2021 Fiscal Year Annual Research Report
Politics, Philosophy, and Economics in Rawls's Theory of Justice: Towards Liberalism in the 21st Century
Project/Area Number |
20H01446
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宇野 重規 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (00292657)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 雅也 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 助手 (20802086)
犬塚 元 法政大学, 法学部, 教授 (30313224)
加藤 晋 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (30553101)
野原 慎司 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 准教授 (30725685)
網谷 壮介 獨協大学, 法学部, 准教授 (30838272)
高見 典和 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (60708494)
井上 彰 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (80535097)
馬路 智仁 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (80779257)
田畑 真一 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員 (90634767)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ロールズ / 政治哲学 / 政治思想 / 経済思想 / リベラリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度第1回の研究会は、昨年度から講読を続けている『ロールズ政治哲学講義』のうち、特にジョン・スチュアート・ミルとマルクスについて検討した(報告:宇野重規)。本プロジェクトの課題である政治思想史と政治哲学の架橋というテーマから見て、ミルとマルクスは極めて興味深い事例と言える。すなわちロールズによれば、ミルの正義の構想は、ロールズの「公正としての正義」と内容的に極めて近い。しかしながら、あくまで功利主義の立場に立つミルの正義論がなぜロールズに近いと言えるのか、ロールズのミル理解は適切かという疑問が生じる。またマルクスについても、「リベラリズムの批判者」であるとしつつ、正義と権利についての規範的見解を持っていたとロールズはいう。このように極めてオリジナルなロールズのミル・マルクス理解は、彼の正義論といかなる関係にあるかをめぐり、活発な議論が交わされた。 第2回と第3回は、同じくロールズの『道徳哲学史講義』のうち、特にそれ自体膨大であるカントの章について検討を行なった(報告:網谷壮介)。ロールズは1970年代半ば以降、カント倫理学にフォーカスをあてて研究を進めた。初期は「人倫の形而上学の基礎づけ」に集中したカントは、次第にその解釈の幅を広げてていった。この時期はまさに「公正としての正義」を執筆するのと同じ時期にあたり、ロールズによるカント理解の変化は、この時期のロールズの問題意識の変化を探る上で極めて重要である。また「単なる理性の限界内での宗教」は、ロールズの宗教理解を把握する上で最も重要なテクストである。このようにロールズのカント理解に即して、この時期のロールズの思想的展開を理解することが方法論的に見ても有効であることがわかったのが、最大の成果であった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度も多くの研究会を開催し、ロールズ政治哲学と政治思想史理解の関連や、カント理解に即してロールズの思想的変容を検討できたことは、本プロジェクトにとって大きな進展であったと言える。これが可能になったのも、本プロジェクトにおいて、狭義のロールズ研究者だけでなく、政治思想史やカント倫理学の専門家が研究メンバーに加わった結果であり、その意味で、プロジェクトのねらいを遺憾無く発揮できたといえる。 しかしながら、その一方で、プロジェクトの初期から構想していた海外研究者との交流や、ロールズ・アーカイブでの調査については、コロナ禍が大きな障害になったことは否定できない。もちろん、海外研究者とはオンラインでコミュニケーションをとるなどの努力をし、一定の成果があったことも事実ではあるが、自由に海外と行き来ができないのは、プロジェクトの課題からして残念な事態であった。 それを代替すべく、研究代表者である宇野重規が所属する東京大学社会科学研究所の全所的プロジェクト研究「社会科学のメソドロジー:事象と価値をどのように測るか」と連携し、ワークショップ「政治思想史と政治哲学の現在時点」を開催できたことは極めて意義深いことであったと言える。現在の日本を代表する政治思想史研究者と政治哲学研究者である犬塚元と井上彰を交えての対話は、双方のディシプリンの本質について再検討する絶好の機会となった。本プロジェクトにとって中核な問いである、政治思想史と政治哲学の架橋のためにもまず、両者の違いを徹底的に検討したことの意味は大きい。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後についても、新型コロナウィルスの感染拡大状況について予測がつかないため、海外研究者を招いてのシンポジウムの企画を引き続き計画すると同時に、 ロールズ・アーカイブ調査の可能性を模索する。 その一方で、引き続き海外渡航が制限されることも予想して、国内でできる新たな研究のアプローチを考える。引き続きオンライン研究会を開催すると同時 に、ロールズをはじめとする現代政治哲学者たちがいかなる思考実験を行なっているか、網羅的な調査を行いたい。そのために大学院生を雇用し、政治哲学にお ける思考実験のデータベースの構築に努める。
|
Research Products
(12 results)
-
-
-
-
[Journal Article] Social media infodemics and social distancing under the COVID-19 pandemic: public good provisions under uncertainty2021
Author(s)
Cato, S., Iida, T., Ishida, K., Ito, A., Katsumata, H., McElwain, K. M., & Shoji, M.
-
Journal Title
Global Health Action
Volume: 14(1)
Pages: 1995958-
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-