2020 Fiscal Year Annual Research Report
ケアをめぐる負の世代間連鎖:ジェンダー・世代・障がいの包摂的権利保障へ向けて
Project/Area Number |
20H01593
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
相馬 直子 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (70452050)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ケア / 権利擁護 / ジェンダー / 世代間連鎖 / 包摂的権利保障 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ケアをめぐる負の世代間連鎖に関する実証研究をつうじて、ジェンダ ー・世代・障がいの交差する暴力(虐待)の連鎖に関する構造的把握と、包摂的権 利保障システムの構想を行うことを目的とする。近年、地域包括ケアシステムの再編という政策課題のもと、高齢・障がい・児童の支援の連携が模索されている。実際の支援現場でも、高齢者と子育てのケアマネジメントやコーディネートを連携させていこうという先進的な取り組みがみられる。本研究は、日本・韓国におけるダブルケア世帯の世代間のケア分担構造の「暴力的な負の連鎖」の実態、高齢者・女性・子どもの権利衝突と権利擁護・保障への課題を検討するものである。特に虐待事例の中で、多重ケアの事例に焦点を当て、暴力連鎖の背景にある、負担の構造、社会経済的背景、支援の様相を明確化し、高齢者・子ども・ジェンダーをめぐる権利擁護制度実態、連携における課題の検討、包摂的権利保障へ向けた今後の政策課題の明確化を行うことを計画している。しかし、新型コロナウィルス感染拡大に伴う影響により、日本とともに、韓国における社会福祉関連機関への調査依頼、実査ともに実施することが出来なかった。一方で、コロナ禍の状況を鑑み、理論的検討や先行研究の整理を行った。個人の権利保障という視点にとどめず、ケア民主主義論の枠組みから制度的正義・不正義の次元でアプローチすることから、ジョアン・トロントの「ケア民主主義」の議論をふまえ、複数主体の権利衝突が調停される「包摂的権利保障システム」の理論的検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染拡大に伴う影響により、社会福祉関連機関への調査依頼、実査ともに実施することが出来なかったものの、理論的検討や先行研究の整理を行った点で、研究計画の第二年目・第三年目の作業を前倒しで実施することが出来た。また、「ケア民主主義」の議論をふまえ、複数主体の権利衝突が調停される「包摂的権利保障システム」の理論的検討を行ったことは、今後の研究推進に貢献するものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は当初、現地調査を軸に研究を計画した。しかし新型コロナウィルス感染症の終息についての予想がつかないため、現地調査からオンラインを中心とした調査に修正し、研究を推進することを計画する。
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Research Products
(7 results)