• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2021 Fiscal Year Annual Research Report

放射線障害応答の多様性を規定する動的クロマチン制御を介したNAD代謝ネットワーク

Research Project

Project/Area Number 20H04336
Research InstitutionKyoto University

Principal Investigator

井倉 毅  京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (70335686)

Project Period (FY) 2020-04-01 – 2023-03-31
KeywordsNAD代謝 / TIP60ヒストンアセチル化酵素 / H2AX / クロマチン / 線量率
Outline of Annual Research Achievements

我々は、放射線照射によるゲノムストレスに対して、H2AXの交換反応は促進され、この交換反応が、相同組換え修復を促進することを見出している。この交換反応は、TIP60ヒストンアセチル化酵素によるH2AXのアセチル化により制御され、これまでにTIP60によるH2AXのアセチル化が、NAD合成酵素(NADS1)をDNA損傷部位に誘導し、ポリADPリボシル化酵素PARP-1が活性化され、このTIP60とPARP-1の連携がH2AXの交換反応にとって重要な制御機構であることも最近の我々の研究から明らかになっている。NAD代謝は、サルベージ経路を介したものとトリプトファンの取り込みによるグルタミンに依存したde-novo経路の2つが存在するが、我々の見出したNADSは、グルタミンに依存したde-novo経路に関与する酵素である。NADは主に細胞質で合成されると考えられているが、我々の見出したH2AXの交換反応に関与するNADSは、ゲノムストレスに応じて細胞核にも存在することをすでに見出している。興味深いことに線量率の違いによって細胞のゲノムストレスに対するH2AXの交換反応の依存度は異なり、NADの代謝変動が、H2AXの交換反応に影響を及ぼすことを示唆する結果を得ることに成功した。現在、線量率の異なる放射線障害を細胞に与え、NAD産生経路に変化が見られるのかを検証している。NADSの酵素活性を阻害した変異体を細胞核に強制的に発現させることにより、ゲノム損傷に対する相同組換え修復の活性が低下することも幾つかの細胞株で見出しており、NADSの細胞核内でのNAD合成の意義が明らかになりつつある。また細胞にとってゲノムストレスに対するグルタミンの依存度が異なることも見出した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本年度は、ゲノムストレスにおけるde novo NADSの細胞核での存在意義が、明らかになりつつあること、またこのNADSが、グルタミン依存性であることから、幾つかの細胞株でゲノムストレスに応じてのグルタミンの依存度を検証し、同一の線量のゲノムストレスにおいても細胞株ごとにグルタミンの依存度が異なることが明らかになった。このことは、同一の線量率でもゲノムストレス後のde novoのNADSの役割が、多様であることを示唆している。グルタミン依存度の高い細胞株と低い細胞株を用いて、放射線障害によるゲノムストレスに応じて線量率とNAD代謝とが如何なる関係にあるのかを探り、NADSの細胞核での存在意義をより明確にすることが可能になった。以上のことから研究は、概ね順調であると考えられる。

Strategy for Future Research Activity

異なる線量率において細胞核内でのde novo NADSの依存度を検討し、その結果をもとに異なる線量率での代謝経路の多様性とゲノムの恒常性との関係を明らかにする。このNADSの制御因子であるTIP60アセチル化酵素の酵素活性を細胞内で阻害するとミトコンドリアの膜電位に不具合が生じることをすでに見出しており、本年度は、これらの知見をもとにゲノムストレスにおけるNAD代謝の役割を放射線発癌あるいは老化シグナルの中で明らかにする。またNAD代謝経路からミトコンドリアに至るまでの代謝酵素が、細胞核内のH2AXの交換反応に及ぼす影響についても検討を加え、細胞核内のNAD代謝から細胞質におけるエネルギー代謝が、feed back制御によって細胞核内のクロマチン代謝にどのようなインパクトを与えるのかについても検証していく予定である。

  • Research Products

    (4 results)

All 2021

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (3 results) (of which Invited: 2 results)

  • [Journal Article] Protocol for in vitro BCR-mediated plasma cell differentiation and purification of chromatin-associated proteins2021

    • Author(s)
      Ochiai Kyoko、Shima Hiroki、Ikura Tsuyoshi、Franke Marissa C.、Sievert Evelyn P.、Sciammas Roger、Igarashi Kazuhiko
    • Journal Title

      STAR Protocols

      Volume: 2 Pages: 100633~100633

    • DOI

      10.1016/j.xpro.2021.100633

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 融合研究への挑戦:動的細胞老化を司るヒストンタンパク質の新知見2021

    • Author(s)
      井倉 毅、古谷寛治、白木琢磨、井倉正枝
    • Organizer
      第94回日本生化学会大会
    • Invited
  • [Presentation] 多様なストレスに対峙するゲノムストレス応答タンパク質複合体の揺らぎ2021

    • Author(s)
      井倉 毅、古谷寛治、白木琢磨、井倉正枝
    • Organizer
      第44回日本分子生物学会年会
    • Invited
  • [Presentation] オートファジーを介したリン酸化シグナル調節によるがん細胞のゲノムDNA損傷ストレス抵抗性獲得戦略2021

    • Author(s)
      古谷 寛治 、井倉 正枝 、井倉 毅
    • Organizer
      第44回日本分子生物学会年会

URL: 

Published: 2022-12-28  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi