2020 Fiscal Year Annual Research Report
分権型教員人事の存立要件に関する日・米・英比較研究:教員集団への影響に着目して
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20H01628
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山下 晃一 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (80324987)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高野 和子 明治大学, 文学部, 専任教授 (30287883)
勝野 正章 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (10285512)
清田 夏代 実践女子大学, 生活科学部, 教授 (70444940)
篠原 岳司 北海道大学, 教育学研究院, 准教授 (20581721)
高橋 哲 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (10511884)
藤村 祐子 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (80634609)
榎 景子 長崎大学, 教育学部, 准教授 (60813300)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 教員人事 / 教育行政 / 地方分権 / 教員組織 / 国際比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、公立小学校を主たる対象に、各々異なる分権化の度合いや質を持つ米国・英国の現状を比較調査し、その存立要件の解明をめざすものである。今年度の研究では、それらで明らかにされた状況に加えて、2000年代以降に先進諸国において急速に展開した「教育改革」の潮流(Global Educational Reform Movement: GERM)での変容に焦点を当て、とりわけこれらの動向を分析する際、教育行政学における理論的枠組が、そもそもどのようにありうるか/あるべきか十分に開拓されているとは言えないとの仮説的評価に基づいた上で、個別具体的な事例検討に着手するための予備的作業として、米国・英国における学校分権型教員人事をめぐる概況と作用の整理を試みた。その結果、米英の動向を以下のように仮説的に整理した。米国では、教員個人の職業(calling)上の、ないし労働者としての権利を強力に保護する歴史的制度的慣性が生まれてきた。だが、それは全体利益ないし公共性の確保を阻害するおそれがあるという、教職ならではの“しわ寄せ”への問題意識も生じてきており、学校を基盤として教育活動固有に期待される集団的専門的協働性と、個別学校を超えた一定範域で発現されざるを得ない特性をもつ教育行政の責任という2つの契機から、そうした慣性を問い直し、揺り戻しを図ろうとする様相も浮かぶ。英国では、必ずしも望まれない学校分権化が不可逆的に普及した中で、現場の教職員や住民・保護者の適応行動と同時に、教員補充・保持の困難等の学校側の負担への政策的配慮の生成なども見受けられ、分権型の教員人事の弊害是正政策が自生するような様相が浮かんでいた。しかしながら、教員人事に対する地域的関心の高まりとは裏腹に、校長の教育的専門性の低減に伴う人事成果の不透明性も懸念される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の研究では、目的の一つとした理論的整理については、米国および英国の現代的動向に照らして、研究分担者の多大なる尽力を得たことによって、政策文書および研究文献を収集・解析し、米英両国における学校分権型教員人事をめぐる概況と作用の整理を試みるという所期の成果を一定程度達成することができた。しかしながら、もう一つの目的とした海外渡航調査については、新型コロナウィルス感染拡大によって、米国・英国ともに実施することができなかった。研究計画を翌年度にも延長して渡航調査計画を再立案したものの、残念ながら渡航が可能にならなかった。渡航調査が実施できずとも、可能な範囲で文献調査及びメール等での情報の収集および分析/考察に努めたため、研究計画の遅延は最低限に留めることができたと考えているが、やはり渡航調査を実施したいという意向が研究メンバーの間には強く、研究計画の進捗については若干の遅れがあるという自己点検・評価を下したい。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までのところ、渡航調査はともかく、理論的検討については、研究分担者の多大なる尽力を得たことによって順調に進んでいる。そこから明らかになったことに基づけば、渡航調査における調査項目についても、概ね妥当であることが判明してきた。そのため、渡航調査についても現在のところでは計画自体を大きく変更する必要はないものと考えている。ただし、その回数については、次年度以降、最大限可能となるよう②努めて、充実した調査が実施できるよう、先方と密接に連絡を取ると同時に、調査先の数が増やせるよう、共同研究のメンバー全員が尽力する予定である。なお、再度、新型コロナウィウルスの感染拡大によって海外渡航調査が不可能になる場合に備えて、米国および英国における学術研究団体が提供するオンラインでのウェビナー等についての情報収集に努め、積極的に参加できるよう努め、また情報収集の充実と国際共同研究への発展を兼ねて、米英の研究者らと共同でのオンライン学術シンポジウムの開催等についても模索したい。
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Research Products
(11 results)
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[Book] 教育の法制度と経営2020
Author(s)
勝野正章編著(山崎準二、高野和子編集代表)
Total Pages
192
Publisher
学文社
ISBN
978-4-7620-2838-0