2021 Fiscal Year Annual Research Report
力学体系に基づいた間質液流れによる脳内老廃物除去機構の解明
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20H04504
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
武石 直樹 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (30787669)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 壽 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (40294087)
横山 直人 東京電機大学, 工学部, 教授 (80512730)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 脳間質液 / 血管周囲腔 / 脳内老廃物 / 物質輸送 / 計算バイオメカニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
血管周囲腔における脳脊髄液の脈波依存的な流れを古典的な生物流体力学の知見に基づきスケーリングすることに成功し,その結果を査読付き国際雑誌論文(Journal of Theoretical Biology)に報告した[Yokoyama & Takeishi, et al., 2021, 523:110709]. また,Wrightら(2013)が公開している脳動脈血管のMRI画像に基づき,被験者個別の脳動脈モデルの構築と1次元血流解析を行った.本解析の目的は,willisの動脈輪からの血管分岐世代ごとの脈波の減衰過程を明らかにすることである.現時点で被験者個別脳動脈モデルを用いたテスト解析を終え,入口および出口での境界条件の妥当性について着目する必要性を明らかにした. 細胞スケールにおける脳内物質輸送問題の解析に向けた準備として,直径15マイクロメートルから50マイクロメールにおける直円管路内での赤血球単体の流動挙動を解析し,管径やレイノルズ数依存的な赤血球の安定した流動挙動を明らかにした.本結果の一部は,既に査読付き国際雑誌論文して報告済みである.上述の知見は,微小流路デバイスを用いた細胞分離技術や新たな細胞検出技術の基礎知見として有用であると期待している.また,国際的なレオロジー学会(SCHM-ISCH-ISB2021, ACROS Fukuoka, Fukuoka, Japan, Jul. 4-7, 2021)において血球流動に関する研究発表を行い,その内容が評価されたことでRising Star Awardを受賞した.上述した2件の論文発表以外での国際査読付き論文は2件(計4件)である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
血管周囲腔の脳脊髄液流れに関する数値解析を行い,脈波由来の脳脊髄液流れに関する新たな流体力学的知見を示すことに成功し,その結果は査読付き国際雑誌論文(Journal of Theoretical Biology)として報告済みである.全脳スケールにおける血流動態については,1次元波動問題としてモデル化し,被験者個別の脳動脈モデルを用いた解析を行った.この解析から,出口境界条件に関する新たなモデル化の必要性を確認した.次年度では,構築した1次元血流モデルによって血管分岐世代ごとの脈波の減衰過程を明らかにすることが目標となる.この1次元血流解析に先立ち,心臓血管系における1次元血流解析を行い,上述の出口境界のモデル化を行うための基礎検討が完了している.さらに,細胞スケールの流れに関しては,赤血球流動と酸素輸送に関する3次元血流解析,及び全脳スケールの被験者個別脳動脈モデルを用いた3次元大規模血流解析は終えている.これらの結果については,査読付き国際雑誌論文して報告する準備を進めている.特に血球流動解析に関する数値解析では,管径やレイノルズ数依存的な赤血球の安定した流動挙動を明らかにすることに成功し,結果の一部については既に査読付き国際雑誌論文して報告済みである.以上の状況から,現在までの進捗状況をおおむね順調に進展していると評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
1次元脳血流解析の事前準備として,心臓血管系における1次元血流解析を行っている.この解析中で得られた下肢部への血流量や主要大動脈の圧波形を参考に,脳動脈モデルにおける出口境界条件を設定する.その上で,ウィリス輪動脈から8世代分岐までの脳動脈を対象とした血流動態の解析と脈波解析を行う. 一方,赤血球流動と酸素輸送に関する3次元血流解析,及び全脳スケールの被験者個別脳動脈モデルを用いた3次元大規模血流解析は終えているため,これらの知見を査読付き国際雑誌論文して報告する準備を並行して進める.細胞スケールにおける酸素輸送問題は,酸素濃度及び酸素飽和度の移流拡散方程式としてモデル化しているため,このモデルを拡張し,酸素以外の高分子タンパク質の移流拡散問題を解析する準備を進める.最終的には,代謝も考慮した組織スケールにおける老廃物の輸送や沈着に関する力学的概念を提示する.
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Research Products
(19 results)