2021 Fiscal Year Annual Research Report
Influence of the interference effects on radiative transfer in dense colloidal suspensions
Project/Area Number |
20H02076
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤井 宏之 北海道大学, 工学研究院, 助教 (00632580)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 吾朗 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (30218193)
渡部 正夫 北海道大学, 工学研究院, 教授 (30274484)
小林 一道 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (80453140)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 光学特性値 / 輻射(ふくしゃ)の干渉効果 / 干渉散乱理論と輻射輸送論 / 輻射輸送の普遍性 / 分光法と光イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「生体を模擬した高密度なコロイド溶液に対して、輻射(ふくしゃ)の干渉効果を組み込んだ輻射輸送モデル(輸送モデル)を新たに構築した上で、干渉効果が及ぼす光伝播への影響を明らかにすること」である。生体光イメージングや光治療において、生体内の光伝播を定量的に把握することが必要であり、光を輻射と捉えた輸送モデルが活用されている。しかし、従来の輸送モデルには、生体のような高密度な散乱媒体において重要となる干渉効果が考慮されていない。本研究では電磁波の散乱理論より干渉効果を考慮した散乱特性を計算し、輸送モデルに組み込んだ上で光強度の時間分解波形を数値計算する。また、短パルスレーザー光源による光強度計測も実施する。干渉効果が光伝播へ影響を及ぼす時空間スケールについて、散乱係数などで表される無次元数を用いて解析し、理論、数値計算、実験より体系的に明らかにする。この目的を達成するため、本年度は以下の3項目について研究を実施した。 1.光散乱特性を簡潔に記述するモデル式を開発した。モデル式により、単一散乱の寄与と干渉効果の寄与を分離して評価することに初めて成功した。 2.分担研究者の西村吾朗助教の波長可変の光計測システムを利用して、コロイド溶液(脂質エマルジョン)において、濃度20%まで21条件、720 nmから860 nmまでの6条件で光計測を実施した。光計測データを逆解析することで算出した光学特性値をモデル式より解析し、干渉効果の波長依存性を明らかにした。 3.分子動力学シミュレーションにより構造特性を計算し、干渉散乱理論に組み込んで散乱特性を計算した。粒子間の引力相互作用が散乱特性に強く影響を及ぼすことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度遅れていた光計測システムの構築について、90%程度が完了し、現在最終調整を行っている段階である。システム構築については、計画よりもやや遅れているが、モデル式の開発、計測結果や計算結果の解析について計画以上に進んでおり、総合的に「おおむね順調に進展している」と判断した。本年度は以下の3項目について研究を実施した。 1.光散乱特性を簡潔に記述するモデル式を開発した。モデル式により、単一散乱の寄与と干渉効果の寄与を分離して評価することに初めて成功した。また、モデル式より、干渉散乱理論の数値計算結果を無次元解析し、干渉効果の普遍性を初めて明らかにした。モデル式による研究成果について、学術論文として発表することができた(Fujii et al., Optics Express, 2022)。 2.分担研究者の西村吾朗助教の波長可変の光計測システムを利用して、コロイド溶液(脂質エマルジョン)において、濃度20%まで21条件、720 nmから860 nmまでの6条件で光計測を実施した。光計測データを逆解析することで算出した光学特性値をモデル式より解析し、干渉効果の波長依存性を明らかにした。研究成果を国際会議NIR2021でポスター発表し、100名以上の発表者の中からBest presentation awardに選出された(著者名:Inoue, Fujii, Nishimura, Aoki, Kobayashi, Watanabe)。 3.分子動力学シミュレーションにより構造特性を計算し、干渉散乱理論に組み込んで散乱特性を計算した。このような計算は世界で初めてである。粒子間の引力相互作用が散乱特性に強く影響を及ぼすことを明らかにした。計算結果をフーリエ変換する際に生じる数値誤差に関する問題点も解決することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究目的を達成するために、以下の3つの項目に取り組む。 1.光計測システム構築を完了させ、共同研究者である西村吾朗助教の所有する計測システムと併せて、より様々な波長と濃度の条件下で光計測を行う。また、光散乱特性に加えて、光強度のピーク時間も解析する。開発したモデル式より、干渉効果の波長依存性をより詳細に明らかにする。散乱特性とピーク時間におけるモデル式は開発済みであり、干渉の寄与を表す係数を1つ含んでいる。 2.これまでに計算した、単成分のLennard-Jonesモデルとソフトコアモデル(ともに分子動力学シミュレーションより計算)、粘着性剛体球モデル(解析的に計算)における光散乱特性の数値計算をモデル式より解析し、粒子間相互作用が及ぼす干渉効果への影響について普遍性の観点から明らかにする。 3.多成分のLennard-Jonesモデルの分子動力学シミュレーションを実施する。粒径分布として、ガウス分布や対数分布を考える。構造特性を精度良く計算するためには、長時間平均することが必要である。GPU計算パッケージであるRUMDを用いて高速に長時間計算する。開発者であるロスキレ大学のトロン准教授の協力を得ながら実施する。粒子数は少なくすることで計算効率を図り、少数粒子によって生じる有限サイズ効果を解決するための計算方法を用いる。計算コードは既に整っている。また、多成分の粘着性剛体球モデルによる計算結果と比較し、多成分の場合における粒子間の引力相互作用が及ぼす干渉効果への影響について明らかにする。多成分の粘着性剛体球モデルの計算コードは既に構築済みである。
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Research Products
(17 results)