2021 Fiscal Year Annual Research Report
医工連携によるミニチュアヒト肝臓創成とそのex vivo培養がもたらす革新的医療
Project/Area Number |
20H03744
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
山下 洋市 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (00404070)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井嶋 博之 九州大学, 工学研究院, 教授 (10274515)
馬場 秀夫 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (20240905)
米満 吉和 九州大学, 薬学研究院, 教授 (40315065)
相島 慎一 佐賀大学, 医学部, 教授 (70346774)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ミニチュアヒト肝臓 / 脱細胞鋳型肝臓 / ex vivo培養 / オルガノイド / 機能性ゲル基材 |
Outline of Annual Research Achievements |
① 低密度多段階播種によるミニチュアヒト肝臓内生着肝組織の分布均一化:前年までの検討で、HUVECで門脈を内皮化した後に細胞の播種経路を肝動脈とする事でミニチュアヒト肝臓内での肝細胞の類洞様配列を再現した。しかし、類洞様構造がみられる生着肝組織はミニチュアヒト肝臓の極く一部に限られ、その分布が極めて不均一だった。そこで、細胞播種密度や播種回数を変えてミニチュアヒト肝臓を作製し、生着肝組織の分布をH&E染色で検討した。1x107cells/mLのone shot播種より、1x105 cells/mLの低密度多段階播種の方が、ミニチュアヒト肝臓内の広範囲に均一に生着肝組織が確認された。Alb、HNF4A、CYP3A4などの発現も向上し、高い肝特異機能の発現が確認された。 ② ミニチュア肝臓内での管腔様構造の再現:ヒト初代培養肝細胞+HUVEC+ヒト脂肪由来間葉系幹細胞(ADSC)を鋳型肝臓に播種して4日間のex vivo還流培養を行った所、肝細胞の類洞様配列に加えて、組織内に径15μm程度の管腔様構造が確認できた。この管腔様構造と門脈が連結できれば、より高い肝特異構造を実現できると考えている。 ③ オルガノイド播種による高い肝特異機能の発現:ヒト初代培養肝細胞をチップで培養してオルガノイド(粒径100μmのスフェロイド)を作製し鋳型肝臓に播種してex vivo還流培養を行った所、ヒト初代培養肝細胞の単一細胞播種の場合より高いアルブミン分泌を示した。 ④ オルガノイドへの酸素供給を増加させるための工夫:ヒト初代培養肝細胞+HUVEC+ヒトADSCをチップで培養してオルガノイドを作製した。このオルガノイドを蛍光顕微鏡で観察すると、オルガノイドの中央部にHUVECが集簇していた。酸素供給の最も悪いオルガノイドの中央部に脈管を創る事ができる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
HUVECにより門脈の内皮化を実現し、肝動脈経由で低密度多段階播種にて肝細胞を播種し再細胞化する事が最も肝特異機能を引き出すことを明らかにした。Ex vivo還流回路の酸素供給向上の工夫や、再細胞化肝臓の被膜補強の工夫により、4日間という長期還流培養に成功し、肝特異構造である『類洞』を模した肝細胞配列を鋳型肝臓内に広範囲に再現できた。ヒト胆管細胞の初代培養に難渋しているものの、脂肪細胞由来間葉性幹細胞を代替として初代培養肝細胞とHUVECと混合播種する事で、再細胞化肝臓内に脈管を模した管腔様構造の構築に成功した。 一方で、単一細胞ではなく、予め長径100μm程度のオルガノイド(スフェロイド)を作製して肝動脈経由で播種する事で更に高い肝特異機能を引き出せる可能性があること、初代培養肝細胞+脂肪細胞由来間葉性幹細胞+HUVECでオルガノイドを作製すると中心部にHUVECが集族する事を明らかにした。即ち、3種細胞を混合して作製したオルガノイドを播種して再細胞化する事で、類洞様配列および組織内脈管ネットワークを再現した高い肝特異機能を持つミニチュア肝臓作製の可能性があると考えている。 まだ機能発現は不充分なものの、初代培養肝細胞の不死化とヒトiPS細胞からの肝細胞様細胞への分化誘導に成功している。機能性ゲル基材を最適化してオルガノイド作製すれば、更に高い肝特異機能を発現できる再細胞化肝臓を作製できる可能性がある。 ミニチュア肝臓の細胞源や播種方法とex vivo長期還流培養方法が確立したが、その機能解析や応用の検討が行えていないため、現在までの進捗状況は、『やや遅れている』と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1. ヒト由来機能性肝細胞・胆管細胞の樹立:ヒト初代培養系とヒトiPS細胞系の両面から増殖能を持つヒト由来機能性細胞(肝細胞・胆管細胞)を得る。初代培養肝細胞・胆管細胞ともin vitroでの増殖能がないため、テロメラーゼ逆転写酵素遺伝子(hTERT)やSV-40を導入し不死化させて増殖能を獲得させる。また、ヒトiPS細胞から肝細胞または胆管細胞へ分化誘導して、高機能ヒト由来肝細胞・胆管細胞を得る。 2. 機能性ゲル基材の最適化:操作変数を強度、分解速度、ヘパリン導入密度として、ヘパリン導入ゼラチンゲル基材の最適化を図る。この機能性ゲル基材で包埋したヒト由来機能性細胞をディスク状の脱細胞化肝臓に播種して免疫抑制ラットの腹腔内に移植し、血管新生、肝組織構築、肝特異機能発現を評価する。 3. ex-vivo還流培養による肝特異構造(類洞構造や脈管ネットワーク構築)の再現:肝細胞・胆管細胞(またはADSC)・HUVECを上記機能性ゲル基材に混ぜてスフェロイド培養して、内部に脈管構造を持つオルガノイドを作製して肝動脈経由で低密度多段階播種し、7日間ex vivo還流培養する。肝特有の『類洞構築』と『脈管ネットワークの』が再現できるかが鍵と考えている。 4. ミニチュアヒト肝臓を用いた薬剤代謝スクリーニングや移植肝グラフトとしての機能評価:本 ex-vivo 培養回路にリドカイン等の薬剤を投与して、CYP発現・薬剤濃度変化・胆汁排泄を評価し、ミニチュアヒト肝臓の ex-vivo 薬剤スクリーニングキットとしての有用性を評価する。更に、免疫不全ラットの全肝を摘出し、ex-vivo 培養して高い肝組織構築を実現したミニチュアヒト肝臓を同所性に移植してその機能を解析する。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] 脱細胞化組織の応用展開2022
Author(s)
井嶋博之, 呉帆琦, 福田有嘉子, 小柳和也, 趙宰庸, 堺裕輔, 宮田辰徳, 中尾陽佑, 山尾宣暢, 相島慎一, 山下 洋市, 馬場 秀夫
Organizer
第21回日本再生医療学会総会
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[Presentation] Development and Functional Evaluation of a Miniature Liver Model (ミニチュア肝臓モデルの開発と機能評価)2022
Author(s)
Uehara Uyeda Mario Kokichi, Wu Fanqi, Fukuda Yukako, Sakai Yusuke, Shirakigawa Nana, Miyata Tatsunori, Nakao Yosuke, Yamao Takanobu, Aishima Shinichi, Yamashita Yo-ichi, Baba Hideo, Ijima Hiroyuki
Organizer
化学工学会第87年会
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