2021 Fiscal Year Annual Research Report
Toward reducing the conflicts between native cormorants and local residents -- Knowledge discovery from historical records by using temporal information analysis
Project/Area Number |
20H04381
|
Research Institution | Lake Biwa Museum |
Principal Investigator |
亀田 佳代子 (小川佳代子) 滋賀県立琵琶湖博物館, 研究部, 上席総括学芸員 (90344340)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 弘章 近畿大学, 文芸学部, 教授 (00365511)
牧野 厚史 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 教授 (10359268)
関野 樹 国際日本文化研究センター, 総合情報発信室, 教授 (70353448)
前迫 ゆり 大阪産業大学, デザイン工学部, 教授 (90208546)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 竹生島 / 鵜の山 / 温故知新 / 日本の在来種と人との共存 / カワウの動態 / 森林の衰退と回復 / 軋轢と利用 / 観光と保全 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度の最も大きな業績は、これまでの研究成果をまとめた書籍「カワウが森を変える ―森林をめぐる鳥と人の環境史」(京都大学学術出版会、2022年3月発刊)の出版である。本書は、本研究の代表者である亀田と、共同研究者の前迫、牧野、藤井の共著により、森をめぐるカワウと人との歴史的関わりについて、鳥類生態学、森林生態学、歴史民俗学、環境社会学の分野から研究成果をまとめたものである。鳥、森、人、社会の視点から竹生島と鵜の山という具体的なカワウ繁殖地での詳細な研究情報と結果を紹介することで、両地域の特性と相違点を明確にし、それをもとに、カワウと森と人の未来のあり方について、それぞれの立場から提言を行うことを試みた。 異なる分野の視点を1つの成果としてまとめるために、出版社の編集者も交えたオンライン打合せを数回行い、議論を深めて執筆を行った。在来種であるカワウは人との関わりの中で個体数や分布を変化させてきたこと、暮らしや社会の変化によって在来種や森林への人間の働きかけが変化すること、影響力の大きい在来種の増減と人による関わりの変化により森林植生も衰退と回復を繰り返してきたことなど、時間情報システムによる分析結果も踏まえ、長期にわたる三者のダイナミックな動態を明らかにした。このことにより、これからも変化し続けるであろう日本の在来種と人との関わりについて、未来のあり方について検討することができる新たな視点を提示することができた。言い換えれば、野生生物と人との関わりにおける「温故知新」の重要性を広く示したといえる。 これ以外に、共同研究者の関野は、時間情報システムの機能修正として期間同士の関係にもとづく曖昧な時間の精緻化を行い、その結果を国際学会で発表し論文としてまとめた。前迫や牧野は、上記の書籍の内容と関連して、それぞれの分野の視点からの考え方をまとめた論文等の執筆や学会発表を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度も新型コロナウィルス変異株による感染拡大のため、野外調査シーズンである5月から9月にかけて現地調査が困難となった。また、資料調査や聞き取り調査についても現地に赴くことが難しく、新たな情報を得ることができなかった。 新たな情報収集が滞った分、既存情報の確認と、これまでの研究成果のまとめとしての書籍出版に力を注いだ。その結果、3月には研究成果として書籍の出版を行うことができた。本をまとめる過程で、入手可能な資料を追加収集し、関係者間でオンラインの打合せを複数回行った。その結果、新たな資料や情報にもとづく議論を行うことができ、2つのカワウ繁殖地である琵琶湖の竹生島と愛知県の鵜の山について、より詳細にカワウ、森林、地域の人々の暮らしや社会的変化を対比させることができた。 これらのことから、現地調査や資料調査等は遅れているが、既存情報のとりまとめと成果の公開は進んだため、全体としてはやや遅れている状況と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
一冊の書籍として複数分野の結果をまとめることができたため、その成果を元に再度情報を整理し直し、改良を行った時間情報システムへの入力を進める。議論を行う中で新たに必要となった資料や情報についても収集を進めると共に、2022年度は現地調査も実施して、現在の状況についても情報を追加していきたいと考えている。 これらのことを行うために、これまでより一層、議論や打合せの機会を増やし、とりまとめを進める。特に今年度は、オンライン会議とともに対面での会議や合同現地調査も行うことで、分野間の情報の関連を明確にしていきたい。 時間情報システムHuTimeについては、本研究を進めるためのツールとしての活用だけでなく、今後新たな研究の材料としての提供や、一般への研究成果の公開方法の1つとしても活用できるよう、入力データの検討や整理、適切な入力方法の検討と確立、結果の視覚化の工夫なども行っていく予定である。
|