2020 Fiscal Year Annual Research Report
高温な気候曝露の循環器系疾患リスク評価とAIを利用した予測手法の構築
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20H03949
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
大橋 唯太 岡山理科大学, 生物地球学部, 教授 (80388917)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
亀卦川 幸浩 明星大学, 理工学部, 教授 (20409519)
井原 智彦 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (30392591)
高根 雄也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (80711952)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 急性循環器疾患 / 呼吸器疾患 / 月平均気温 / 死亡リスク / 回帰分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主たる目標となる、数値流体モデルでの急性循環器・呼吸器疾患リスクの数値マッピングへ向けて、当該疾患分類の死亡票と入院・受診の詳細データを入手した。数値モデルでのシミュレーションに必要になると考えられる情報(対象地域、発生日時、病名、場所、性別、年齢階級など)を、入手相談先の厚生労働省および株式会社JMDCの担当者と調整を重ねて、最終的な数値データを入手することができた。 一方で、過去10年(2010~2019年)で生じた気候変化と当該疾患死亡率の相関を月単位ベースで明らかにする目的で、政府統計資料として一般に公開されている人口動態調査の死因別死亡情報を入手し、予備的分析をおこなった。その結果、同じ疾患分類のなかでも気候変化に鋭敏応答する疾患と、応答のみられない疾患が存在することが明らかとなった。この予備分析によって、数値流体モデルを使った疾患リスク評価・予測で対象とするべき疾患を次に絞ることができた:急性心筋梗塞、その他の虚血性心疾患、脳梗塞、肺炎。また、疾患死亡リスクの評価には、月平均気温、猛暑日日数、真夏日日数など高温環境を表現する指標を説明変数として分析をおこなったが、最も単純な評価指標といえる月平均気温を使うだけで前述の死亡リスクを数値化できることが明らかとなった。この成果を学術論文としてまとめる作業をおこない、国際学術誌に投稿することができ、査読段階に進んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
医療レセプトデータおよび死亡票データの入手には、入手先の機関または企業との調整に多くの時間を割くことが研究計画当初より予想されており、その通りの進行状況で完了に至った。そのなかで同時進行として、政府統計の一般公開データを分析して、気象・気候の影響を受ける疾患を特定できた点では高く評価でき、次年度以降の研究遂行に役立つ結果となった。この分析結果を学会発表ならびに学術論文への投稿まで進めることができ、次年度以降の成果に期待ができる。
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Strategy for Future Research Activity |
疾患リスクの時空間マッピングに利用する数値流体モデルの計算設定整備と室内温熱環境のシミュレーション検証を予定する。同時に、入手出来ている診療レセプト情報および死亡票データを分析し、これまでの月単位から日単位の変動を追うことで、気象条件と疾患リスクの関係をより詳しく明らかにする。このとき、いくつかの機械学習(AI分析)手法を適用させて、より精度の高い予測を確立することを目指す。 また、年による気候の違いを実際の人の行動情報から把握する必要があるため、NTTドコモの人モバイル空間情報を入手して、例えば猛暑年と冷夏年の違いを明らかにしてみる。さらに人モバイル空間情報の分析結果を、数値流体モデルの入力パラメータ(エネルギー関連)の改良に活用する。 実際に測定された複数住宅の室温と外気温、室内と屋外の温熱環境(不快指数など)の関係モデルを作成し、そこから循環器疾患等の発症リスクを予測する機会学習モデルの作成を試みる。これにより、次の研究計画のステップで実行予定の数値流体モデルへの組み込みが可能となる。
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Research Products
(6 results)