2020 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of onset mechanism of bovine leukemia and development of an early diagnosis method based on lymphocyte clonality analysis
Project/Area Number |
20H03142
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
猪熊 壽 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (70263803)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
芳賀 猛 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (20315360)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 牛伝染性リンパ腫 / クローナリティー解析 / リンパ球増多症 / 発症マーカー / ウイルス発がん |
Outline of Annual Research Achievements |
1.年度当初に研究代表者、研究分担者及び研究協力者が、研究の目的、役割分担、研究の流れを共有するために打合わせ会議を対面またはオンラインで実施した。 2.BLV感染PL牛274頭のBリンパ球クローナリティーを、申請者らが確立した方法(Maezawa et al. 2000)により解析したところ、モノクローナルを示したものはいなかったが、マイナークローナル10検体(3.7 %)、オリゴクローナル31検体(11.3 %)であり、PL牛の14.0 %が一部腫瘍化した細胞を保有していることが示唆された。 3.BLV感染PL牛のBリンパ球クローナリティーを経時的に観察したところ、ポリクローナル233検体のうち1年後にEBLを発症した個体は全くいなかったのに対し、オリゴクローナル31検体のうち2頭(6.5%)で1年後にEBL発症が確認された。オリゴクローナルはEBL発症について高いリスクを有する可能性が考えられた。また、オリゴクローナルを呈31検体のうち、1年後の継続検査を実施できた14検体を解析したところ、マイナークローナル1検体、オリゴクローナル2検体、ポリクローナル11検体であった。BLV感染PL牛のBリンパ球のクローナリティーが一方向性ではなく、可逆的に変化することがわかった。 4.牛伝染性リンパ腫発症症例について地元の診療施設等に研究協力を依頼し、発症牛の確保体制を構築し、本年度4症例に遭遇した。発症牛4頭中2頭で末梢血Bリンパ球のモノクローナル増殖が確認された。うち1頭はPLも体表リンパ節腫大もない症例であり、PCRによるクローナリティー解析が牛伝染性リンパ腫診断に有効であることが示された。また、他の1頭では経時的に採取保存されていた材料の解析により、臨床症状発現前から既にモノクローナルを呈していたこと、発症時には別のクローンが増殖したことも明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の2つの目的と研究計画と実績を比較した場合の進捗状況は以下のとおりであるので、初年度は全体としてはおおむね順調に推移していると考えられる。 【クローナリティー異常の観点からのウイルス性白血病の発症機序解明】非腫瘍であるポリクローナルな状態と腫瘍化であるオリゴ、マイナーまたはモノクローナルな状態の検体を比較、あるいは同一個体の免疫状態等を経時的に観察するために、初年度は候補となる牛を確保することが主たる目的であった。BLV感染PL牛274頭の末梢血Bリンパ球クローナリティー解析を行い、その14.0 %がクローナリティー以上であることを見出し、今後の経時的観察を行うための十分な材料が確保できた点で、初年度としては順調に推移していると思われる。 【牛リンパ球のクローナリティー解析を利用した牛白血病早期診断法開発】現在用いているクローナリティー解析の感度は70%程度であり、感度の改善に対するアプローチは机上での構想にとどまっており、実証実験ができていない点がやや遅れている。しかしながら、2症例ではあるものの、非典型的で臨床診断が困難な発症牛の摘発にリンパ球クローナリティー解析が有効であること、また臨床症状発現前から既にモノクローナルを呈していた症例がいたことが明らかとなったことから、本法が牛白血病早期診断の方法として有効である可能性が示された点で、有意義な結果が得られたと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の2つの目的について、それぞれ以下のような推進方策を計画している。 【クローナリティー異常の観点からのウイルス性白血病の発症機序解明】クローナリティー異常は時間経過により様々に変化し、すべてのオリゴまたはマイナークローナル個体がEBL発症に至るものではないことが明らかとなったことから、今後はBLVウイルス感染したBリンパ球のクローナリティー状態の変化の時期に何が生じているのかを明らかにすることを目的とする。とくに今年度は、既にオリゴまたはマイナークローナルを呈していることが明らかな牛の末梢血クローナリティーを経時的にモニターするとともに、免疫関連遺伝子の発現状況を同時に明らかにする。 【牛リンパ球のクローナリティー解析を利用した牛白血病早期診断法開発】リンパ球クローナリティー解析が牛白血病早期診断の方法として有効である可能性が示されたことから、今後は、①症例を蓄積することにより、その特異性と、どのような場合により有効であるかという知見を集積する、②現在70%程度であるBリンパ球クローナリティーPCRの感度を向上させるために、Bリンパ球の免疫グロブリン遺伝子のH鎖領域以外に着目し、新たな検出系の確立を目指す。今年度はIgH-DJ、IgK、IgLの遺伝子再構成に関する遺伝子情報から新たなプライマーセットを設計し、既に収集したB細胞リンパ腫症由来のゲノム遺伝子を材料に、その感度と特異性を確認する。
|
Research Products
(12 results)
-
[Journal Article] Analysis of the bone morphogenetic protein 6 gene promoter region in young beef cattle affected by enzootic bovine leukosis2021
Author(s)
Maezawa, M., Watanabe, K., Matsumoto, K., Kobayashi, Y., Ogawa, H., Inokuma, H.
-
Journal Title
J. Vet. Med. Sci.
Volume: 83
Pages: 898-904
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-