2020 Fiscal Year Annual Research Report
がんの線維化におけるMeflinの機能解析と新規治療法の開発研究
Project/Area Number |
20H03467
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
高橋 雅英 藤田医科大学, その他部局等, 教授 (40183446)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榎本 篤 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (20432255)
浅井 直也 藤田医科大学, 医学部, 教授 (80273233)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Meflin / ISLR / Gremlin1 / がん関連線維芽細胞 / 大腸がん / BMPシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
がんは間質で増殖するがん関連線維芽細胞(Cancer-associated fibroblasts; CAF)がその進展に影響を与えていることが知られている。CAFにはがんを促進する「がん促進性線維芽細胞」とがんを抑制する「がん抑制性線維芽細胞」の 2 種類があることが示唆されてきた。しかし、どのような分子機構により、これらの機能的な違いが決定されるのかは明らかでなかった。また、大腸がんの進展に影響を及ぼすBMP(bone morphogenetic protein)シグナルがどのように調節されるかについても未解明である。 本研究では、網羅的な遺伝子解析を用いて、大腸がんの CAFに特異的に発現し、かつBMP に関連した遺伝子として、Meflin(別名:ISLR)とGremlin 1 を同定した。われわれはMeflinが、膵がんにおける「がん抑制性 CAF」のマーカーであり、BMP シグナルを増強する役割があることが明らかにしていたが、今回、大腸がん組織中の異なる CAF に発現するMeflinとGremlin 1という分子が、大腸がんの BMP のシグナルを調節することにより、それぞれがんを抑制および促進することを明らかにした。さらに、Gremlin1の機能を抑制、あるいはMeflinの発現を増やすことでBMP シグナルが増強され、大腸がんの増殖が抑えられた。病理組織検体を用いた遺伝子発現解析により、Meflinを多く発現する大腸がん患者は良好な予後を示し、Gremlin 1 を多く発現する大腸がん患者は予後不良を示すことが明らかになった。これらの結果から、「がん促進性 CAF」および「がん抑制性 CAF」には、それぞれGremlin1 およびMeflinが高発現し、CAF の機能的な多様性の本態が両分子の BMPシグナルへの関与の違いによるものである可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
約 50 年前に最初に同定された BMP は、現在では消化管上皮の生理的状態の維持やがん細胞自体の増殖の調節に関わっていることは知られているが、がん間質では BMP シグナルがどのように調節されているかは明らかではなかった。本研究は、大腸がんにおける間質の BMP シグナル調節には、CAF が分泌するMeflinとGremlin1が貢献していることを初めて明らかにした。今まで理解が不十分であった CAF の機能的な多様性は、MeflinとGremlin 1 の発現のバランスと、それによる BMP シグナルの制御で説明できる可能性があり、本研究は、今後の CAF の多様性の研究の発展に大きく寄与するものと考える。また、がんに対する新規治療法の開発において、間質の BMP シグナルを人為的に増強することにより、大腸がん進行を抑制できる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方向として、がん線維芽細胞におけるMeflinの発現を増加させることで、がん間質におけるBMPシグナルを増強し、新たながんの治療法開発につなぐ研究を展開する。がんの間質で増えるがん関連線維芽細胞(CAF)でのMeflinの発現を遺伝子操作あるいは化合物によって変化させることにより、抗がん剤の効果が増強できるかどうかを、さまざまながんマウスモデルを用いて解析する計画である。CAFの性質を人為的に改変する技術がヒトのがんの治療にも応用できる可能性についても検討する。 今回の研究にて機能的に異なる種類の CAF が大腸がん間質に存在すること明らかにした。しかしながら、これらの CAF の起源細胞については諸説があり、詳細は明らかになっていない。CAF の多様性に対する本質的な理解をさらに深めるために、がん関連線維芽細胞の起源に関する研究をさらに推進する。。
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[Journal Article] The Balance of Stromal BMP Signaling Mediated by GREM1 and ISLR Drives Colorectal Carcinogenesis2021
Author(s)
Kobayashi H, Gieniec KA, Wright JA, Wang T, Asai N, Mizutani Y, Lida T, Ando R, Suzuki N, Lannagan TRM, Ng JQ, Hara A, Shiraki Y, Mii S, Ichinose M, Vrbanac L, Lawrence MJ, Sammour T, Uehara K, Davies G, Lisowski L, Alexander IE, Hayakawa Y, Butler LM, Enomoto A, Takahashi M, Worthley DL, Woods SL et al.
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Journal Title
Gastroenterology
Volume: 160
Pages: 1224-1239
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Portal Vein Injection of Colorectal Cancer Organoids to Study the Liver Metastasis Stroma2021
Author(s)
Kobayashi H, Gieniec KA, Ng JQ, Goyne J, Lannagan TRM, Thomas EM, Radford G, Wang T, Suzuki N, Ichinose M, Wright JA, Vrbanac L, Burt AD, Takahashi M, Enomoto A, Worthley DL, Woods SL
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Journal Title
JoVE Journal
Volume: Sep 3
Pages: ー
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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