2021 Fiscal Year Annual Research Report
FGF23産生機序とリン代謝異常を基軸とする顎骨線維性骨異形成症の包括的病態理解
Project/Area Number |
20H03894
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Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
山口 朗 東京歯科大学, 歯学部, 客員教授 (00142430)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東 俊文 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (00222612)
坂本 啓 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (00302886)
片倉 朗 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (10233743)
森田 圭一 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (10396971)
豊澤 悟 大阪大学, 大学院歯学研究科, 教授 (30243249)
鵜澤 成一 大阪大学, 大学院歯学研究科, 教授 (30345285)
小高 研人 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (30801469)
高野 正行 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (50197117)
玉村 禎宏 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 助教 (70431963)
中村 貴 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (80431948)
明石 良彦 東京歯科大学, 歯学部, 助教 (70875690)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | FGF23 / Notch / 線維性骨異形成症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、NotchシグナルによるFGF23の発現・産生制御機構を解明し、その成果をFGF23の産生異常を伴う疾患である線維性骨異形成症の病態解析に応用して、本疾患におけるNotch-FGF23 axisの役割を明らかにすることを目的とする。2021年度には以下の研究を推進した。 1)培養細胞を用いた研究:FGF23産生細胞であるUMR-106骨芽細胞様細胞にNICD(Notch intracellular domain)を過剰発現させるとFGF23と共にHes1, Hey1が上昇した。また、Jag1コート培養皿で誘導された同細胞のFGF23およびHes1は、Notchシグナルにおける重要な転写因子であるRBPJκのdominant negative RBPJ (DN-RBPJ)の過剰発現で共に抑制された。 2)遺伝子改変マウスを用いた研究:①Col1a1 promoterを用いたNICD Tgマウスの骨細胞、骨芽細胞の一部で、FGF23とNotch1は共発現し、これらの分子はHes1とも共発現していた。②RBPJ-κ骨細胞特異的KOマウスでは、有意に血清リン値が上昇し、骨組織におけるFGF23発現の低下傾向が確認できた。 3)ヒト線維性骨異形成症の解析:①7症例の線維性骨異形成症と病理学的に診断された症例では、全ての症例で血清FGF23値が上昇していたが、血清リン値は正常値範囲であった。②4症例の線維性骨異形成症の脱灰パラフィン切片で、FGF23, Notch1, Hes1の免疫染色を行った。その結果、FDの多くの細胞でこれらの抗体に陽性の細胞が散見された。現在、蛍光免疫染色を用いてFD細胞における各分子の共発現を検討する準備を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の予定の実験は概ね順調に進んでいる。 1)本年度は、培養細胞を用いた研究ではUMR-106骨芽細胞様細胞のみを用いて、NotchシグナルがFGF23の発現を制御している根拠を示したので学術誌に投稿したが、他の骨細胞様培養細胞を用いた実験の必要性が要求されたので、既に2種類の骨細胞様細胞を入手して、これらの細胞での解析を進行中で、UMR-106細胞とほぼ同様な研究成果が得られている。 2)骨芽細胞への分化段階の異なる3種類の培養細胞(C 3H10T1/2細胞、ST2細胞、MC3T3-E1細胞)各々に線維性骨異形成症型GNAS変異遺伝子(R201H)を導入した細胞を既に樹立したので、これらの細胞における骨芽細胞分化能、骨形成能を解析中である。 3)遺伝子改変マウスを用いた研究:Col1a1 promoterを用いたNICD(Notch intracellular domain)TgマウスとRBPJ-κの骨細胞特異的KOマウスの解析を行ったが、さらにサンプル数を増やす必要がある。 4)ヒト線維性骨異形成症の解析:今年度までに、7症例の線維性骨異形成症(FD)と病理学的に診断された全ての症例で血清FGF23値が上昇していることが確認できた。一方、全ての症例で血清リン値は正常値範囲であった。大腿骨などに発症するFDに比べて、顎骨に発症するFDのFGF23産生量は少ないと考えられ、これは病変の大きさに依存する可能性が示唆された。今回の全症例で低リン血症が確認できなかったのは、この点に関連していると考えられた。4症例のFD症例の脱灰パラフィン切片で、FGF23, Notch1, Hes1の免疫染色を行った。その結果、FDの多くの細胞でこれらの抗体に陽性の細胞が散見された。現在、蛍光免疫染色を用いてFD細胞における各分子の共発現を検討する準備を行なっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の点を中心に研究を推進する。 1)UMR-106細胞以外に他の骨細胞様細胞を用いて、NotchシグナルによるFGF23産生制御機構を解析し、論文投稿を行う。 2)線維性骨異形成症型GNAS変異遺伝子(R201H)を導入した3種類の培養細胞(C 3H10T1/2細胞、ST2細胞、MC3T3-E1細胞)を用いて、これらの細胞におけるFGF23産生能とNotchシグナルによる制御メカニズムを解析し、論文投稿を行う。 3)線維性骨形成症(FD)の発症遺伝子であるGNSA変異を骨細胞、骨芽細胞系で発現するマウスの大腿骨ではFD様の病変を生じていたので、このマウスを用いて病変部におけるFGF23発現にNotchシグナルが関与しているかを解析する。 4)ヒト線維性骨形成症の症例数をさらに増やし、本病変におけるFGF23産生におけるNotchシグナルの関を蛍光免疫組織学的、生化学的、分子生物学的にさらに解析する。 5)上記3), 4)の結果をまとめて論文投稿する。
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Research Products
(3 results)