2020 Fiscal Year Annual Research Report
Toward reducing the conflicts between native cormorants and local residents -- Knowledge discovery from historical records by using temporal information analysis
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20H04381
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Research Institution | Lake Biwa Museum |
Principal Investigator |
亀田 佳代子 (小川佳代子) 滋賀県立琵琶湖博物館, 研究部, 上席総括学芸員 (90344340)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前迫 ゆり 大阪産業大学, デザイン工学部, 教授 (90208546)
牧野 厚史 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 教授 (10359268)
藤井 弘章 近畿大学, 文芸学部, 教授 (00365511)
関野 樹 国際日本文化研究センター, 総合情報発信室, 教授 (70353448)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 時間情報解析システム「HuTime」 / 琵琶湖 / 竹生島 / 知多半島 / 鵜の山 / カワウと森のせめぎ合い / カワウの恩恵とムラの知恵 / 野生生物との共存 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、既存のデータを整理し、時間情報解析システム「HuTime」に入力するためのフォーマット等の検討と実際の作業を行った。また、これまでの研究成果の整理と、異なる分野間の情報を竹生島と鵜の山の二地域で比較検討し、共通性と特異性を明確にするための書籍の原稿執筆と編集を行った。 収集したデータ、史資料、画像などの各種情報を、時間軸に沿って整理・編成するためのプラットフォームとして、時間情報解析システム「HuTime」(http://www.hutime.jp/)を使って共有する仕組みを構築した。そこに、まずは博物館の展示室で公開している琵琶湖の竹生島についての江戸末期から2015年度までのカワウ生息数、捕獲数、地域の人々による関わりや対策、植生図や当時の写真の情報などについて、試行的にデータ入力を行い、テキスト情報を主とした年表形式の可視化を行った。 専門書籍の編集については、亀田、前迫、牧野、藤井の4名の共著とし、4部構成で各部それぞれ1章を担当して執筆を行うという形式をとった。それぞれの分担は、亀田がカワウという鳥の生態的役割からの視点、前迫が天然記念物としての森の視点、藤井が地元の民俗技術や工夫といった人の視点、牧野が近代以降現代までの環境共存の工夫という社会の視点からのアプローチとした。第1部は本書の概説と問題提起、第2部は琵琶湖、特に竹生島での森とカワウのせめぎ合い、第3部は知多半島の鵜の山での森とカワウによる恩恵とそれを利用するムラの人々の知恵、そして第4部では、全体総括と一般化を行った上で、未来に向けた提言を行った。共同研究者同士で相互に議論を繰り返しながら執筆と編集作業を行い、2021年度前半には発刊の予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染拡大のため、研究代表者や共同研究者の所属機関において県境をまたぐ移動が制限されたため、調査や資料収集、対面での研究打ち合わせが十分に行えず、新たな情報収集がほとんどできなかった。また、国際学会に参加し、ウ類と人との軋轢に対する現代のアプローチと地域住民との歴史的な関わりについて、海外の現場ではどのようにとらえているのかを情報収集する予定だったが、学会が全てオンライン開催となり、地域毎に個別に情報収集を行うことが難しかった。 しかし、共同研究者間でオンラインやメールによる打ち合わせを行うことで、専門書籍の内容や今後の研究計画について検討することができた。その結果、書籍の執筆・編集の進行管理の他、植生等の現状調査の重要性と今後の情報収集方法について再確認することができた。それを受けて、今後の調査計画や現地調査項目、必要機材などについて検討を行い、次年度以降の必要機材の確保に努めた。 これまでの研究成果のとりまとめとなる書籍については、当初の予定より遅れているものの、本のデザインや体裁なども含めて出版社の編集者とやりとりをしながら編集を進めてきており、現在最終段階に至っている。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの影響がもうしばらく続くと考えられるため、当面は、県境をまたいだ出張による調査や、対面での研究打ち合わせは実施困難な状況が続くと考えられる。このような状況のため、引き続き可能な範囲での資料収集と既存資料の整理、時間情報解析システム「HuTime」への入力を進めるとともに、当初の研究計画では3年目に予定していた、現代の琵琶湖の状況および対策についての最新情報の収集および既存情報の整理、そして現在の状況を把握するための現地調査について、滋賀県在住の研究代表者を中心に進めることとする。 具体的には、現在のカワウの生息状況や軋轢の有無、地域住民や地方行政のカワウへの認識と具体的な対応、森林植生の変遷などについて、対策協議会や鳥類・森林のモニタリング資料を収集・整理し、HuTimeに入力する。また、現在の琵琶湖周辺のコロニーのカワウ生息状況や森林植生について現地調査を行い、現状把握と、年輪分析等によるカワウの影響や植生の変遷についての情報収集の可能性について検討する。民俗学や社会学の資料や情報については、滋賀県公文書館等のインターネット検索システムを活用して資料の所在確認を行うなど、可能な限り情報収集を行い、その情報を共有する。その上で、可能な者が資料の収集を行う。このようにして、琵琶湖に関する情報についてはHuTimeに入力し、一通り年表を完成させる。これをもとに、琵琶湖地域における江戸末期から現在までのカワウと人との歴史的経緯の解析を行う。さらに可能であれば、鵜の山に関する既存情報のHuTimeへの入力に着手する。 メンバー間の打合せや議論は、引き続きメールやオンラインで行い、密に情報や進捗状況の共有に努める。
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