2020 Fiscal Year Annual Research Report
Activation and growth enhancement of T-cell using oxygen plasma
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20H01892
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
林 信哉 九州大学, 総合理工学研究院, 教授 (40295019)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 佳雄 佐賀大学, 医学部, 教授 (50322300)
柳生 義人 佐世保工業高等専門学校, 電気電子工学科, 准教授 (40435483)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 酸素プラズマ / T細胞活性化 / サイトカイン産生向上 / 遺伝子発現解析 / ERK経路活性化 / 細胞増殖 |
Outline of Annual Research Achievements |
〈酸素プラズマの生成および細胞への照射〉トーチ型大気圧誘電体放電プラズマ源を用いて酸素プラズマを生成し,活性粒子種のみが存在するアフターグロープラズマを細胞が入った培養液表面に照射する実験系を構築した.プラズマのパラメータとT細胞の増殖・活性化との関係を明らかにするために,酸素プラズマの細胞への照射条件(ガス種,放電電圧,照射時間等)を変化させて酸素プラズマを生成した.酸素プラズマをT細胞に10秒間照射した結果,細胞数が1.8倍に増加し,サイトカイン濃度も1.5pg/mlから50pg/mlと3倍程度に増加する結果が得られた. 〈活性化メカニズム〉酸素プラズマ中の活性酸素種のT細胞への効果を網羅的に解析するために,マイクロアレイを用いてプラズマ照射前後のT細胞の遺伝子発現変動を調べた.その結果,細胞内のエネルギー産生機構の活性化,および細胞周期を制御する酵素の活性化を示す遺伝子発現パターンが得られた.また,免疫機能であるサイトカイン産生に関係する遺伝子を調べた結果,IFN-γに関する遺伝子発現は生じず,IL-4の産生を触媒する酵素をコードする遺伝子の発現が顕著に増加していることが分かった.従って,大気圧酸素プラズマ照射によりT細胞がTh2細胞へ分化することが明らかとなった. 〈増殖メカニズム〉活性酸素を照射した細胞内では,最初にMEKK1が活性化されたのち,ERK経路やNF-kB経路が活性化され,それぞれ細胞増殖およびサイトカイン産生が向上すると考えられる.ERK経路のc-fosタンパク質をコードするFOS mRNAの発現量をリアルタイムPCRで測定した結果,発現量が2.9倍に増加したことが明らかとなった.従って,酸化ストレスがMAPKKKの活性を誘導し、ERK経路が活性化されたことにより細胞増殖が促進したと結論される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた,・DBDプラズマ源による酸素プラズマの生成,・液中培養細胞への酸素プラズマ照射試験,・プラズマを照射したT細胞の形態変化の観察,・放電電圧や照射時間を制御したプラズマ照射,・プラズマ照射後の細胞数やサイトカイン産生量の計測を正規の研究期間と延長した研究期間で達成した. 上記に加えて,プラズマ照射T細胞の分化誘導に関する実験結果が得られた. 一方,予定していた動物実験については,マウスの代わりに培養細胞を用いても同様の結果が得られることが判明したため,培養細胞を用いて実験を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,酸素プラズマを免疫細胞に照射した場合に観測された細胞数の増加と免疫機能の促進または抑制に関して,これらの現象のメカニズムを明らかにすることで,免疫細胞が酸素プラズマ中の活性酸素を感知する過程から細胞増殖の促進および免疫機能の増進に至るまでの反応経路を解明する. (1)活性酸素感受メカニズム:活性酸素をT細胞に照射した際の細胞表面の修飾基(-COOH,-CH2等)の変化により,細胞表面での酸素プラズマの感受機構を調べる.重水素や酸素同位体のプラズマをT細胞に照射し,TOF-SIMSにより酸化または脱水された修飾基を特定することで酸素プラズマレセプターを明らかにする. (2)免疫細胞分化および機能活性化メカニズム:酸素プラズマにより免疫細胞の分化および機能活性化メカニズムを明らかにする.活性酸素種のT細胞への効果を網羅的に解析するために,マイクロアレイを用いてプラズマ照射によるT細胞の遺伝子発現変動を調べる.そこでTh1細胞への分化を誘導するIRF4遺伝子や細胞傷害性T細胞(CD8+)への分化誘導を行うIRF8遺伝子の発現量を調べ,免疫機能活性化のメカニズムを検討する.また,Th2細胞のサイトカイン(IL-4)産生に関係するIL4遺伝子について,発現変動量とプラズマのパラメータとの相関を見出し,プラズマ照射からIL-4産生に至るプロセスを明らかにする.
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Research Products
(14 results)