2021 Fiscal Year Annual Research Report
公共図書館における図書の購入・除籍に関する推薦システムの開発
Project/Area Number |
20H04478
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
辻 慶太 筑波大学, 図書館情報メディア系, 准教授 (30333545)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水沼 友宏 桃山学院大学, 経営学部, 講師 (20822688)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 除籍 / ラストコピー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,日本の公共図書館における図書の所蔵・貸出状況を明らかにし,新たに購入・除籍すべき/すべきでない図書を各館に推薦するシステムの開発を行うものである。2020年度にはこのうち,除籍すべきでない図書に焦点を当て,国立国会図書館及び大学図書館が所蔵しておらず,公共図書館だけが所蔵している図書が数多く存在することを,カーリル(全国図書館蔵書横断検索サービス提供企業)のデータを出発点として示した。本研究課題の申請内容は公共図書館に関するものであるが,上記研究結果の重要性に鑑み,2021年度には大学図書館に関する同様の調査を行った。大学図書館については,カーリルの検索記録がほとんど存在しないことから,「BOOK」データベースを購入し,そこに収載されている図書が国立国会図書館に所蔵されているかを調査した。結果,国立国会図書館及び公共図書館が所蔵しておらず,大学図書館だけが所蔵している図書が存在することが判明した。だが先述の公共図書館における量よりは少なかった。
また本格的なシステム開発に入る前に,図書館が購入・除籍すべき/すべきでない図書について,一般にこれまでの研究ではどのように考えられているかも確認しておく必要があると考え,2021年度にはそれらの広範な文献調査を行った。即ち,購入すべき図書に関してはいわゆる価値論・要求論といった選書論,購入すべきでない図書に関しては差別助長やプライバシー侵害といったいわゆる図書館の自由に関する論考,除籍すべき図書に関しては利用量,すべきでない図書に関しては稀少性といった観点に基づく論考を調査し,レビューとしてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題は,日本の公共図書館における図書の所蔵・貸出状況を明らかにし,新たに購入・除籍すべき/すべきでない図書を各館に推薦するシステムの開発を行うものである。本システムにより,購入・除籍に関する図書館員の意志決定のコストが削減でき,また図書館利用の増加や稀少図書の保存を図ることができる。 上記の「新たに購入・除籍すべき/すべきでない図書」のうち,2020年度は主に「除籍すべきでない図書」に焦点を当て,その現況調査を行った。得られた結果の重要性に鑑み,2021年度は「BOOK」データベースを用いて大学図書館に関する同様の調査を行った。結果,国立国会図書館及び公共図書館が所蔵しておらず,大学図書館だけが所蔵している図書は多少存在するものの,公共図書館における量よりは少なく,雑誌論文にできるほどの結果は得られなかった。これは国立国会図書館への納本作業を代行している諸企業が「BOOK」データベースの作成に携わっていることも一因と思われる。即ち,「BOOK」データベースに載るほどの図書は,国立国会図書館に納本されている可能性が高いことが考えられる。 また本研究の本題である公共図書館が購入・除籍すべき/すべきでない図書の推薦システムの開発研究としては,本格的なシステム開発に入る前に,従来の選書・蔵書構成に関する文献を調査し,その基本的な考え方を確認する必要があることに気付き,2021年度はその作業に注力した。そのため当初考えていたような成果は得られていないが,2022年度には開発作業に入り,予定通りの成果を挙げたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本研究計画に記したように,まずカーリルから公共図書館の検索記録を定期的に購入し,所蔵図書の差分を検出して,新たに現れたものは購入された図書,消えたものは除籍された図書とみなす。そして日本の公共図書館が所蔵し,購入・除籍している図書の特徴を,貸出量も含めて明らかにする。さらに協調フィルタリングによって蔵書が類似した図書館を特定し,各館に対して類似館が購入・除籍し,貸出が伸びている/いない図書を連絡する可能性について検討したい。
また2020年度に行った調査は,カーリルの検索記録とつくば市立図書館の除籍図書リストに基づくものであったが,発表論文にも書いた通り,両者の結果から推定される日本全体の除籍図書の像は一致しなかった。そのため購入した数年分の「BOOK」データベースに基づいた除籍図書研究も継続して行いたいと考えている。
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