2021 Fiscal Year Annual Research Report
超高耐久性メカニカルファスナーによる鋼構造物メンテナンスの改善
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20H02235
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
山口 隆司 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (50283643)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 厳 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 助教 (10869530)
森山 仁志 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 助教 (50825495)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 高力ボルト / 摩擦接合継手 / メカニカルファスナー / 皿型形状 / 高耐久 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,突出部が一切ない砂時計型形状のメカニカルファスナー(Double Spindle Fastener: DSF)を開発し,それを部材接合部に実装することであり,①皿型形状を両端に有する超高耐久性メカニカルファスナーの開発,②試作ファスナーおよびそれによる摩擦接合継手の耐荷性・防食性・疲労耐久性の評価,③超高耐久性メカニカルファスナーの実構造への適用,のこれら3つの課題を解決することで達成される. DSFはファスナー内部にねじ部を有しているため,呼び径M22に対して有効径が約16mmと小さい構造となっているため,F8T-M22高力ボルトと同等の締結性能を確保するためには引張強度が1400 MPaを超える高強度材料が必要となる.一方,高強度材料の使用には遅れ破壊の防止が必要条件であり,遅れ破壊の要因であるねじ部の応力集中を改善することが要求される.そこで2020, 2021年度はねじ部を詳細にモデル化した数値解析により,応力集中が改善されるねじ形状を検討した.結果として,ねじ開き角度は55 ~ 60°とするのが望ましいことを明らかにした.また,DSF用ナットの形状を検討する締付解析を行った.砂時計型形状とした場合の皿頭やねじ部の応力状態が締付用の差込口形状に依存することが判明し,締付性能を安定化させるために,皿型形状のナットのねじ部を貫通式とすることを決定した. 以上の本年度および過年度の検討結果を踏まえ,DSFを高力皿型ボルトと高力皿型ナットで構成することとし,その高力皿型ボルトには社会実装が既にされている既存品を使うこととした.また,高力皿型ナットも同様に,高力皿型ボルトにタップ加工を行い,貫通ねじ部を有した筒形状にすることした.現在,材料選定,タップ・熱処理工程・構造諸元(皿頭や首下R部の形状など)は,高力ボルトメーカーの技術者から意見交換をしつつ,進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020, 2021年度を通して,DSFの内部機構・ねじ形状・締付方法の検討を行ってきた.ファスナーとしてのDSFの構造・位置づけは明確化できつつあるが,試作DSFを用いた性能評価試験には至っていない.この理由は,既存高力ボルト相当の締結性能の確保を目的とした高強度材料の使用に伴う水素脆化への対策として,ねじ部の応力集中を緩和するためのねじ形状・内部ねじ機構・皿頭形状の検討に時間を要したためである.当初想定した非貫通式のDSFは皿型ボルトとそれにタップをした皿型筒ナットの二つで構成していた.しかしながらこの型式は,ねじ部の応力集中がねじ形状だけでなく,皿型筒ナットの下穴深さ,首下R部と端部の掛かりねじとの相対位置関係,遊びねじ山数など種々の因子に影響される敏感な構造であることが判明した.そこで,タップを貫通させた新しい皿型筒ナットをゼロから考え,製作・施工誤差や締付部材総厚の変化に対応できるノイズに強い内部機構を再検討していた.併せて,貫通式の筒ナットの製作性・生産性について高力ボルトメーカーの技術者へのヒアリングを行っていた. DSF締結用の電動レンチソケットや差込口形状については,後戻りのないよう貫通式のDSFに対して検討を行ったため,遅れが生じている. これらのことを踏まえ自己点検では「少し遅れている」と評価した.2022年度は申請時の研究計画と照らし合わせ,DSF自体の構造性能(引張耐力,せん断耐力,疲労強度)やトルク-導入軸力-回転角の関係をまず解明する.次に,DSFを用いた摩擦接合継手のすべり試験,腐食促進試験,疲労試験も実施する.研究計画の遅れを取り戻すため,研究分担者の所属組織にて一部実験を担当するように依頼し,承諾している.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は試作DSFの各種性能確認試験を実施するため,DSF製作用のねじ転造金型をまずは製造する.DSF自体の引張試験・せん断試験・締付け試験・疲労試験に加え,DSFを用いた摩擦接合継手のすべり試験,腐食促進試験(屋外暴露試験),長期リラクセーション試験を実施する.引張試験とせん断試験では,引張強度・せん断強度・破断伸び・破壊モードを確認する.また,引張試験では軸部と皿型頭部のひずみとボルト軸力の関係を明らかにし,供用ボルトの残存軸力の確認方法を検討する.締付け試験では,導入トルク-導入軸力-回転角-ひずみ-接合面の接触圧の関係を明らかにし,引張応力下での降伏限界を踏まえて,設計軸力と軸力管理方法を定める.製作・施工誤差が締付け特性に与える影響は数値解析により検討する.すべり試験では,試作ファスナーを用いた高力摩擦接合継手のすべり耐力・すべり挙動を明らかにする.暴露試験・長期リラクセーション試験では,長期供用で課題となる継手の腐食性能および遅れ破壊耐性や,高力摩擦接合継手で重要となるボルト軸力のリラクセーション特性を検討する.疲労試験では,締付け長さの異なる場合を対象に,応力範囲と応力比をパラメータにして実施する.締付け長さが短い場合,不完全ねじ部が皿型頭部に近く応力が集中しやすいため,き裂発生位置や疲労寿命に変化がないかを確認する.
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Research Products
(4 results)