2020 Fiscal Year Annual Research Report
Proposal of Structural Design Method for Steel Structures Based on Ultimate Performance using Collapse Analysis
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20H02292
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松井 良太 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (00624397)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡崎 太一郎 北海道大学, 工学研究院, 教授 (20414964)
竹内 徹 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (80361757)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 崩壊解析 / ブレース / 塑性変形能力 / 模型載荷実験 / 合成梁 / 鋼構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
災害時における鋼構造物の被災事例は枚挙にいとまがなく,地震や風により崩壊した事例は年々増え続けている。人命を保護するため,局部座屈や部材破断などの不安定現象により,鋼構造物が倒壊しないよう設計手法が体系化されているが,事業継続性や居住快適性が重視されるなど,鋼構造物に対する要求は高度化しつつある。現行の設計体系で規定されていない鋼構造物の性能を迅速に評価できる信頼性の高い手法を,構造設計に携わる実務者が利用できれば,より冗長性の高い社会基盤を構築し得ると考えられる。本研究課題では,設計者の技量や熟練度に依らず,鋼構造物の限界性能を検証できる構造設計手法を提示することを目標としている。 数値解析プログラム整備のため,数値解析によりブレースおよび梁の耐力や塑性変形性能を検証した。梁については,これまで純鉄骨を中心として数値解析モデルを検討し,実構造物で多用される合成梁も含め検討する必要性を実感し,本研究課題に追加した。床スラブの仕様を変えた3種の合成梁に関して載荷実験を実施した。 ブレースの性能を整理したデータベースを構築するため,国内外における90件程度の既往の研究成果を調査し,502体の繰返し荷重を受けるブレース試験体の実績を抽出した。うち多数を占めたH形56体,中空円形62体,中空角形90体の断面を有する試験体のうち,建築基準法上,高い塑性変形能力があるランクに分類された試験体は1割から2割程度と寡少であることを確認した。同ブレースは実務上用いられる頻度は高く,構造性能を検証することが急務であることを再認識した。 構築したデータベースを参照し模型載荷実験では実績の少ない試験体として,断面や端部境界条件が異なる,有効細長比10から20の太短い試験体6体と,有効細長比30と80の試験体2体を製作した。載荷実験に向け実験場を整備し,効率的に模型載荷実験を進められるよう準備した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は,数値解析プログラムの整備を進め,鋼構造部材のデータベースを構築し,ブレースの模型載荷実験の準備を進めるよう計画した。 鋼構造を構成する各部材の変形性能を評価する数値解析モデルを整備しつつある。各部材のうち柱については,本研究課題に取り組む前に局部座屈による耐力劣化を表現した数理モデルを構築していたため,2020年度はブレースと梁を主として数値解析モデルを検討した。有限要素法を用いて繰返し荷重を受ける角形鋼管ブレースを分析し,実験で亀裂が生じ始める断面の角部でひずみが集中することを確認した。代表者が開発してきた円形鋼管ブレースの変形性能を簡易に評価できる歪振幅拡大係数を,角形鋼管ブレースに拡張するため,両ブレースの局部座屈性状に関する差異を明らかにした。汎用の時刻歴応答解析プログラムにより動的荷重を受ける合成梁を分析し,断面を構成している要素の変形能力を調節することで,梁端部で徐々に亀裂が生じる挙動を再現した。 ブレースのデータベースについては,細長比および幅厚比と,耐力や塑性変形能力について整理できた。学術資料から抽出したH形,中空円形,中空角形断面のブレース計208体が破断に至るまでの塑性変形能力は,幅厚比が大きいほど小さいが,細長比とは明瞭な関係がないことを確認した。現行の建築基準法では,ブレースが有する塑性変形能力の優劣を細長比のみで評価しているが,幅厚比も評価指標に含むべきと考えられる。一般的なブレース付鋼構造骨組の層が高さの1/50程度変形する場合,ブレースの細長さに関係なく太短いブレースにおいても座屈後耐力が,建築基準法で用いられている評価式の1/3を下回る例が見られた。 以上より,当初予定していた2020年度の研究目標をおおむね達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の研究成果を踏まえ,以下の通りに研究を進める予定である。 (1)繰返し荷重を受ける太短いブレースの耐力および塑性変形能力を実験的に検証する。2021年度では,2020年度に製作したブレース試験体の繰返し載荷実験を遂行する予定である。載荷履歴に正負交番の繰返し三角波を用い,累積変形や歪振幅が太短いブレースの耐力や塑性変形能力に及ぼす影響について確認する。端部における接合条件と,太短いブレースの有効座屈長や塑性化後の変形との関係を明らかにする。断面の一部を切り出した素材の引張試験と,短柱圧縮試験の2つの試験を実施し,ブレースの材料特性を測定する合理的な試験方法を吟味する。 (2)数値解析によりブレースおよび合成梁が有する塑性変形能力を分析する。2020年度までに分析していたブレースおよび合成梁について,局部座屈後の耐力劣化や塑性変形能力を評価する手法に関して検討を深める。角形鋼管ブレースの角部において,応力三軸度や相当塑性歪の累積値などの物理量を確認し,代表者が進めてきた手法を適用し同部の疲労特性を評価することで,角形鋼管ブレースが破断に至る過程を再現することを試みる。2020年度に実施した合成梁の載荷実験結果を参照し,繰返し荷重を受ける合成梁が梁端接合部において亀裂が進展する性状を分析する。 (3)ブレースのデータベースに関する成果を審査論文へ発表する。 2020年度に収集したブレースのデータベースに関する成果をまとめ,学術雑誌へ投稿し審査論文として登載されることを目指す。
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