2020 Fiscal Year Annual Research Report
燃料デブリからの核種溶出に及ぼす有機酸・炭酸影響評価
Project/Area Number |
20H02665
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐々木 隆之 京都大学, 工学研究科, 教授 (60314291)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桐島 陽 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (00400424)
秋山 大輔 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (80746751)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 燃料デブリ / 溶解挙動 / 有機物 / 炭酸 / 錯生成反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
東京電力福島第一原子力発電所(1F)では、燃料デブリの取出し、分析の準備が進んでいる。燃料と燃料被覆管および原子炉構造材が高温で反応・生成したと想定される合金系デブリ等は地層処分対象となる可能性がある。地下水シナリオに基づく安全評価を行う上で、種々のデブリ固相の安定性、地下水中に含まれる有機物等の錯体の影響を考慮したデブリの溶解挙動の理解は重要となる。これまで各酸化物相および固溶体相の水への溶解挙動が検討されてきたが、特にUFeO4相単独での評価例はなく、合金系デブリの溶解反応の十分な理解には至っていない。本年度の研究では、UFeO4を主固相とするU-Fe酸化物試料を調製(U3O8とFe3O4をモル比1:1で摩砕混合、975℃加熱)し、生成物に酸を加えて加温し、未反応物を選択的に溶解する酸処理を行うことで精製した。粉末X線回折スペクトルのリートベルト解析において、UFeO4とFe化合物が検出された。また微量のU3O8も検出された。同固相の水への溶解挙動を観察し、その結果を熱力学的に解釈することを試みた。有機物の影響を予察的に検討するため、マロン酸を含む系での浸漬を行った。浸漬において、中性pH域では同固相およびU3O8基準試料でSchoepiteの生成が確認された。塩基性域では固相XRDピークに変化は見られなかった。なお、Fe固相は全pH域でHematiteが得られた。Uの溶解度は酸性域からpHの増加と共に減少し、中性pHでほぼ一定となったが、水中の炭酸イオンが僅かに溶解度を増加させたと推察された。マロン酸を含む水相においては、見かけのU溶解度がさらに増加する傾向を見い出した。但し浸漬開始3週後までの時間経過に伴いU濃度が上昇し続けたことから、溶解平衡に至っていない可能性が考えられ、より長期の浸漬試験が必要であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
燃料デブリを取出した後、廃炉完遂に向けて前進するには、最終処分に対するまだ見えない処分安全評価基準をクリアする必要がある。諸外国の使用済燃料の直接処分に照らして、過度に保守的な前処理を施すことなく、できる限り現実的な処分方法を模索するためには、未処理の燃料デブリが有機酸や炭酸を含む水に対しどのように化学的劣化を引き起こすかを理解することが重要である。本年度は事故進展での格納容器内を想定した雰囲気条件で生成したと想定される燃料デブリの一つとしてウラン鉄酸化物(模擬燃料デブリ)に着目した。予備検討の結果、本研究での試料加熱温度域において、ウランジルコニウム酸化物固溶体にFeが有意に固溶することは無かった。調製後の模擬デブリについて、導入した粉末X線回折装置により相関係を評価し、未反応のウラン酸化物および鉄酸化物を確認した。さらに、酸処理により精製できることを見出した。結果得られた化合物の主固相はUFeO4であり、これを当初計画通り水に浸漬する実験を開始した。液相pHを酸性、中性、アルカリ性に制御し、大気雰囲気としたことから、微量の炭酸イオンが溶存している。これらにカルボン酸配位子として、マロン酸を最大100mM添加した。液相中のU濃度は時間と共に増加傾向にあることを確認した。固相はXRDスペクトルの解析により、一部が相変化したことを予察的に確認できた。さらに予察的な考察のため、3価アクチノイドの模擬物質として希土類酸化物を調製し、固相が複数の希土類元素の固溶体であることを評価するとともに、水への浸漬後の固相の一部が水酸化物に変化することを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、デブリの化学的劣化に及ぼす有機酸・炭酸の寄与明らかにするため、使用済燃料が格納容器内材料と高温反応した際に生じる種々のデブリを想定した模擬デブリを調製し、有機酸および炭酸存在下でのデブリからの核種溶出実験、および分光法による固相表面や溶存種の状態分析を行ない、デブリ溶解反応の総合的理解を目指している。これまでの検討で、模擬燃料デブリであるウラン鉄酸化物からのUの見かけの溶解度は、pHおよび有機酸濃度によって変化することを見出した。この変化は固相状態(主に固液界面)や浸漬後の液相の化学条件に依存すると考えられる。そこで今後は、但し浸漬開始3週後までの時間経過に伴いU濃度が上昇し続けたことから、溶解平衡に至っていない可能性が考えられ、より長期の浸漬試験が必要であることが分かった。今後はまず、UFeO4固相のXRD測定結果を詳細に解析するとともに、液相の化学条件、U,Feの濃度、分光学的手法を用いて得られる溶存種の化学状態をもとに、溶解挙動の熱力学的な解釈を進める。さらに、U,Fe原子の価数の情報を得るためXAFS測定を計画する。また、他の模擬燃料デブリへの展開としてCa含有酸化物等を調製し、同様の評価を試みる予定である。
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Research Products
(4 results)