2021 Fiscal Year Annual Research Report
Reconsidering algal CO2-concentrating organelles from the perspective of liquid-liquid phase separation
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20H03073
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山野 隆志 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (70570167)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 相分離 / CO2濃縮機構 / ピレノイド / 葉緑体 / クラミドモナス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、藻類が持つ液-液相分離(以下、相分離)するオルガネラをモデルとして、水圏環境の光合成の維持に関わるCO2濃縮機構を相分離の視点で捉え直すことである。具体的には、藻類の葉緑体内でCO2固定酵素Rubiscoが凝集した構造であるピレノイドについて、1) 相分離する性質を持つピレノイドの構成因子、2) ピレノイド構成因子の1細胞観察によるドロプレット内の分子の振る舞い、3) 相分離の状態が異常になったピレノイド変異株のスクリーニングによるピレノイドの消失・生成・数・分裂を制御する因子の同定、について明らかにする。昨年度は、マイクロ流体デバイスを用いたピレノイド分裂の高解像度リアルタイム1細胞観察系を立ち上げるとともに、Rubisco結合モチーフをもつタンパク質をコードする遺伝子が破壊されたピレノイド形成変異株の単離・解析を行った。今年度は、これらの解析をさらに推し進め、ピレノイドの形成不全により、CO2濃縮に関わる重炭酸イオン輸送体の蓄積が顕著に減少することや、ピレノイド周囲に局在するCO2濃縮に必須なタンパク質の局在が異常になることを初めて見出した。また、ピレノイド構成タンパク質と蛍光タンパク質Venusとの融合タンパク質を発現する株に対して、高解像度リアルタイム1細胞観察系を用いてFRAP(光褪色後蛍光回復法)を適用できる観察系を構築し、CO2濃度条件によって蛍光の回復速度が異なることを見出した。さらに、ピレノイドの数に注目し、その数が異常になった変異株を複数単離し、生育や光合成活性などの表現型解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度単離したピレノイド形成異常変異株の表現型解析を完了し、論文を準備しているとともに、ピレノイドの高解像度リアルタイム1細胞観察を用いたFRAP実験系の立ち上げや、ピレノイドの数を指標にした新規なピレノイド形成変異株の単離にも成功したため、「当初の計画以上に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
分子遺伝学的に同定したピレノイド構成因子についての研究をまとめ、7月にプリンストンで開かれる国際学会で招待講演するとともに、国際学術誌で発表する。高解像度観察系を用いて、ピレノイドの分裂を観察し、相分離するピレノイドを構成する因子が、細胞分裂時にどのようにふるまうのか、その挙動を詳細に観察する。具体的には、Rubisco、ピレノイド周囲に局在するタンパク質、デンプン鞘に局在するタンパク質、ピレノイドチューブ(ピレノイドに貫入したチラコイド膜)に局在するタンパク質とVenusとの融合タンパク質を発現する株を作出する。また、これまで単離したピレノイドの数が異常になった変異株の原因遺伝子を同定し、機能を解析するとともに、その変異株におけるピレノイド分裂の様子を同様に1細胞観察する。野生株と変異株のピレノイドの分裂の挙動を定量的に比較解析できる系を立ち上げる。
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Research Products
(16 results)