2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20H03810
|
Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
寺村 岳士 近畿大学, 大学病院, 講師 (40460901)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
味八木 茂 広島大学, 病院(医), 講師 (10392490)
小野寺 勇太 近畿大学, 大学病院, 助手 (30510911)
村川 泰裕 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, チームリーダー (50765469)
竹原 俊幸 近畿大学, 大学病院, 助教 (60580561)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 幹細胞 / 幹細胞老化 / 転写制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢化が急速に進行する中で、加齢性組織変性・疾患とその主因の一つである幹細胞老化を理解し方策を講じることは重要な課題である。筋骨格組織における幹細胞としては筋衛星細胞(Muscular Satellite Cell: MuSC)や間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell: MSC)が知られており、加齢に伴う細胞数の減少、自己複製能や分化能の低下が知られている。一方、老化研究においては体外培養下での培養細胞の表現系が個体の老化を反映しないため、転写解析、エピジェネティック解析を始め、モデル研究から得られた知見については明確な結論が得られている機序は限られていた。本研究では、ATACseq、NET-CAGEseq、IP質量分析といったオミックス解析を駆使しながら、幹細胞老化の本質となるメカニズムを明らかにすることを目的とする。さらに、新しい遺伝子治療技術SRVなどを取り入れ、加齢性に減少したクロマチン修飾因子、転写活性化因子の補完をはじめとする老化形質の制御法の開発を試みる。 本年度は、老化モデルマウスよりFACSで分離した筋MuSC、骨髄MSCを用いてトランスクリプトーム解析を行った。その結果、加齢MuSCで著しく発現が低下する分子としてNek2を抽出した。モデル細胞を用いた検討において、Nek2がG2期制御と非対称分裂の制御によって幹細胞の自己複製/分化の制御に関わっており、老化筋組織ではその調節が破綻している可能性を見出した。 また、昨年度までに申請者らが報告した炎症メディエターMAP3KであるTAK1と相互作用する分子をIP質量分析にて検索し、核内タンパク質Lyarを同定した。Lyarは老化骨髄MSCで発現が低下しており、トランスクリプトーム解析の結果、Lyarの機能は脂肪分化制御にあることを発見している。モデル細胞を用いた解析により、Lyarの減少は脂肪分化の促進をもたらすことが明らかとなり、老化骨髄でみられる脂肪組織蓄積を引き起こしうる新たな分子機序が示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID19の拡大による出勤制限や物流の遅延等により当初予定していた一部のオミックス解析は実施に至っていないが、大替手段として行った解析法等により、加齢性の組織障害をもたらしうる分子を複数同定し、少なくともそのうちの2つは老化組織で観察される表現系を再現することを確認できた。現在、論文化に向けてヒト組織を用いた再現の準備を進めており、次年度中に報告できると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和2年度までに同定した老化形質関連遺伝子について詳細な機能解析を進めるとともに、ヒト細胞での再現と臨床検体での確認実験を進める。この結果をもとに令和3年度内の論文化を行う。また、当初計画に基づきハダカデバネズミ組織での検討を行う。
|
Research Products
(3 results)