2021 Fiscal Year Annual Research Report
Proposal of Structural Design Method for Steel Structures Based on Ultimate Performance using Collapse Analysis
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20H02292
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松井 良太 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (00624397)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡崎 太一郎 北海道大学, 工学研究院, 教授 (20414964)
竹内 徹 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (80361757)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 崩壊解析 / ブレース / 塑性変形能力 / 模型載荷実験 / 有限要素解析 / 鋼構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,鋼構造物の限界性能を検証できる構造設計手法を提示することを目標としている。2021年度では,鋼構造物の中でも,鋼材ブレースと合成梁の力学的性能を検証することに焦点を当てて研究計画を立てた。 第一に,2020年度に構築したデータベースを参照して製作した鋼材ブレースを対象とした模型載荷実験を実施した。試験体の断面には,H形鋼,円形鋼管,角形鋼管の3種を選定した。接合部には,境界条件の剛柔によるブレースの力学的性能の差異を確認すべく,端部のエンドプレートと溶接接合した形式と,ガセットプレートを介して接合した形式の2種を設定した。細長比を19から28とした太短いブレースを6体,比較のため51から65の比較的細長いブレースを4体用意した。H形鋼のフランジ幅厚比を6,円形鋼管の径厚比を31から39,角形鋼管の幅厚比を22から33となる断面を採用した。全試験体を繰返し載荷し,ブレースの耐力および塑性変形能力を検証した。本研究を計画した時点で予期していなかったブレースの破壊挙動を確認した。 次いで,鋼材の破壊力学の考え方を導入し,代表者が提案してきた繰返し載荷を受ける鋼材ブレースの塑性変形能力を評価する手法を発展させた。有限要素解析により,既往の載荷実験における角形鋼管ブレースの最大圧縮耐力,局部座屈による耐力劣化などの挙動について再現を試みた。他研究者が提案した破壊力学における鋼材の空隙進展モデルに適合する,鋼材ブレースの局部に集中した塑性歪を抽出するため,部材の要素分割,鋼材の材料特性などの条件を調整した。有限要素解析より得られた結果から,要素の歪をブレース軸方向にわたって抽出し,材全体の変形で局所に集中する塑性歪を評価するために必要となる事項を整理した。合成梁については,2020年度に実施した実験を参照し,コンクリート床スラブの有効幅の設定が性能に及ぼす影響を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
模型載荷実験より,太短いブレースの耐力および塑性変形能力が,細短いブレースより優れていることを確認した。繰返し載荷を受けたH形鋼または円形鋼管のブレース試験体は,曲げ座屈により材全体が変形し,中央の局部座屈を生じた個所で,塑性歪の集中により亀裂を生じた。一方,角形鋼管のブレース試験体は,材全体にわたり曲げ座屈による変形は確認されず,材端部で生じた局部座屈による塑性歪の集中により亀裂を生じ,H形鋼や円形鋼管のブレース試験体より塑性変形能力の劣る破壊モードを示した。太短い角形鋼管と円形鋼管のブレース試験体は,それぞれ1/200 radと1/125 radに相当する層間変形角で局部座屈を生じた個所で亀裂を生じた。これより,稀または極稀に生じる地震が生じた場合,ブレースに設計した通りの耐力を期待できない可能性があることが明らかとなった。現行の建築基準法では,細長比の小さい太短いブレースの塑性変形能力を高く設定しているが,細長比のみならず幅厚比の制限値を設け,想定した荷重に対して局部座屈を生じないよう措置を取ることが肝要と考えられる。 角形鋼管ブレースの耐力と塑性変形能力を,有限要素解析で分析した。角部における応力三軸度はほぼ変化せず,相当塑性歪のみで亀裂発生条件を議論し得ることを見出した。角部では軸方向と板厚方向の歪が周方向より大きく,概ね断面幅の1/4の範囲で塑性歪が集中することを確認した。局部に集中する歪を,材全体の変形から推定するための係数を考慮し,代表者が進めてきた手法を適用し同部の低サイクル疲労性能を概ね評価できることを明らかにした。 コンクリート床スラブと鋼梁で独立した要素でモデル化した場合,床スラブの有効幅を柱幅の1.3倍とするとデッキプレート付合成梁の性能を良好に評価することができた。 以上より,当初予定していた2021年度の研究目標をおおむね達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の研究成果を踏まえ,以下の通りに研究を進める予定である。 (1)太短いブレースの仕様を広範化し,力学的性能を実験的に検証する計画を立てている。2021年度に実施した試験体では,細長比,幅厚比,接合部形式の検討例が少なく,角形鋼管のブレース試験体に至っては,現行の建築基準法の通りに期待した性能を発揮するために,ブレースに求められる寸法や材料特性の条件を見いだせていない。このため検討対象の範囲を広げ,2021年度にブレース試験体を製作し,2022年度で実験を遂行することを予定している。有限要素解析の分析によると,細長い角形鋼管ブレースでは塑性変形能力の劣る破壊モードは確認されていないため,本実験で同様の結果を確認できれば,ブレースに求められる条件を把握できると期待される。 (2)2021年度までに分析していた,角形鋼管ブレースを対象とした局部座屈後の耐力劣化や塑性変形能力を評価する手法に関して検討を深める。簡単のため2021年度ではブレースを平面応力要素の一種であるシェル要素で構成していた。破壊力学で鋼材の亀裂発生条件の検討により適した立体要素を用いてより詳細にブレースの挙動を分析することとする。有限要素解析で得られた亀裂発生箇所の応答を吟味し,代表者が進めてきた手法を適用し同部の疲労特性を評価することで,角形鋼管ブレースが破断に至る過程を再現することを試みる。断面を角形鋼管に限定せず,他の断面で構成されたブレースの性能を総合的に評価することを目指す。 (3)2021年度までに検討した合成梁の数値解析モデルを発展させ,デッキプレートの配置方向が合成梁の力学的性能に及ぼす影響を分析する予定である。 (4)2021年度までに検討した成果をまとめ,学術雑誌への登載を目指す。効率的に成果をまとめられるよう,必要に応じて電子機器や,参考図書を購入する。
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Research Products
(8 results)