2020 Fiscal Year Annual Research Report
ウリ科の異属間単為結実に関わる分子メカニズムの解明
Project/Area Number |
20H02974
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
志村 華子 北海道大学, 農学研究院, 講師 (20507230)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉山 慶太 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター, 研究領域長 (30414767)
鈴木 卓 北海道大学, 農学研究院, 教授 (30196836)
実山 豊 北海道大学, 農学研究院, 講師 (90322841)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | スイカ / 単為結実 / ウリ科植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
スイカの雌花にユウガオの花粉を受粉すると単為結実が生じる。これまでに様々なウリ科植物を用いて受粉試験を行ったが、スイカを単為結実させることができるのはユウガオ花粉の受粉のみであることが分かった。ユウガオの花粉は単為結実を引き起こす特異的な反応をスイカの子房内で誘導すると考え、受粉処理から経時的にスイカ子房を採取し、RNA-seqを用いたトランスクリプトーム解析によって単為結実に関わる遺伝子の探索を行った。また、これまでにスイカに外来遺伝子を導入する効率的な方法は確立されていない。そこで、コムギで報告されている茎頂組織への直接導入法(iPB法)をスイカへ応用し、遺伝子導入法として利用できるかについて検討した。 各受粉区においてスイカ全遺伝子のリードカウントを算出し、クラスター解析により遺伝子発現パターンの類似性をみた。受粉からの経過時間ごとで大まかにクラスタリングされたが、無受粉区は36時間後以降、各受粉区とは異なるクラスターに分かれた。ユウガオ花粉受粉96時間後の肥大区は、スイカ花粉受粉96時間区と同じクラスターに分かれ、異属花粉の受粉であっても同様の遺伝子発現パターンにより子房肥大が起こっていると考えられた。一方、ユウガオ花粉受粉96時間後の非肥大区は受粉後72時間のクラスターに含まれ、受粉72時間までに子房肥大を導く遺伝子発現変動が起こるかがユウガオ花粉による単為結実に関わると考えられた。iPB法の検討では、ボンバードメント後24時間で茎頂組織における一過性GFP発現が観察され、一過性発現効率は1350psi,0.6μmの条件に最も高く、60%程度の導入率だった。一方、伸長した葉についてPCRによりGFP導入率を調べたときには導入率は20%程度になっていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ユウガオなど異属花粉を受粉した際、スイカ子房の形態的変化を経時的に調べると、子房肥大が起こるかどうかを見分けられるのは受粉後72時間から96時間であり、それ以前ではユウガオ花粉を受粉したどの子房が肥大するかを形態で区別することはできなった。今回、トランスクリプトーム解析によって異属花粉を受粉させたスイカ子房の遺伝子発現変動を網羅的に解析したが、果実肥大が起こるかどうかで遺伝子発現パターンが分かれてくるのも受粉72時間頃であり、単為結実に関わる重要な遺伝子発現変動があるのはこの時期であることを見出すことができた。今後はこの受粉72時間前後に注目してより詳細な解析を行う予定である。 スイカ茎頂組織へのDNA直接導入では、茎頂組織を適切に処理することや遺伝子導入させるタイミングが重要であることが分かり、これらの条件検討を行うことで、約60%の茎頂組織でGFPを発現させることができた。一方、外来遺伝子の導入はキメラであり、伸長した葉での導入率の低下がみられたことから、最初の導入効率の向上を検討するとともに、外来遺伝子が導入したシュートを効率的に選抜する方法が必要であると思われた。これらの進捗状況をふまえ、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
トランスクリプトーム解析の結果から、ユウガオ花粉の受粉後48から72時間に単為結実の是非をきめる遺伝子発現変動があると推察された。今後は受粉後48および60時間のサンプル数を増やし、より詳細な遺伝子発現変動を見出す解析を行う。また、結実誘導応答が動きはじめた後では、ユウガオ花粉受粉区でもスイカ花粉受粉区と同様の遺伝子発現パターンがあることがわかり、特にジベレリン合成、ジベレリン応答性遺伝子の活性化が果実肥大に関わることがトランスクリプトームの結果から考えられた。ユウガオ花粉が受精を伴わずにスイカ同様にジベレリン応答を誘導するメカニズムを明らかにするために、受粉後36から48時間の子房におけるユウガオ花粉受粉特異的な遺伝子発現応答に注目する。これまでのトランスクリプトーム解析によっていくつかのシグナル伝達経路の活性化が検出されていることから、ユウガオ花粉による単為結実とこのシグナル伝達経路の関わりについて解析する。 スイカへの外来遺伝子導入法の改良では、スイカ種子の前処理、培地の検討などによって初期の導入効率の向上を検討し、また、導入処理後の個体に摘心を行なって側芽を伸長させ、早い時期でどの葉序に遺伝子導入があるかを調べることで導入効率の高い個体を効率的に選抜できるか検討する。また、自家受粉を行なって次世代個体を作出し、後代へも外来遺伝子の導入が維持されるかを調べる。
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