2021 Fiscal Year Annual Research Report
「社会意識の分断」に着目した政治行動の計量的解明と新たな政治社会学モデルの構築
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20H01588
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
金澤 悠介 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (60572196)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 努 北海道大学, 経済学研究院, 教授 (40281779)
吉田 徹 同志社大学, 政策学部, 教授 (60431300)
富永 京子 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (70750008)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 社会意識 / 政治行動 / 政治社会学 / 潜在クラス分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、代表性の高いデータセットを用いて、現代日本人の間に潜在する社会意識の分断をデータ内在的に解明するとともに、それと人々の政治行動の対応関係を経験的に明らかにすることである。2021年度は2020年度に実施したweb調査(N=6600)の統計分析を行い、以下の2つの知見が得られた。 第一に、社会意識項目に対する回答を分析し、現代日本におけるイデオロギー上の政治的対立軸を抽出したところ、平和主義や天皇制についての評価などに関わる従来的な保革対立軸に加え、社会的投資や普遍主義といった、いわば、「福祉国家の変容」に関わる新たな政治的対立軸も抽出された。そして、回答者の支持政党については従来的な保革対立軸に規定されているものの、彼/彼女たちが選好する政策については、従来的な保革対立軸だけでなく、「福祉国家の変容」についての新たな対立軸も考慮しなければ説明できないことも明らかになった。 第二に、過去の社会運動についての意識について社会経済的地位による大きな分断があるとともに、その意識のありかたが市民参加に影響を与えていることも明らかになった。具体的には、(ⅰ)女性よりも男性が、若年層よりも高学歴層が、低学歴層よりも高学歴層が過去に行われた社会運動(1960年安保闘争、全共闘、2015年安保抗議行動)を高く評価しているとともに、(ⅱ)社会経済的地位や政治的イデオロギーを統制したとしても、過去の社会運動を低く評価している人ほど市民参加しにくい、ということがデータ分析の結果として明らかになった。社会運動などの制度外政治参加の評価について市民間で大きな分断があるとともに、その分断が実際の市民参加のありようにも影響を与えていることをこの結果は示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査データの分析結果は研究目的にとって意義あるものであったため、順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は次のような方針で研究を推進する。 第一に、「社会意識と政策選好についてのweb調査」を実施する。ここでは、20代~60代の男女を対象に、20000人規模のweb調査を実施する。このweb調査では、2020年度に実施したweb調査での質問項目(望ましい社会像、ナショナリズム、伝統意識、政治参加など)を基礎としつつ、不公平感や経済自由主義的価値観、自己責任意識といった社会意識、具体的な政策レベルでの政策選好、日常的な友人関係やSNS上の人間関係などの社会関係を新たに測定する。調査票の作成は研究代表者の金澤および研究分担者の橋本、吉田が中心となり、他の研究分担者からの意見を取り入れながら行う。その後、調査データに対し潜在クラス分析を適用し、社会意識の類似性をもとに回答者を類型化することで現代の日本社会に潜在する社会意識上の分断を記述的に明らかにするとともに、その社会意識上の分断と人々の政策選好の間にどのような関係があるのかを探索的に分析する。 第二に、「社会意識と市民参加についてのweb調査」を実施する。ここでは、20代~60代の男女を対象に、15000人規模のweb調査を実施する。このweb調査では社会意識や政治意識については「政治意識と政策選好についてのweb調査」と同様の質問項目を用いつつ、市民参加(ボランティア参加、市民団体への参加、デモや社会運動への参加など)および市民参加に関わる意識(市民参加についてのイメージ、市民参加への忌感など)を測定する。調査票の作成は研究代表者の金澤および研究分担者の坂本、冨永(坂本は2022年度より研究分担者)が中心となり、他の研究分担者からの意見を取り入れながら行う。その後、調査データの統計分析を行い、社会意識上の分断が人々の市民参加や市民参加をめぐる意識のありかたとどのように関連しているのかを探索的に分析する。
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Research Products
(22 results)