2021 Fiscal Year Annual Research Report
Construction of scientific inference program based on philosophy of science and of statistics
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20H01736
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松王 政浩 北海道大学, 理学研究院, 教授 (60333499)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島谷 健一郎 統計数理研究所, データ科学研究系, 准教授 (70332129)
森元 良太 北海道医療大学, リハビリテーション科学部, 准教授 (70648500)
川本 思心 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (90593046)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 科学哲学 / 科学教育 / 統計哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、これまで科学哲学で議論されてきた科学の方法論に、数理的および統計学的な視点をプラスして、最終的に科学教育に応用することを目的とする。この目的を果たす上で、二つの大きな課題がある。一つは科学哲学の概念的な議論の中に、科学における数理モデル、統計モデルとの接点を見出すこと。もう一つは、逆に数理・統計モデルに関してその概念的意味を明らかにして科学哲学で扱う問題に接続することである。 本年は、特に後者に関して重要な成果を上げることができた。これまで本研究のメンバーで研究会等で議論してきた内容を、科学基礎論学会の英文誌 Annalsに、Special Edition: Philosophy of Statistics として5本の論文を掲載した(いずれも査読付き論文)。島谷は科学における統計モデルの位置づけについて、松王は尤度主義の概念的問題について、森元は頻度主義における根本的対立の意味について、また大久保はベイズ主義と頻度主義の対立解消の糸口について、そして尾崎はベイズ主義の実践科学における意味について、それぞれ論じた。このような統計学の哲学的解題は、これまで日本ではほとんど例がなく、画期的である。 上記成果に加え、代表者の松王は、科学哲学教育の試行の一環として、最高裁判所下の司法研修所における講演を請け負った。講演では、科学哲学の伝統的な問題の一つである、「科学者が科学的判断において価値判断を行うことは適切か」という問題をめぐって、これが実際の科学においていかに問題になりうるかを、統計的な視点を交えつつ、イタリアの「ラクイラ地震裁判」を例として論じた。参加した裁判官の方々に、司法の場で「科学者の価値判断」の可否、是非について考察するよい機会になったものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で、予定していた回数の研究会が実施できなかったものの、研究代表者、分担者、協力者間で綿密に連絡を取り合う中で、研究の遅滞は生じなかったと考える。とりわけ、当初より一つの中間成果目標として掲げていた、「統計哲学」の論文公表(雑誌の特集号企画の実現)が達成できたことが、進捗の順調さを示している。このほか、因果性、価値判断等の科学哲学における問題群と、統計学との関係についても解明が進んでおり、3月24日に実施した今年度最後の研究会(北大にて開催)において、代表者、分担者、協力者の各研究の進捗状況を確認することができた。また同研究会において、次年度、および最終年度の目標も明確にすることができた。このようなことから、研究は当初の計画にしたがっており、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は3年目に、海外から研究者を招へいし、科学哲学の科学教育への応用の要になるテーマについて、国際シンポジウムを開催することを計画に組み込んでいる。これまでの2年間の研究成果から、シンポジウムテーマとして、「科学モデルとは何か」とすることを決定しており、現在、科学哲学における「モデル論」研究者および「統計モデル」の哲学的分析を手がける統計学者と具体的な日程やシンポジウム内容について検討を進めているところである。また3年目には併せて、分担者の島谷が統計数理研究所において「モデル」をめぐるワークショップを実施する予定で、代表者の松王がそこで講演者の一人となる予定である。 なお、国際シンポジウムは今のところ北海道で実施する予定だが、今後の新型コロナウイルス感染症の拡大状況次第では、オンサイト開催が困難になる可能性もある。その場合には、なるべく早く決断してオンラインによる開催に切り替えて準備を進めていく。 最終年度(4年目)の目標は大きく二つある。一つは科学哲学の国際会議(CLMPST)に参加し、本研究の主要テーマについてシンポジウムを開催すること。これは2022年度中に募集があるので、研究会を通じて応募内容を固めていく(なお、CLMPSTはブエノスアイレスでの開催が予定されているが、オンライン開催になる可能性もある)。もう一つは、これまでの研究成果をもとに、具体的なテーマに関して教育プログラムの形にし、CoSTEP(北大科学コミュニケーション教育研究部門)で、多様なバックグラウンドをもつ受講生を対象に授業として実施することである。これも授業実施方法については、そのときの情勢に合わせて最適な方法を選択する。
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Research Products
(7 results)