2020 Fiscal Year Annual Research Report
ウロコの同位体比を利用した、魚類の生活史推定手法の開発とその応用
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20H04376
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
太田 民久 富山大学, 学術研究部理学系, 助教 (60747591)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 拓哉 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (30456743)
末吉 正尚 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(つくば中央研究所), 研究員 (70792927)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ストロンチウム同位体比 / 移動履歴 / ウロコ / 耳石 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、調査対象河川である長良川流域のストロンチウム同位体比マップを作成するとともに、魚類のウロコの成長層の入り方を観察し、ウロコの前処理方法の検討を行った。 長良川集水域計113地点において河川水を採水し、ICP-MSを用いて51もの元素の濃度を分析した。その後、ストロンチウムのみを選択的に吸着する樹脂を用いて、ストロンチウムを河川水から単離し、マルチコレクタICP-MSを用いてストロンチウム同位体比を分析した。その結果、長良川流域のストロンチウム同位体比は支流間で有意な差が存在した。サツキマスが遡上している支流間でも有意な差がみられたので、ウロコや耳石中のストロンチウム同位体比からサツキマスの移動履歴がトレース可能であると推測される。 また、同じく対象地域である木曽川流域に関しても、採水を行ったため、次年度以降にストロンチウム同位体比を分析する。 また、ウロコの同位体比から魚の支流間移動を推定する手法を開発するため、同位体比が異なる水域を遊泳している可能性が高いボラとスズキのウロコを採集し、成長線の入り方を観察した。ウロコの成長線を観察するために、チオグリコール酢酸でウロコを脱灰後、垂直方向に薄切し、HE染色をすることで断面を観察した。その結果、魚のウロコは垂直に成長線が入るわけではなく、中心に向かって斜めに成長していることがわかった。このことから、ウロコの同位体比から魚の支流間移動を推定するには垂直方向の断面を露出させ、成長線に沿ってウロコ組織を掘削する必要があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、COVID-19の影響もあり、調査や分析が予定通り進まない時期も存在したが、調査地域のストロンチウム同位体比マップの作成や、ウロコの前処理方法の検討を行うことができた。 耳石やウロコのストロンチウム同位体比分析までは実施できなかったが、分析に対する課題や新たな分析手法の検討も進み、次年度以降の研究のスピードアップにつながる成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は長良川流域のストロンチウム同位体比マップを作成した。今年度は、長良川を遡上あるいは降海中のサツキマスの耳石およびウロコのストロンチウム同位体比を分析する。その分析結果を昨年度作成した同位体マップと比較することで、サツキマスの移動履歴を推定する。また 、長良川の養魚場のストロンチウム同位体比も今年追加で分析することで、養魚場由来のサツキマスが遡上しているかも同時に推定する。 また、木曽川水系のダム湖に流れる支流の河川水試料を昨年度サンプリングしており、同試料のストロンチウム同位体比も本年度分析し調査河 川のストロンチウム同位体比マップを作成する。さらには、各支流で採集した淡水魚(カワヨシ、カワムツおよびハヤ)の耳石およびウロコを取り出し、ストロンチウム同位体分析にかけることで、各淡水魚の支流間移動を推定する。 また、次年度ウロコや耳石を分析するに当たり、新たにレーザーアブレーションMC-ICP-MSを用いることで予定よりかなり多くのサンプルを分析にかけることが可能となった。それにより、より多個体で移動履歴を推定し、一般性の高い研究を行えることになった。
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