2020 Fiscal Year Annual Research Report
小惑星リュウグウは何でできているか?化学組成を蛍光X線分析で決める。
Project/Area Number |
20H02773
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
中井 泉 東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 教授 (90155648)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
由井 宏治 東京理科大学, 理学部第一部化学科, 教授 (20313017)
圦本 尚義 北海道大学, 理学研究院, 教授 (80191485)
寺田 靖子 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 分光・イメージング推進室, 主幹研究員 (90307695)
阿部 善也 東京電機大学, 工学研究科, 助教 (90635864)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リュウグウ / 蛍光X線分析 / 放射光X線分析 / はやぶさ2 / 小惑星試料 / 化学組成分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
波長分散方式(WDXRF)蛍光X線分析装置リガクZSX PrimusIVによるリュウグウ試料の炭素を含む元素分析を行うため定量方法の検討を行った。その結果標準試料とFP法を用いて22成分の分析を行う定量アプリケーションを構築した。小惑星試料を粉末のままWDXRF装置内部へ導入する際の試料搬送および減圧/リークによる試料の飛散・散逸を防ぐため,専用真空機構と制御方法の開発を行った。その結果,単体機能の動作に関しては粉末試料が飛散することなく試料導入・排出可能であることを確認した。一方、微小試料は、堀場製作所のX線顕微鏡XGT-9000を用いて試料の微小部を非破壊で定量分析することと、元素のイメージングを行い偏析の状態の観察を目指した。試料の軽元素を分析可能とするために、炭素から検出できるSDDを搭載するなどの改良を行った。また、試料が紛失しないような試料セルの製作と真空機構の開発を行った。既知試料においてFP法での定量分析の評価と、試料の元素イメージング、また、試料中の炭素の検出に成功した。 リュウグウ試料の放射光蛍光X線分析による特性化を行うために,SPring-8 BL37XUでの実験条件の検討を行った.X線エネルギーは10~37keVの間で可変であり,ビームサイズは最大で0.5ミクロン角程度の集光ビームが利用できるため,試料1粒子の精密分析が可能である。SPring-8のBL08Wにおいて、116keVのX線による高エネルギー放射光蛍光X線分析を指向した検証実験を行った。 ラマンによる分析に向けて、炭素質コンドライト隕石のXRFならびにラマン分析を行った。まずXRF分析で広域の元素組成分布を探査し、水質変性の痕跡として代表的なマグネタイトやカルサイトの候補位置を効率的に見つけ、次に同一箇所における顕微ラマンスペクトル解析を行い、両者の鉱物の存在を確証づける手順を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
WD-XRFでは、装置開発の遅れにより装置の総合試験および模擬試料による分析テストは次年度持ち越しとなった。 高エネルギー放射光蛍光X線分析においては、希土類元素を中心とした微量重元素の検量線を作成することができた。ただし、検証用に用いた隕石の重元素濃度が検量線の濃度レンジに比べて全体的に低く、より低濃度の標準物質を導入する必要があることがわかった。したがって、希土類元素存在度パターンの簡易取得は容易ではないことがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
リュウグウ試料が昨年末に無事に帰還を果たしたので、2021年6月末に、我々蛍光X線分析チームは分配される小惑星試料について2020年度に検討した以下のA~Cに示す分析を行う。 A.蛍光X線高精度組成分析 はやぶさ2による回収試料の化学組成決定にはC分析の成否が鍵となる。蛍光X線装置でCを分析するために高出力X線管と専用分光結晶を用いる。分析はリガクの波長分散方式(WDXRF)の蛍光X線分析装置ZSX PrimusIVで行う。WDXRFでC分析を行うためには試料を数Pa程度の真空雰囲気へ導入することが必要であり、2020年度に開発した方法を用いる。 B.X線顕微鏡とラマン分光による微小部分析 微小試料は、堀場製作所のX線顕微鏡XGT-9000を分析装置 として用いる。X線顕微鏡は、試料の微小部を非破壊で分析可能で、微小試料の分析にも適している。とくにFP法を用いることで検量線の作成が不要で、リュウグウ試料のような未知サンプルの定量分析に適しており、炭素の分析も試みる。顕微ラマン法を有機的に連携して用い、高次元の状態分析を実現させる。 C.放射光X線分析 放射光実験はSPring-8 BL37XUで行い、ビームサイズは最大で0.5ミクロン角程度の集光ビームが利用できるため,試料1粒子の精密分析が可能である。116 keVの単色X線を用いるHE-SR-XRFは、Uまでの全重元素を非破壊かつppmの感度で検出可能な分析手法である。この手法により、通常のXRF装置では検出が困難な希土類元素を中心とした微量重元素について、非破壊非接触で定量分析し、各種隕石と比較し特異性を明らかにする。検出された元素について、XANESスペクトルを蛍光法で測定することにより、元素の化学状態を明らかにし、リュウグウを形成する元素の酸化還元状態について知見を得る。
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Research Products
(6 results)