2021 Fiscal Year Annual Research Report
機能化格子欠陥による磁性強誘電原子構造体の創出と力学的機能設計
Project/Area Number |
20H02027
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
嶋田 隆広 京都大学, 工学研究科, 教授 (20534259)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 格子欠陥 / 強誘電体 / 磁性 / マルチフィジックス特性 / 第一原理解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
マルチフェロイクス(磁性強誘電体)は、相反する発現機構を有する磁性と強誘電性の両物性を示す点に特徴があり、これらの特性間における相互作用を利用してナノ電磁気機械システムや記録メディアなどの科学技術基盤を成す材料として注目を集めている。本研究では、材料中に含まれる原子空孔や転位、結晶粒界といった格子欠陥にマルチフェロイック特性が発現し得ることに着目し、格子欠陥に固有の微視的原子・電子構造に依存して発現する磁性強誘電性とその発現機構を解明することを目的とする。 格子欠陥は欠陥固有の原子構造と電子的状態を有するため、外力に対して母材構造とは異なる変形性質を示す点に着目し、SrTiO3中の転位構造に対し、引張り負荷解析を行った。転位芯近傍に変形が集中し、負荷とともに転位上部の結合が徐々に切断され、転位から微小き裂への構造変化が生じることが明らかになった。これに伴い、応力場の指数が変化することを明らかにした。また、本解析と同じ条件でTEM内その場観察試験を実施し、変形や破壊の臨界値(破断ひずみや破断応力)が解析と一致することを示し、本結果の信頼性を実証した。 また、同SrTiO3の転位芯近傍の力学場に着目し、これによって生じる強誘電性・磁性を評価した。転位芯近傍の応力場は刃状、らせん、混合転位で異なり、それぞれ異なる強誘電分極を発現し、かつ、固有のP-Eヒステリシス応答を示すことを示した。特に、混合転位では、電場の印加方向によって、応答が異なり、OR、AND、NOTなどの論理回路として振る舞うことを明らかにした。すなわち、転位芯が論理回路として工学利用できる可能性を示した。 一方、次年度に向けたメカニズム解明のため、現有プログラムを欠陥周囲の物理場が解析できるよう改造を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の実施計画は、(1)欠陥固有の変形場の解明、(2)欠陥機能性の解明、(3)メカニズム解明のための物理場評価プログラムの実装、である。研究実績欄に記載のとおり、予定どおり研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の実施計画は、(1)欠陥周囲の物理場評価、(2)マルチフェロイックス性発現メカニズムの解明、(3)欠陥の数理モデリング、であり、これを遂行予定である。
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