2020 Fiscal Year Annual Research Report
膵臓がんの頑健性の分子基盤の解明とその破壊による新規治療法の確立
Project/Area Number |
20H03524
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
園下 将大 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (80511857)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 清永 第一薬科大学, 薬学部, 教授 (10278327)
市川 聡 北海道大学, 薬学研究院, 教授 (60333621)
大塩 貴子 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教 (80723238)
小沼 剛 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 助教 (10631682)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 膵がん / 頑健性 / 表現型スクリーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
がんは日本人の死因の第一位で、対策が急務となっている。種々のがんの中でも特に治療の選択肢が少なく、患者の予後が最も悪いものが膵がんである。哺乳類実験系で膵がんの本態の解明や治療標的候補の同定が進められてきたものの、それらの知識はいまだ断片的で、詳細な発生機序や、他のがん種に比べて治療に対する頑健性が極めて高い理由は解明されていない。 そこで本研究では、治療に対する膵がんの頑健性の成立機序を解明し、その知見に基づいて新規膵がん治療戦略を創出する。特に本研究は、脆弱性を人為的に誘導する新しい方法論の提唱を目指す。本研究の遂行により、膵がんの治療応答性の詳細な分子機序を明らかにして新規膵がん治療法を確立し、膵がんの本態解明と福祉向上の両面に貢献することを目指す。 初年度はまず、膵がん遺伝子型モデルハエの作出ならびに表現型解析実施した。膵がん患者の中で最も予後不良の患者群が有する4遺伝子変異(がん遺伝子KRASの活性化、がん抑制遺伝子群TP53やCDKN2A、SMAD4の不活性化)を模倣した4-hitハエは、細胞の過剰な増殖や運動能の亢進、そして致死表現型を呈した。これらは、RAS活性化のみ模倣した1-hitハエやRAS活性化とTP53不活性化を模倣した2-hitハエと比較して著明な腫瘍表現型であった。 次に、これらの表現型の発現に関与するシグナル伝達経路を同定すべく、これらのハエを使用してキナーゼの網羅的遺伝学解析を実施した。その結果、4-hit表現型を促進する新規治療標的キナーゼ群を同定することに成功した。並行して新規膵がん治療薬候補も見出したが、臨床と同様、効果は限定的だった。次年度以降、この頑健性の詳細な分子機序の解明に取り組む。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、膵がん遺伝子型モデルハエの作出と表現型解析が完了している。さらに、これらのハエを使用した遺伝学スクリーニングや薬物試験も進行中で、膵がんの治療抵抗性に関与する候補キナーゼ群や、膵がん形質を抑制する低分子を複数同定することに成功している。以上より、本研究は現在まで概ね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度の解析で申請者らは、特定のキナーゼ阻害薬の効果が膵がん遺伝子型モデルハエにおいて限定的であることを見出している。この治療抵抗性を膵がん形質の一つとして捉え、次年度はこの頑健性の成立に関与するキナーゼの網羅的同定を完了するとともに、臨床検体におけるそれらの遺伝子の発現と予後・治療応答性の相関を解明する。さらに、低分子を使用してそれらの遺伝子の機能を培養ヒト膵がん細胞において阻害し、頑健性の破壊とそれによる治療応答性の向上を目指す。
|