2020 Fiscal Year Annual Research Report
The lithosphere-asthenosphere boundary zone at steady state
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20H02003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小澤 一仁 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (90160853)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗谷 豪 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (80397900)
柵山 徹也 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (80553081)
秋澤 紀克 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (40750013)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リソスフェアーアセノスフェア境界 / マントルかんらん岩 / 定常的LAB / マントルソリダス / ポテンシャル温度 |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋下のリソスフェア-アセノスフェア境界(LAB)領域の地温曲線がソリダスに内接する条件によって特定される場合を定常的LABと呼び、その深さがマントル物質のソリダスとアセノスフェアのTpによって決定されるという「定常的LAB仮説」を、複数地域でマントルカンラン岩ゼノリスとそれを地表にもたらしたマントル由来の火山岩を対象とし、LAB深度、LABより浅部の地温勾配、LABより深部のマントルのTpと水を含めた化学組成を、時間空間変化を含めて解読し、定常・非定常情報を分離抽出しこの仮説を検証する。島弧環境である東北日本の背弧にある一ノ目潟火山では、LABの最浅部深度~40km、LABより浅部の地温勾配約15K/km、LAB帯中の地温勾配約4K/km、LABの最深部深度約55kmと推定され、深さ幅のあるLAB帯を把握できた。さらにマグマ生成条件(温度1225°C、圧力1.8GPa、ソースマントル含水量0.55wt%; Kuritani et al. 2014)から、Katz et al. (2003)を用いてLABのより深部の含水マントルのTpを約1280°Cと推定した。LAB帯は部分溶融しており、粒界メルトは組織平衡に達していないことから、非定常的熱イベントが起きたことがわかる。鉱物の累帯構造の詳細な解析から一ノ目潟下のマントルは、日本海で形成され~1400万年間の冷却を経て55kmより厚いリソスフェアとなり、定常的LAB深さに達する前に4万年より短期間の加熱により部分溶融しLAB帯を形成したことがわかった。定常的LABに向かって冷却厚化する背弧海盆リソスフェアと沈み込み帯内部のマントル対流のカップリングは、リソスフェアが厚さ~60kmになって初めて生じ、数万年程度でLABの上昇をもたらしてと考えられる。このことから島弧・背弧海盆系では定常的LABの形成は困難であると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナウイルスの世界的感染拡大のために海外調査を中止することとなった。この状況を乗り切るために繰越、再繰越を実施したうえで、過去に採集したゼノリスサンプルを用いた研究に切り替えた。研究目的をできる限り達成するために、これまでの分析・解析が行われた岩石を含めて限られた岩石試料を対象とし、電子線微小領域分析装置(EPMA)をフル活用し、詳細な鉱物化学組成の不均質性を明らかにし、膨大な分析結果を拡散反応モデルによって網羅的に解析すると同時に、デジタルマイクロスコープを利用してマルチスケールの構造解析を行い、ゼノリスの温度・圧力・変形履歴をもたらした要因を明らかにすることによって、充分な成果をあげることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
予定していた海外調査とそれに参加してもらうことを予定としていたPDの雇用を中止したために大幅な研究計画の変更が必要となっている。これまで東北日本背弧を対象として行ってきたEPMA分析を中心として研究を展開することを基本に、新たなアプローチを探りながら研究を進めることで、本研究の当初目標を達成することをめざす。新たにアプローチは、mmサイズの鉱物粒子内の網羅的な累帯構造の分析とその解析と1mm以下のスケールの微細組織と数cmスケール以上の岩石構造をシームレスに結合した組織解析である。前者のためには既存のEPMAを活用し、後者のためには高倍率から低倍率の岩石画像を短時間で得る事ができるデジタルマイクロスコープが有用である。鉱物累帯構造の解析は、ゼノリスの由来深度・温度の高精度決定において有用であったが、それだけでなく由来条件に至る温度・圧力・変形史の解明にとって重要である。マントルの温度・圧力・変形史は、LAB帯が定常的LABに向かってどう変化しているのか、あるいは定常的LABからどのように乖離していくのかについて有用な情報を与えてくれる。また、マルチスケールの構造解析は、LAB帯の温度・圧力・変形史をもたらした要因の解明にとって極めて有効である。今後は、このアプローチを他地域についても適用し研究を展開する予定である。
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Research Products
(12 results)
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[Book] 新地球2020
Author(s)
秋澤 紀克 , 小澤 一仁編集
Total Pages
67
Publisher
マントル出版
ISBN
978-4-908703-84-3