2020 Fiscal Year Annual Research Report
スポーツボールの飛翔軌跡,非定常流体力,及び渦構造の解明と展開研究
Project/Area Number |
20H04066
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
浅井 武 筑波大学, 体育系, 教授 (00167868)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
洪 性賛 筑波大学, 体育系, 助教 (10638547)
小池 関也 筑波大学, 体育系, 准教授 (50272670)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ボール / 空力 / 流体 / サッカー / キック / マグナス / 臨界レイノルズ数 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度,プレミアリーグ等で使用される公式試合球を対象に,風洞実験を用いて,その空力特性を比較検討した.その結果,各ボールの臨界レイノルズ数は,Flight,Tsubasa,Pelada の順で小さい値を示していた.このことから,Flightは,他のボールと比較して,表面粗さが大きいボールであると考えられた.各ボールの飛距離を比較すると,Peladaの亜臨界から臨界領域では(U < ~15 m/s),Flight,Tsubasa,Peladaの順で大きくなっていた.しかし,超臨界領域では(U > ~25 m/s),逆にPelada,Tsubasa,Flightの順で大きくなっていた.これらのことから,Flightは,他のボールと比較して,表面粗さが大きく,超臨界領域において,わずかに,空気抵抗が大きいボールであると考えられた. また,3Dモーションキャプチャシステムを用いて,フリーフライトで回転飛翔するサッカーボールに働くマグナス力を分析した.その結果,回転ボールの横方向速度は,直線的増加ではなく,やや増え方が鈍化しながらの増加傾向となっていた.また,これらのマグナス力の大きさ自体は,飛翔時間内に非定常的に変化しており,両方とも約1秒間に2N程度から1N程度に減少する傾向を示していた.空気粘性による回転数の低下は,実験計測によると,通常の飛翔速度(5m/s~35 m/s)においては,せいぜい5パーセント程度と少なく,マグナス力の減少に対する影響は小さいと推定された.一方,,curve (a)とcurve (b)の飛翔速度が,約75パーセントに減少する間に,マグナス力は約50パーセントに低下していた.これらのことから,カーブキックにおけるマグナス力減少の主な原因は,ボールの空気抵抗による飛翔速度(流速)の低下であると考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基礎的流体力(空力)測定では,風洞実験を基礎に,サッカーボールとバレーボールの抗力,揚力,臨界レイノルズ数等の空力特性を分析,検討している.それらの成果の一部は,Hong S, Ozaki H, Watanabe K, Asai T: Aerodynamic Characteristics of New Volleyball for the 2020 Tokyo Olympics. Appl. Sci. 10, 3256, 2020-5.において,報告している. また,非定常流体力(空力)測定では,3Dモーションキャプチャシステムを用いて,フリーフライトにおける回転,及び低回転で飛翔するサッカーボールの空力特性を分析している.それらの成果の一部は,Asai T, Kimachi K, Liu R, Koido M, Nakayama M, Goff JE, Hong S: Measurements of the Flight Trajectory of a Spinning Soccer Ball and the Magnus Force Acting on It. Proceedings. 49, 88, 2020-6として報告されている. さらに,渦動態の可視化では,サッカーボール後流の断面における速度ベクトルと渦度を,CFD(Computational Fluid Dynamics)とステレオ流体可視化システム(Particle Image Velocimetry)によって,可視化,分析を試みている. 加えて,サッカーのボールインパクト動作計測では,3Dモーションキャプチャシステムを用いて,回転,及び低回転で射出するキックテクニックにおけるボールインパクトポイントや,蹴り足のスイング特性に関する分析を試みている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として,非定常流体の可視化では,モーションキャプチャシステムと半球反射マーカーを貼付した特殊タフトサッカーボール,高速カメラ(1000 fps)を用いて,サッカーボールの自由飛翔軌跡と渦構造の同時計測を実施し,非定常流体力と渦動態の関係を示す(大規模渦対の位置や方向,強さが,揚力の方向,大きさに関係すると推測される). また,その実験手法をバレーボールにも展開し,モーションキャプチャシステムと特殊タフトバレーボール,高速カメラを用いて,バレーボールの自由飛翔軌跡と渦構造の同時計測を実施し,非定常流体力と渦動態の関係を検討する.さらに,モーションキャプチャシステムと特殊タフトラグビーボール,高速カメラを用いて,ラグビーボールの自由飛翔軌跡と渦構造を同時計測し,非定常流体力と渦動態の関係を示す. PIV(Particle Image Velocimetry)を中心とする可視化実験では,インパクトロボットとPIVを用いて,サッカーボール後流の非定常渦構造の計測,タフトボールとの同定,データ同化を実施する.また,インパクトロボットとPIVを用いて,バレーボール後流の非定常渦構造の計測,タフトボールとの同定,データ同化を行う.さらに,インパクトロボットとPIVを用いて,ラグビーボール後流の非定常渦構造の計測,タフトボールとの同定,データ同化を進める.なお,共同研究者の洪助教は,可視化実験と分析を担当し,タフト,及びPIVの実験は,全て共同で実施する.また,共同研究者の小池教授は,モーションキャプチャシステムを活用した動力学解析を担当し,実際のキック動作,及びキックマシンにおける飛翔初期条件を計測するための,キック動作の動作解析実験と分析を共同で実施する.
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Research Products
(7 results)