2021 Fiscal Year Annual Research Report
Individual optimization of comprehensive psychological conditions for high performance
Project/Area Number |
20H04088
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
坂入 洋右 筑波大学, 体育系, 教授 (70247568)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中塚 健太郎 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(社会総合科学域), 准教授 (00609737)
三田部 勇 筑波大学, 体育系, 准教授 (00709230)
雨宮 怜 筑波大学, 体育系, 助教 (90814749)
松浦 佑希 宇都宮大学, 共同教育学部, 助教 (90844788)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | コンディション / 最適化 / 心理状態 / パフォーマンス / 測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究全体(3年間)の目的は、以下の通りである。① スポーツなどにおける多様な身体活動における心身のコンディションを個別最適化するために必要な「包括的心理状態」として、「覚醒度・快適度・感覚情報の感度」の3次元からなる心理空間を想定し、その座標内で心理状態の変動を数値化して表示し、可視化することが可能な測定指標を開発すること。② 各スポーツ種目におけるパフォーマンス発揮に重要な感覚情報(内的な身体感覚情報や外的な知覚情報)を明らかにすること。③ 自律訓練法などの心身の状態の調整法を活用して、心理状態を個別最適化するとともに、パフォーマンスを向上させること。 本年度(2年目)は、初年度に開発した、心理状態の安定度と活性度からなる2次元気分尺度に感覚情報の感度を加えた「包括的心理状態」を測定する指標を活用して、3つの研究を実施した。まず、大学生野球選手を対象に、試合における打撃場面での心理状態の変動の特徴を調べた。結果として、パフォーマンスの高い選手は、プレッシャー場面で心理状態の安定度は低下するが、活性度と感度(ボールや投手への注意集中)が高まることが確認された。次に、水泳において重要な感覚情報として「水感」を想定し、競泳選手90名を対象に調査を実施し、水感尺度を作成した。さらに、泳ぎ方を意識した場合と水感を意識した場合で、心理状態やパフォーマンスの違いを実験的に比較した。結果として、水感の感度が高い選手は、水感を意識して泳いだ方がパフォーマンスが高かった。また、陸上競技の短距離走者43名を対象に調査した結果、短距離走のパフォーマンスに、肩の緊張がマイナスに、体幹の緊張がプラスに関連することが確認されたので、中学生陸上部員を対象に、両条件で短距離走を実施して比較した。結果として、肩の緊張条件では心理的疲労度が高くなり、ゴールタイムが遅延していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の主要な目的である、① 包括的心理状態を測定できる尺度の開発と、②パフォーマンスの向上と関連する感覚情報をスポーツ種目の課題ごとに明らかにすることは、順調に進んでいる。本年度、競泳、陸上競技、野球の打撃などに関する研究を推進し、一定の成果が得られたことからも、順調に進展していると評価できる。 しかし、本年度、上記欄に報告した3つの研究以外に、陸上競技において重要な感覚情報として脚部と地面の接地感覚に着目し、その「感度」の高さとパフォーマンスを検討した実験を実施したが、明確な結果が得られなかった。やはり、「感度」を自己評価指標を用いて測定するだけでは、自己の身体感覚を内省して報告する能力が高い者に、有効な対象が限定されてしまう。この問題点の克服が必要であるため、「おおむね順調」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、研究目的と研究計画に基づいて、「覚醒度・快適度・感度」の3次元からなる「包括的心理状態」の測定指標の開発を進めて、その有効性を確認するとともに、さらに心身の自己調整システムを活用した介入研究を実施し、心身のコンディションの個別最適化によるパフォーマンスの向上に関する研究に取り組んでいく。 3年計画の2年目までで、① 包括的心理状態を測定できる尺度の開発と、②パフォーマンスの向上と関連する感覚情報をスポーツ種目の課題ごとに明らかにすることは、順調に進んでいるので、最終年度である3年目は、自律訓練法などの心身の自己調整法を活用した介入研究を実施し、心理状態の個別最適化によるパフォーマンスの向上に取り組む。 一方、感覚・知覚情報の「感度」の測定に関しては、心理状態の自己評価指標では測定できない状況や状態があることが明らかになった。今年度は、比較的感度の測定がしやすい、陸上競技や競泳のような個人種目のスポーツを対象として研究を進めた。最終年度は、バスケットボールのような集団で行う対人競技も、研究対象とする。その場合の感覚情報は、対戦相手の反応など複雑なものとなることが想定されるので、実験場面の設定を綿密に構築する必要がある。クローズドスキルで実施可能な外乱の少ない状況での活動は、無意識でのプレイが高いパフォーマンス発揮に結びつくことがあるが、対人競技のように、オープンスキルが求められて外乱への対応が必要となる場合には、意識的な感覚情報の取得が必要になる。そのような実践的な課題を設定して、パフォーマンス発揮と心理状態の最適化に関する研究を推進していく。その際に、主観的な心理指標の併存的妥当性の指標として、客観的な生理・行動指標のデータを蓄積していくことにより、「感度」を含む「包括的心理状態」の客観的指標の開発が可能になると考えている。
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Research Products
(2 results)