2021 Fiscal Year Annual Research Report
協同的トムソン散乱法を用いた多価電離プラズマ生成条件と放射スペクトルの関係解明
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20H01880
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
富田 健太郎 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (70452729)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
砂原 淳 大阪大学, レーザー科学研究所, 招へい准教授 (00370213)
西原 功修 大阪大学, レーザー科学研究所, 名誉教授 (40107131)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | トムソン散乱計測 / 軟X線光源 / EUV光源 / 電子密度 / 電子温度 / レーザー生成プラズマ |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請に至るまでの事前の研究活動により、光源用多価電離プラズマ、特に波長13.5nmを利用する極端紫外光源用プラズマについては、プラズマ状態と光出力が定量的に関連付けられる可能性が見いだされた。ただし計測結果はわずか数例の実験条件しかない(液滴スズドロップレット装置を用いたプラズマ生成に、共同研究先企業の装置が必要だったため、限られたマシンタイムでの計測であった)。 このような背景のもと、本研究の目的は、様々なプラズマ生成条件にて、微小(1mm以下)・短命(30ns以下)な光源プラズマの物理パラメータ(電子密度や電子温度)の時間及び空間分解計測を行い、プラズマ生成条件と光出力の定量的な関連付けを可能とすること、と位置付けた。計測手法として協同的トムソン散乱法(主としてイオン項スペクトルの計測)を用いる。本研究の学術的独自性・創造性は、計算・シミュレーションを用いず、実験のみで光源プラズマの物理解明に必要な物理量(ne, Te, Ti, Z)の詳細な空間分布・時間変化を明らかにする点である。 本申請の2年目(2021年度)は、プラズマを生成するための固体ターゲット種を様々に変更し(C, Al)、レーザーパワー密度依存性(10^9-10^11W/cm^2)など、種々の実験条件でトムソン散乱計測を行うことを計画した。トムソン散乱計測では、予定していた炭素、アルミに加え、銅及びスズターゲットでプラズマを生成した。炭素ターゲットについては、電子密度・電子温度に加え、プラズマの流れ(ドリフト速度)の時間・空間変化を、計測した。これらの結果を、1次元アブレーションモデルと比較した。対象とするレーザーパワー密度において、レーザー照射中のプラズマ挙動が得られたのは本研究が初めてであり、モデルと実験の比較が初めて可能となった。現在、結果を論文として投稿する準備を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2021年度の当初計画は、協同的トムソン散乱法により、様々な実験条件で生成したレーザー生成プラズマ中の電子密度や電子温度などの計測を行い、プラズマ生成条件とプラズマ状態の関係性を比較することだった。実際にそのような計測を行うことができた。さらに、協同トムソン散乱を用いることで、プラズマの流れ場の計測を行える可能性が見いだせた。これは予定にないことであったが、大きな収穫である。その理由は、流体として記述されるプラズマの、状態量(密度や温度。これらを得ることが当初の目的であった)に加え、流れ場(速度場)の計測が行えることは、流体解析上の大きな情報となるからである。レーザープラズマはそのサイズの小ささ故、プラズマ内部(遠く離れた場所ではなく)の、密度や温度はもとより、流れ場の計測が行われた報告はほとんどない。すなわち今回の研究成果は、誰もが正攻法と考えながら、その技術的困難さゆえに達成されなかった、レーザー生成プラズマ中の非接触・時間分解・空間分解での状態量+速度場の計測の可能性を見出した点にある。さらに、得られた結果をアブレーション現象モデルと比較可能にした点も、予定以上の進展である。レーザー照射中のプラズマ状態の変化の計測が初めてなされたことで、実験と、1次元アブレーション理論モデルとの直接比較を初めて試みている(炭素プラズマにおける実験・理論モデルの比較結果は、現在論文投稿の準備中である)。これらの理由から、研究の進捗状況として、当初の計画以上の進展があると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」で述べたが、2年目(2021年度)までの研究により、協同トムソン散乱では、プラズマの状態量(密度や温度)だけでなく、速度場(ドリフト速度)の計測も十分に可能であることを確認することができた。このことは、流体としてプラズマを扱う絵で、大きな情報となるので、引き続き速度場計測の方法の確立を目指す。速度場は大きさとベクトルからなるが、現時点では、計測器は1セットしかない。そのため、ベクトルの成分分解をするうえで、プラズマの軸対称性を仮定する必要がある。一方、そのような仮定は実験条件からある程度成り立つと考えられるので、そのような仮定のもと、2次元空間における速度場計測を実現する。 それに加え、多価電離のプラズマの計測を進める。具体的には、波長6nm帯の光源として期待されている、Gdターゲットを用いたトムソン散乱計測を進める。Gdプラズマでは、高いレーザーパワー密度(10^12W/cm^2)による、高温状態の実現が予想されているが、それに伴い、プラズマのサイズはさらに小さくなり、圧力勾配によるエネルギーの損失(膨張損失)が増大することが予想され、投入レーザーパワー密度にたいする電子温度の上昇カーブは不明である。このことはGdプラズマの光源応用の大きな指標となっているし、そこからのスペクトル解析を妨げている。レーザーパワー密度を電子温度の関連性を、初めて計測により明らかとすることを、一つの柱として研究を進めていく。
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Research Products
(9 results)