2020 Fiscal Year Annual Research Report
権威主義体制の正統性としての「建国の父」-その継承と変容の比較研究-
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20H01454
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
根本 敬 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (90228289)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
泉谷 陽子 フェリス女学院大学, 国際交流学部, 准教授 (20773485)
磯崎 典世 学習院大学, 法学部, 教授 (30272470)
井上 あえか 就実大学, 人文科学部, 教授 (30388988)
宇山 智彦 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 教授 (40281852)
礒崎 敦仁 慶應義塾大学, 法学部(日吉), 准教授 (40453534)
粕谷 祐子 慶應義塾大学, 法学部(三田), 教授 (50383972)
中野 亜里 大東文化大学, 国際関係学部, 教授 (60188993) [Withdrawn]
横山 豪志 筑紫女学園大学, 文学部, 准教授 (80320381)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 権威主義体制 / 「建国の父」 / 正統性シンボル / アジア諸国 / 比較政治 / ナショナリズム / 「独立の父」 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は2020年10月10日に顔合わせを兼ねたキックオフ研究会を慶應義塾大学(東京・三田キャンパス)で実施し(オンライン併用)、本科研の理論的枠組みを明確にすべく、その役割を主に担う粕谷祐子(慶応義塾大学)が全体的課題を提示した。それに基づき、質疑応答と議論を深め、アジア各国・地域を担当する研究分担者個々に求められる役割を再確認した。 そこでは「建国の父」の扱われ方のパターンとして、3種類の分類(枠組み)を考えることができるのではないかという共通理解が得られた。ひとつは「神格化された場合」であり、具体例として中国の毛沢東、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の金日成、ベトナムのホー・チ・ミンが挙げられる。もう一つは「権威主義リーダーの交代によって扱われた方に変化が生じた事例」であり、具体的にはミャンマー(アウンサン)、カンボジア(シハヌーク)、パキスタン(ジンナー)、中央アジア諸国(カザフスタンのナザルバエフなど)が該当するという理解が得られた。最後は「民主化を経験した元権威主義体制国家において生じた変化の事例」であり、具体例として大韓民国(韓国)の李承晩、中華民国(台湾)の蒋介石、そしてインドネシアのスカルノが挙げられた。 残念ながらコロナ禍の深刻化と長期化のため、各分担者が予定していた海外調査を断念せざるを得ず、年度内は国内における文献調査を進めることが主なる活動となった。11月以降の分担者間の連絡はメールでおこない、必要に応じて個々にズームを活用した。1月にベトナムを担当する分担者の中野亜里(大東文化大学)が急逝したことは大きな痛手であったが、各分担者はそれを乗り越えるべく努力を重ねる意思を強固にした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本科研の理論的枠組みの提示と追究を担当する粕谷祐子(慶應義塾大学法学部)の貢献により、すべての分担者が各自の担当地域(国家)における「建国の父」をどのようにとらえ、そのイメージの形成と変容をと各国の政治的正統性との関係(特に権威主義体制強化との関係性)においてどのように追究すべきか、その課題を共有できるようになった。 コロナ禍の深刻化によって海外調査ができなくなったとはいえ、手持ちの資料の調査と再検討、新規資料の購入を通じて、国内における文献調査を推し進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2年度目は各分担者による具体的な研究報告を軸にプロジェクトを推し進め、アジア諸国における「建国の父」の個別的検討と、相互の比較考察に向けて、理解の基盤共有を深めることにする。その際、粕谷祐子(慶応義塾大学法学部)が初年度に提示した理論的枠組みの再検証も適宜おこなう。
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