2021 Fiscal Year Annual Research Report
EBPMに向けた交通インフラ・ストック効果計測手法の確立と事後評価への展開
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20H02274
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
織田澤 利守 神戸大学, 工学研究科, 教授 (30374987)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
多々納 裕一 京都大学, 防災研究所, 教授 (20207038)
瀬谷 創 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (20584296)
小池 淳司 神戸大学, 工学研究科, 教授 (60262747)
大平 悠季 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 助教 (60777994)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ストック効果 / 交通基盤整備 / 統計的因果推論 / EBPM |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度の研究実績として,主に以下に示す成果を得た. 1.差の差分(DD) 法による交通インフラ・ストック効果計測手法の開発と実証 我が国における高速道路整備がIC 周辺地域の雇用や事業所立地に及ぼす因果効果をランダムサンプリングと傾向スコアマッチング・差分の差分法を用いて推定した.その上で,処置群をいくつかの距離帯に分けて推定を行うことによって,効果の及ぶ空間範囲を明らかにした.さらに,従来より採用される代替的手法である,処置群の周辺地域(あるいは,周辺地域に含まれる個体)を対照群とする手法との比較を通じて,提案手法の有効性を示した.また,Synthetic control法や複数処置変数を考慮した傾向スコア法など新たな手法を適用し,交通インフラ整備の影響に関する実証分析を行なった. 2.操作変数法による高速交通ネットワーク整備政策の事後評価 三大都市(東京・大阪・名古屋)を除いた地方部の都市雇用圏を対象として,高速道路ネットワークの整備水準を示す市場アクセスと集積の経済を示す雇用者密度がそれぞれ地価に及ぼす因果効果の推定を行った.その際,欠落変数や逆の因果性によるバイアスが生じる可能性を考慮し,明治時代の市場アクセスと人口密度を操作変数とする操作変数法を採用した.推定の結果,市場アクセスと雇用者密度に関して共に有意な結果が得られたことから,高速道路ネットワークによる他都市へのアクセス性や雇用者密度が地価に正の因果効果を及ぼすことが明らかとなった.最小二乗法と操作変数法の推定値の差が比較的に小さいことから,これまでの高速道路整備が地方都市圏間で大きな偏りが生じないように満遍なく進められてきた可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね当初の計画どおり進展している.実績概要に示した1の成果については,それぞれ土木学会論文集D3(土木計画学),Journal of Transport and Land Use,Case Studies on Transport Policyに掲載されている.また,2については,第63回土木計画学研究発表会で口頭発表済みである上,成果をまとめた論文は土木学会論文集D3(土木計画学)への登載が既に決定している.さらに,より頑健な整備効果を計測するために,2時点階差データを用いる分析の枠組みをR3年度中に構築しており,R4年度に推定を行う予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度であるR4年度には,以下の方針で研究を進める. (A)操作変数法による高速交通ネットワーク整備政策の事後評価:2時点階差データを用いた操作変数法による高速道路ネットワーク整備効果の因果推定を行う.具体的には,全国の216 の都市雇用圏に含まれる1,257市町村を対象とし,1971 年から2011 年までを対象期間として推定を行う.都市雇用圏を一体的な経済圏域として捉え,都市雇用圏単位でマーケットアクセス指標を算出する.操作変数として,我が国の戦時下に提案された道路計画を利用するとともに,inconsequential な道路整備に着目した方法を採用する. (B)道路整備による誘発需要に関するエビデンスの検証:誘発需要を考慮した交通量推計の手法の開発に向け,道路整備による誘発需要に関するエビデンスを多様な角度から検証する.まず,道路整備による土地利用変化について実証分析を行う.次に,土地利用変化に伴う誘発需要の発現を計測可能な手法を開発し,実証分析を行う.その上で,誘発需要を考慮した交通量推計手法の開発と便益計測法の検討・提案を目指す. (C)交通インフラ整備効果の地域間異質性に関する分析:交通インフラ整備が地域の空間構造や産業構造へ及ぼす影響について分析し,整備効果の地域間異質性について明らかにする.また,都市間交通インフラ整備と地域特化の経済の因果関係について検討する.因果構造モデルの定式化,指標や操作変数の選定,推定と結果の考察を行う. (D)エビデンスに基づく事後評価のためのガイドライン策定:最終年度であるため,これまでの研究成果及び課題の整理・体系化を図る.また,事後評価ガイダンス策定に向けた検討を行う.
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Research Products
(9 results)