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2022 Fiscal Year Annual Research Report

量子ビームの相補利用によるスズ系ペロブスカイトの欠陥構造の解明

Research Project

Project/Area Number 20H02848
Research InstitutionKyushu University

Principal Investigator

飯久保 智  九州大学, 総合理工学研究院, 教授 (40414594)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 石丸 学  九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (00264086)
樹神 克明  国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究主幹 (10313115)
松下 正史  愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (90432799)
Project Period (FY) 2020-04-01 – 2024-03-31
Keywords有機無機ペロブスカイト / XAFS / TEM / 中性子回折
Outline of Annual Research Achievements

有機無機ペロブスカイト化合物を太陽電池の光吸収層に使用したペロブスカイト太陽電池は、光電変換効率が25.7 %と従来のSi系太陽電池に匹敵する値を達成しており、次世代の太陽電池として注目されている。高効率なペロブスカイト太陽電池は鉛ベースのペロブスカイトを使用しているため、鉛の毒性が問題視されることからスズベースのペロブスカイトが代替材料として期待されている。しかし、スズが大気中で酸化されやすいことによる不安定性が原因となり、変換効率は鉛ベースのペロブスカイト太陽電池を下回っている。スズペロブスカイトの欠陥について詳しく調べることは、欠陥抑制への知見を深めることにつながる。
これまでにSn-PVK合成法の検討を行い、XRDやSEMを用いた試料評価により結晶性の良いSn-PVKの作成方法を確立した。2年目に研究代表者は異動のため、実験装置、並列計算機の移設を余儀なくされたが、本研究課題の研究費支援のおかげで迅速に研究環境の再構築を行うことができた。そこで本年度は、第一原理計算およびX線吸収微細構造(XAFS)を利用して、スズペロブスカイトの欠陥について調査することを目的とした。化学式ABX3で表されるペロブスカイト構造において、AサイトはCH3NH3+(MA+)、BサイトはSn2+、XサイトはCl-、Br-、I-で、それぞれ全置換した構造における欠陥形成エネルギーを第一原理計算により求めた。また、物質の局所構造についての情報が得られるXAFSの測定、およびX線吸収端近傍構造(XANES)の理論計算を行い、Xサイトをそれぞれ全置換したペロブスカイトについて局所構造解析を行った。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

MASnX3(X=Cl、Br、I)の欠陥形成エネルギーを計算した。VCl (VBr、VI)、Sni、VSn、Cli (Bri、Ii)は欠陥の種類を表しており、それぞれCl空孔(Br空孔、I空孔)、格子間Sn、Sn欠陥、格子間Cl(格子間Br、格子間I)である。いずれも、Sn空孔と格子間Cl、Br、Iの形成エネルギーが低く安定であることが明らかとなった。つまり、これらの欠陥を形成しやすいということになる。また、格子間Clおよび格子間BrについてはMASnI3と異なりSn空孔よりも形成エネルギーが低い値を示した。このことからMASnI3においてはSn空孔が最も入りやすく、MASnCl3およびMASnBr3においては格子間Cl、格子間Brが最も入りやすいことがわかった。しかし、いくつかの先行研究では本研究の結果と異なる結果が得られていることから、Sn空孔よりも格子間原子の形成エネルギーが低くなるという結果の妥当性については、さらなる検討が必要であると考えている。
MASnX3のXANESスペクトルの実験値および理論値を比較したところ、XANES理論スペクトルは実験スペクトルの形状を再現した。XAFSデータの解析では、MASnX3の結晶構造をフィッティングした結果、元の構造モデルから大きなずれは確認できず、欠陥構造を実験的に確認することはできなかった。より詳細な局所構造解析を行うためには、今後、欠陥形成エネルギー計算などにより考えうる欠陥構造モデルを作成し、XAFS理論計算を行う必要があると考える。また、MASnBr3の合成に使用したSnBr2のXAFS解析から、SnBr2中のスズが一部4価に変化している可能性が示唆された。ペロブスカイトおよび理論スペクトル合成の際に、スズの酸化を防ぐことに十分に注意する必要があると思われる。

Strategy for Future Research Activity

今年度は、九州大学筑紫キャンパスに設置されている透過型電子顕微鏡を最大限に活用してSn-PVKの欠陥構造の解明に取り組む.本課題遂行に強力な手法として注目しているプリセッション電子回折法は、ナノスケールの結晶方位分布を明らかにする事ができるもので、筑紫キャンパスにはこれを行うことができる共用の電子顕微鏡が設置されている国内で数少ない研究拠点である.そこでSn-PVKとPb-PVKとの光電変換効率の違いを結晶方位分布のナノスケールにおける違いから詳細に調査する。TEM用試料作成と観察に必要となる特殊なTEM用グリッドについては既に購入しており、その使用方法について前年度に調査済みである.今年度はこのグリッドを用いてTEM観察試料を作成し、Sn-PVKとPb-PVKとの結晶方位分布の違いに注目して研究を進める.これにより光電変換効率向上のための指針を得る.
またSn-PVKの変換効率が低い原因として、Snが大気中で容易にSn2+からSn4+に酸化され、それにより形成されたSn空孔がトラップ密度を高め変換効率を低下させているのではないかと考えられている。昨年度、MASnX3(X=Cl、Br、I)のXサイトの違いによる欠陥形成エネルギーを評価した結果、Sn空孔と格子間Cl、Br、Iの形成エネルギーが低く、安定であることがわかった。特に、MASnI3はSn空孔の形成エネルギーが最も低く、MASnCl3、MASnBr3ではそれぞれ格子間Cl、格子間Brの形成エネルギーが最も低い値を示し、この違いは興味深いと考えている。しかしながらいくつかの先行研究の結果と異なるため、MASnCl3、MASnBr3においてSn空孔よりも格子間原子の形成エネルギーが低くなるという結果の妥当性については、さらなる検討が必要であると考える。今年度はこの点についても電子状態計算により検討を進め、詳細を明らかにしたいと考えている。

  • Research Products

    (6 results)

All 2022

All Journal Article (5 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] Relationship between Carrier Density and Precursor Solution Stirring for Lead-Free Tin Halide Perovskite Solar Cells Performance2022

    • Author(s)
      Baranwal Ajay Kumar、Nishimura Kohei、Liu Dong、Kamarudin Muhammad Akmal、Kapil Gaurav、Saini Shrikant、Yabuki Tomohide、Iikubo Satoshi、Minemoto Takashi、Yoshino Kenji、Miyazaki Koji、Shen Qing、Hayase Shuzi
    • Journal Title

      ACS Applied Energy Materials

      Volume: 5 Pages: 4002~4007

    • DOI

      10.1021/acsaem.1c03622

  • [Journal Article] Influence of charge transport layer on the crystallinity and charge extraction of pure tin-based halide perovskite film2022

    • Author(s)
      Zhang Yaohong、Kamarudin Muhammad Akmal、Li Qiao、Ding Chao、Zhou Yong、Yao Yingfang、Zou Zhigang、Iikubo Satoshi、Minemoto Takashi、Yoshino Kenji、Hayase Shuzi、Shen Qing
    • Journal Title

      Journal of Energy Chemistry

      Volume: 69 Pages: 612~615

    • DOI

      10.1016/j.jechem.2022.02.003

  • [Journal Article] Structural and thermoelectric properties of CH3NH3SnI3 perovskites processed by applying high pressure with shear strain2022

    • Author(s)
      Wang Qing、Tang Yongpeng、Horita Zenji、Iikubo Satoshi
    • Journal Title

      Materials Research Letters

      Volume: 10 Pages: 521~529

    • DOI

      10.1080/21663831.2022.2057821

  • [Journal Article] Unveiling the Role of the Metal Oxide/Sn Perovskite Interface Leading to Low Efficiency of Sn-Perovskite Solar Cells but Providing High Thermoelectric Properties2022

    • Author(s)
      Baranwal Ajay Kumar、Saini Shrikant、Sanehira Yoshitaka、Kapil Gaurav、Kamarudin Muhammad Akmal、Ding Chao、Sahamir Shahrir Razey、Yabuki Tomohide、Iikubo Satoshi、Shen Qing、Miyazaki Koji、Hayase Shuzi
    • Journal Title

      ACS Applied Energy Materials

      Volume: 5 Pages: 9750~9758

    • DOI

      10.1021/acsaem.2c01437

  • [Journal Article] Suppression of Defect and Trap Density through Dimethylammonium-Substituted Tin Perovskite Solar Cells2022

    • Author(s)
      Kamarudin Muhammad Akmal、Sahamir Shahrir Razey、Nishimura Kohei、Iikubo Satoshi、Yoshino Kenji、Minemoto Takashi、Shen Qing、Hayase Shuzi
    • Journal Title

      ACS Materials Letters

      Volume: 4 Pages: 1855~1862

    • DOI

      10.1021/acsmaterialslett.2c00275

  • [Presentation] Structure Stability and Optical Properties of Tin-based Iodide Perovskite2022

    • Author(s)
      Satoshi Iikubo1,*, Atsuko Ide2, Kumiko Yamamoto2, Qing Wang1, Qing. Shen3, Kenji Yoshino4, Takashi Minemoto5, and Shuzi Hayase
    • Organizer
      PVSEC-33

URL: 

Published: 2023-12-25  

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