2021 Fiscal Year Annual Research Report
抗真菌薬を基盤とした胆道・膵臓がんに対する新規治療薬の創製
Project/Area Number |
20H03533
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
齋藤 義正 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 教授 (90360114)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大江 知之 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 准教授 (30624283)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 胆道・膵臓がん / 抗真菌薬 / オルガノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究により、胆道がんおよび膵臓がん患者由来のオルガノイドを用いた既存薬スクリーニングを行うことで、アモロルフィンやフェンチコナゾールなどの抗真菌薬を含む複数のヒット化合物を特定している。これらの化合物のin vitroでの増殖抑制効果を胆道・膵臓がんオルガノイドを用いて確認した。また、経口抗真菌薬であるイトラコナゾールを胆道がん細胞を皮下移植させたヌードマウスにゾンデを介して経口投与させたところ、有意な増殖抑制効果を認めた。イトラコナゾールは胆道がんや膵臓がんを最小限の副作用で効率的に抑制する新規予防・治療薬の強力な候補になると考えられる。さらに、ヒット化合物の1つであるフェンチコナゾールを構造展開することで、高い脂溶性、CYP阻害、全身循環時の毒性などの問題点を解決し、標的である胆道に選択的に移行するフェンチコナゾール誘導体を創製した。 一方で、米国・ジョンズホプキンス大学、英国・ケンブリッジ大学、オランダ・エラスムス医療センターおよび慶應義塾大学との国際共同研究により、胆道がんオルガノイドの樹立に成功した複数の施設において、オルガノイドの樹立成功率や樹立の成功に関わる因子などを比較検討した。全体の樹立成功率については、胆道がんは 37.2%(32/86)であり、各施設間での樹立成功率に有意な差は認められなかったものの、大腸がんなどの他のがん種に比べ、樹立成功率が低いことが明らかになった(van Tienderen GS et al. Cancer Cell 40: 226-230, 2022)。胆道がん患者由来のオルガノイドを用いた個別化医療などを実用化するためには、胆道がんオルガノイドの樹立成功率を向上させる必要がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者らは、これまでに難治性がんの代表である胆道・膵臓がん患者由来の組織を用いて、オルガノイド培養技術により生体内の特性を保持したまま培養することに成功し、既存薬ライブラリーによるスクリーニング系を確立した。興味深いことに、ヒット化合物の中に複数の抗真菌薬が含まれており、これらの薬剤が、ドラッグ・リポジショニングにより、胆道・膵臓がんに対する安全かつ有効な抗腫瘍薬となる可能性が期待される。本研究では、胆道・膵臓がん患者由来のオルガノイドを樹立し、抗真菌薬が胆道・膵臓がん細胞の増殖を抑制する分子機序を解明すると共に、抗真菌薬を基盤とした胆道・膵臓がんに対する新たな治療薬を創製することを目的としている。 前年度までの研究により、樹立した胆道・膵臓がんオルガノイドを用いて、東京大学創薬機構から提供された既存薬ライブラリー(1520 化合物)を使ってスクリーニングを行い、176のヒット化合物を得た。ヒット化合物の多くはゲムシタビンなどの既存の抗腫瘍薬であったが、ヒット化合物の中に、抗真菌薬、スタチン系薬剤、ドパミン D2 受容体遮断薬、mTOR 阻害薬などが含まれていた。特に、イトラコナゾールなどの経口抗真菌薬は白癬菌感染症(水虫)などに対する治療薬として使用されており、市販化合物なので既に安全性が確認されている。さらに、これらの抗真菌薬をリード化合物として構造展開を行うことで、胆道・膵臓がん細胞の増殖をより強力に抑制する画期的な低分子医薬品の合成を進めており、研究は概ね順調に進んでいるといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、抗真菌薬およびその誘導体を胆道・膵臓がんに対する新規治療薬として臨床応用するため、動物モデルを用いたin vivoでの薬物動態評価および抗腫瘍効果を検証し、非臨床POCの取得を目指す。 具体的な研究実施計画としては、胆道・膵臓がん患者由来のオルガノイドを皮下移植することで、ゼノグラフトモデルを作製する。さらに、より生体に近いモデルで薬剤の抗腫瘍効果を検証するため、肝内胆管がんの同所移植モデルとして、高発光ルシフェラーゼを導入した胆管がん細胞を免疫不全マウスの肝臓に直接移植するモデルを作製する。腫瘍の肝臓への生着はIVISイメージングシステムにて確認する。これらの腫瘍移植マウスに合成した化合物を投与し、経時的に採血を行うことにより薬物動態評価を行う。化合物投与後の腫瘍サイズをIVISにて測定し、コントロール群と比較することでin vivoでの抗腫瘍効果を検証する。抗真菌薬の合成展開および誘導体の薬物動態評価を行い、これらの化合物のin vivoでの増殖抑制効果を確認することで非臨床POCの取得を行う。以上の創薬アプローチから、抗真菌薬を基盤とした胆道・膵臓がんに対する革新的な新規治療薬を創出する。 一方で、大腸がんなどの他のがん種に比べ、胆道がんオルガノイドの樹立成功率が低いことが実用化に向けた課題となっている。現在考えられている課題を解決することで、胆道がんオルガノイドの樹立成功率を向上させ、個々の胆道がん患者由来のオルガノイドに対する抗真菌薬およびその誘導体の効果を検証することで、胆道がんに対する新たな個別化医療の開発を目指す。
|
Research Products
(8 results)
-
-
-
-
-
[Journal Article] Building consensus on definition and nomenclature of hepatic, pancreatic, and biliary organoids.2021
Author(s)
Marsee A, Roos FJM, Verstegen MMA; HPB Organoid Consortium*, Gehart H, de Koning E, Lemaigre F, Forbes SJ, Peng WC, Huch M, Takebe T, Vallier L, Clevers H, van der Laan LJW, Spee B.(*Hepatic, Pancreatic, and Biliary (HPB) Organoid Consortium のメンバーとして参加)
-
Journal Title
Cell Stem Cell
Volume: 28
Pages: 816-832
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
-
[Journal Article] Challenges for Better Diagnosis and Management of Pancreatic and Biliary Tract Cancers Focusing on Blood Biomarkers: A Systematic Review2021
Author(s)
Tominaga H, Matsuzaki J, Oikawa C, Toyoshima K, Manabe H, Ozawa E, Shimamura A, Yokoyama R, Serizawa Y, Ochiya T, Saito Y.
-
Journal Title
Cancers
Volume: 13
Pages: 4220
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-