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現代社会における様々なリスクとそれに対応するための民事法を中心とする仕組みの在り方について、さらに検討を進める。危険責任、因果関係はその重要な要素である。
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Research Products
(32 results)