2020 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanism and structural elucidation of an extractant for minor actinide partitioning
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20H02672
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
宮崎 康典 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 高速炉・新型炉研究開発部門 燃料サイクル設計部, 研究職 (10812852)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
穂坂 綱一 東京工業大学, 理学院, 助教 (00419855)
足立 純一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 研究機関講師 (10322629)
下條 竜夫 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 准教授 (20290900)
星野 正光 上智大学, 理工学部, 教授 (40392112)
村松 悟 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 助教 (40837796)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 光電子分光実験 / HONTA |
Outline of Annual Research Achievements |
使用済燃料再処理で発生する放射性廃棄物は発熱核種のマイナーアクチノイド(MA; Am, Cm)を含み、地層処分する上で、処分場面積等が課題となっている。再処理廃液からのMA分離によって、地層処分に係る負担低減が見込まれ、様々な新規抽出剤が開発されている。本研究では、MAと錯形成するN,N,N',N',N'',N''-hexaoctylnitrilotriacetamide (HONTA)の放射線分解で生成する中間体(ラジカルカチオン)に注目し、分解機構の解明に向けて、実験と量子化学計算を組み合わせた取組を行う。 令和2年度には、高エネルギー加速器研究機構 放射光実験施設(Photon Factory, PF)にて、真空紫外光(Vacuum Ultraviolet, VUV)による光電子分光(Photoelectron Spectroscopy, PES)実験を行った。金板塗布したHONTAに対するVUV光照射で放出する電子の運動エネルギーを測定し、スペクトルの信号の立ち上がりから垂直遷移に伴うイオン化エネルギーを推定するとともに、密度汎関数法(Density Functional Theory, DFT)によって、電子構造の解析を行った。また、光電子-光イオン同時測定法(Photoelectron Photoion coindidence, PEPICO)の従来型装置を立ち上げ、基礎実験や装置周りの整備を行うとともに、難揮発性分子の真空導入に向けて、放射光源模擬のHeランプをイオン化光源としたレーザー脱離超音速ジェットの予備実験を実施し、分子線中に存在するHONTAの数密度を評価した。 これらについては、当初計画のHONTAの電子構造に係るデータを取得しているが、装置開発で数々の課題が挙げられたことから、令和2年度の進捗状況はやや遅れていると判断する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度には、HONTAの価電子領域に注目した真空紫外光(VUV)の光電子分光(PES)実験を主に実施した。金板塗布したHONTAを真空チャンバーに装荷し、所定真空度にて、20 eV ~ 35 eV の1光子イオン化で放出する電子の運動エネルギーを測定した。電子束縛エネルギーに変換後、信号の立ち上がりを垂直遷移に伴うイオン化エネルギーとして取得するとともに、スペクトルの形状と一致する密度汎関数と基底関数の組合せから、HONTAの電子構造を明らかにした。 光電子-光イオン同時測定法(PEPICO)では、従来型装置を用いて、所定時間ごとに放射光を切出すことでパルス化可能なパルスセレクターの導入実験を行った。針先塗布したHONTAに対する軟X線照射において、質量スペクトルでは窒素(N2)と酸素(O2)のみが検出されたことから、HONTAの信号検出に向けて、針先塗布を含めた試料の導入方法や測定条件の最適化が要検討事項となった。 熱分解を抑制する難揮発性分子の真空導入に向けて、レーザー脱離超音速ジェットで生成したHONTAに対して、放射光源模擬のHeランプの照射による予備実験を行った。355 nm励起のXe/Arレーザーでは検出可能なイオン数を生成するが、Heランプでは検出可能なイオン数を稼げない、もしくはマトリックス材料であるグラファイトが分子線に混入してHONTAのイオン化を阻害する等の課題が挙げられた。 当初計画のHONTAの電子構造に係るデータを取得しているが、装置開発で数々の課題が挙げられたことから、令和2年度の進捗状況はやや遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度にはHONTAの内殻電子に注目した軟X線照射実験を行う。金板塗布したHONTAに対し、炭素(C)、酸素(O)、窒素(N)のそれぞれに相当する軟X線照射で放出する電子を取得するとともに、内殻電子を考慮可能な量子化学計算との比較によって、結合状態を評価する。 また、HONTAは比較的高い蒸気圧で、若干の加熱による気化可能性が示唆されたことから、加熱気化装置を工作し、光電子分光実験による検証実験を行う。 光電子-光イオン同時測定法(PEPICO)の装置開発では、パルスセレクターと針先塗布したHONTAの基礎実験を継続し、質量スペクトルのデータ取得に向けた条件検討を行う。レーザー脱離機器の開発では、マトリックス材料のグラファイトに由来するイオン等がHONTAのイオン化を阻害する可能性を受けて、分子線混入のないよう、不要イオンを事前除去するための改良を施す。 量子化学計算では反応経路探索ソフトGRRM(Global Reaction Route Mapping)を導入し、電子基底状態にあるHONTAの構造異性体を探索するとともに、ボルツマン分布をもとに、室温での存在比を考察する。
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Research Products
(1 results)