2020 Fiscal Year Annual Research Report
機能化格子欠陥による磁性強誘電原子構造体の創出と力学的機能設計
Project/Area Number |
20H02027
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
嶋田 隆広 京都大学, 工学研究科, 准教授 (20534259)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 格子欠陥 / 強誘電体 / 磁性 / マルチフィジックス特性 / 第一原理解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、酸化物中に存在する格子欠陥(原子空孔、転位、結晶粒界など)に母材が持ち得ない磁性や強誘電性が現れることに着目し、このメカニズムを原子・電子論に基づいて評価・解明することで、格子欠陥によって原子スケールの磁性強誘電体(マルチフェロイックス)を創出できることを解析的に示すものである。さらに、外力による負荷ひずみが、欠陥部に生じる機能を変化させること(マルチフィジックス現象)の原理の解明を目指す。 初年度である2020年度は、まず、格子欠陥固有の電子状態を精密に解析するため、局在電子状態の第一原理解析法であるDFT+U法ならびにHSE06汎関数法を導入し、予備的解析により欠陥電子状態の精密解析が可能であることを検証・確認した。さらに、本第一原理解析法を実施するための並列計算システムを構築し、並列計算のチューニングを行った。上記の手法・装置を用いて、原子空孔や転位、表面や粒界などの様々な欠陥構造における磁性や強誘電性発現の有無とその微視的性質を原子/電子レベルから評価した。例えば、転位部芯部では、転位線方向に正負の磁気モーメントが交互に現れる反強磁性が発現することを示した。また、その周囲にはらせん状の強誘電分極が現れることを示した。これは、いずれも欠陥特有の原子構造とそれに付随して生じるひずみと対応することを示唆しており、格子欠陥によって従来困難とされてきた原子スケールの機能性材料を作製できることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画は、格子欠陥の電子状態解析法と計算プログラムの整備改良、並列計算システムの構築、様々な格子欠陥における原子スケールの磁性や強誘電性発現の有無とその特性の原子/電子レベルから評価である。研究実績欄に記載のとおり、これらの予定項目はすべて実施し、それぞれの目的を達成している。したがって、本研究は当初予定どおり、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に進展しており、今後の研究の推進方策も当初予定した以下の項目について実施する予定である。 ・外力負荷に対する格子欠陥構造の変形特性の解明とそれにともなう磁性や強誘電性の変化応答特性の評価(マルチフィジックス特性評価)・電子状態からのマルチフィジックス特性の検討・メカニズム解明のための力学場・電気的場の評価手法の構築
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