2022 Fiscal Year Annual Research Report
卵子が持つ精子DNA損傷を修復する能力の分子機構の解明
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20H03254
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大野 みずき 九州大学, 医学研究院, 助教 (70380524)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日高 京子 北九州市立大学, 基盤教育センター, 教授 (00216681)
手島 康介 九州大学, 理学研究院, 教授 (20447593)
續 輝久 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 訪問研究員 (40155429)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 卵子DNA修復 / 次世代影響 / 精子DNA損傷 / 突然変異 / ゲノム維持 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は前年度に引き続き、DNA損傷を持った精子が受精した際の卵子中のDNA修復機構の重要性を明らかにするためのマウスの交配実験を行った。塩基除去修復、ヌクレオチド除去修復、DNAミスマッチ修復機構に属する遺伝子のホモ欠損メスマウスは、生後8週齢まで通常飼育し、野生型オスマウスと交配し産仔を得た。オスマウスは酸化剤投与群と非投与コントロール群の2分に分け、投与群では生後4週齢より酸化剤である臭素酸カリウムを自由飲水形式で投与し、期間終了後の生後8週齢時点からメスマウスと交配した。非投与群は通常飼育を行い同じ週齢から交配を開始した。それぞれの組み合わせの交配で、出産回数、産仔数と死産仔数、産仔の表現型などを解析した。全ての組み合わせ群の交配で少なくとも2匹のメスから複数産仔が得られ、その仔には顕著な表現型異常は観察されなかった。このことから、これらのDNA修復機構を完全に欠損によってメスの生殖細胞機能は不全になることはなく、少なくとも若い週齢では生殖細胞の成熟、排卵、妊娠、出産が可能であることがわかった。一方で、酸化剤を投与した野生型マウスオスとの交配では、塩基除去修復機構に属し酸化DNA損傷を修復するOGG1タンパク質をコードするOgg1遺伝子が欠損したメスマウスでのみオスマウスへの酸化剤投与による影響が見られた。個体の影響を排除するため1匹の酸化剤投与野生型オスマウスに対してOgg1欠損メス、野生型メスマウスを同一ケージで交配して産仔数を解析したところ、Ogg1欠損メスの1産目のみ有為に産仔数の低下が見られた。このことより、精子の酸化DNA損傷の受精後修復にはOGG1が重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの蔓延による影響でマウスの繁殖が予定通りに行えず、実験に使用する遺伝子型を持つメスマウスが計画通りに得られなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
得られた産仔とその両親の組織サンプルを採取し、ゲノムを抽出して次世代シーケンス解析を行う。両親が持たず、子で新たに生じた変異を抽出する。変異頻度や変異の種類を明らかにすることで、メス由来卵子のDNA修復機構の状態、オスへの酸化剤投与の影響をゲノムレベルで解析する。
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