2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Chlorine-Free Seawater Electrolysis based on the Control of Oxygen Vacancies in Layered Manganese Dioxide
Project/Area Number |
20H02844
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
中山 雅晴 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (70274181)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 真明 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授(テニュアトラック) (00582206)
藤井 健太 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (20432883)
隅本 倫徳 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (40414007)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 酸素欠陥 / 塩素発生 / 酸素発生 / 二酸化マンガン / 水素製造 / コバルト |
Outline of Annual Research Achievements |
再生可能エネルギーによる水の電気分解は水素社会において重要な役割を果たすと考えられ,様々な反応条件(電解液の種類など)を想定する必要がある。例えば,無尽蔵に存在する海水の直接電解によって水素を製造できれば,コストや原料へのアクセシビリティーという点で優位性は高まる。中性~アルカリ領域において,酸素発生反応(OER)は塩素発生反応(CER)よりも480 mV熱力学的に有利だが,一般的な電極を使った塩水の電解では速度論的に有利なCERが優先する。塩素は毒性・腐食性をもつため,水素製造を目的とした場合,対極(アノード)では無害な酸素を選択的に生成する必要がある。本研究では,Naを層間にインターカレートした積層二酸化マンガンを300℃で熱処理することによって乱層化と酸素欠陥形成が起こること,その結果,顕著なOER選択性が発現することを見出した。この現象は電析二酸化マンガン薄膜に対して認められたが,2021年度はこれをさらに進めることとした。すなわち,より大きな電流密度を得るために,薄膜ではなく粉末材料を合成し,そのOERとCERに対する触媒活性を調べた。電解液には中性塩水だけでなく,様々なpHに調整した塩水を用いた。新たな触媒として,工業用電解二酸化マンガン(EMD)にコバルトと酸素欠陥を導入した粉末材料を合成した。この触媒は高いOER選択性と大きな電流密度を示した。具体的には,0.5 M NaCl水溶液中,10mA/cm2で定電流電解を行い,発生Cl2量を定量したところ,OER効率は88%に達した。また,0.1 M NaOHを添加した0.5 M NaCl中,10 mA/cm2到達時の過電圧は350 mVと見積もられ,ベンチマークである貴金属酸化物触媒(ルテニウム,イリジウム)に匹敵する性能であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画では,触媒として積層二酸化マンガン薄膜のみを考えていた。しかし,当初計画よりも早く研究が進んだ結果,薄膜系については既に論文を発表し,2021年度後半から,より実用性の高い系,すなわち,粉末材料に展開している。そこではこれまでのOER選択性に加え,電流の絶対値も指標にした。また,電解液は無添加の中性塩水だけでなくアルカリ領域も研究対象とした。このように薄膜から粉末形態,中性からアルカリ領域に拡張したことも区分(1)とした理由である。ここまでドーパントとしては遷移金属を選んできたが,2022年度はルテニウムやイリジウムを使用し,OER選択性を高く維持したまま,より大きな電流密度を達成する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)触媒材料の開発 二酸化マンガンに酸素欠陥を導入することでOER選択性が発現することが明らかになったが,これだけでは電流密度は大きくならない。OER活性点を増やすために,2021年度はコバルトドープを試みたが,2022年度はさらにルテニウムやイリジウムなど貴金属原子のドープを試みる。また,結晶構造の異なる二酸化マンガンの合成にも取り組む。 (2)電気化学測定法の改良とメカニズム解析 回転リング-ディスク電極を使った実験を行い。リング電流からCER電流を分離し,その結果からOER選択性を予測する。これまでは定電流電解における発生塩素量よりOER効率を決定していたが,この方法だと個別条件での情報しか得られない。回転リング-ディスク法を用いればOER効率の電位・電流依存性が一度の実験で明らかになるため,メカニズム解析がやり易くなる。 (3)エレクトロライザーの製作 2電極式のフローセルを製作し,長時間耐久試験を行うことで,実装化に近づける。
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Research Products
(13 results)