2021 Fiscal Year Annual Research Report
Challenges to the remaining issues of therapeutically valuable pseudo-natural peptides and products
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20H05618
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菅 裕明 東京大学, 大学院理学系研究科, 教授 (00361668)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仙石 徹 横浜市立大学, 医学部, 講師 (60576312)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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Keywords | 特殊ペプチド / 擬天然物 / 薬剤探索 / コロナウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
本特別推進研究計画の申請者は、一貫してCuriosity-Driven-ResearchとTechnology-Driven-Researchの両輪で研究を推進し、非タンパク質性アミノ酸を望みのtRNAにアシル化することを可能にしたリボザイム(フレキシザイム)の開発、フレキシザイムと再構成無細胞翻訳系(FITシステム)を組み合わせた遺伝暗号リプログラミング技術の革新とそれを活用した特殊ペプチドの翻訳合成、特殊ペプチドの翻訳合成と試験管内(mRNA)ディスプレイを組み合わせたRaPIDシステムにより生理活性中分子化合物の超迅速探索、を達成してきた。これまで様々な細胞内標的に対して特殊ペプチドを獲得してきたが、最近になりいくつかの特殊ペプチドに細胞膜透過性があることがわかった。しかし、その構造膜透過性相関に関しては十分な理解が進んでいない。また、ペプチド鎖への導入すら困難と言われてきたβアミノ酸やγアミノ酸に関しても、この数年で創出した人工tRNAを用いることにより、ようやく連続導入も可能であることを示した。しかし、これらの特殊アミノ酸を含む特殊ペプチドのライブラリー化や活性種探索はまだ初期段階にあり、そのポテンシャルの検討は十分できていない。また、天然物には遺伝暗号リプログラミングでは直接導入ができない化学構造を持っている分子も多く、それらを人工的に導入しライブラリーを構築する技術や探索の実証には十分至っていない。さらに、中分子薬剤に最も期待されている細胞膜透過性、さらには経口性につながる小腸吸収性をもつ化合物を確実に獲得する基盤技術としては未完成といえる。これらの残された課題を解決し突破することが、本研究の主題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
環βアミノ酸を含む特殊環状ペプチドライブラリーの構築②に成功し、2つのタンパク質標的に対して結合分子の探索し、それぞれに対し高い特異性と阻害活性をもつ特殊環状ペプチドの同定に成功した(Nature Chemistry 2020)。また環γアミノ酸を翻訳によってペプチド鎖に導入する技術確立を達成し(JACS 2020)コロナウイルスに関わる細胞内標的に対して阻害剤候補を探索、オックスフォード大学の研究者らとその同定および不飽和環アミノ酸含有特殊ペプチドの翻訳合成にも成功した(JACS 2020)。また、ペプトイド・ペプチドハイブリッド型ライブラリーの構築も試み、がん関連細胞内標的に対して探索を行い、CAPAアッセイにより膜透透過性をもつことが確認された。 翻訳後酵素修飾された擬天然物ライブラリーの創製③についても、本研究の開始以来、着実な成果が得られ、トリプトファンプレニル化酵素KgpFのゲノムマイニングで発見したLimFの研究においては、LimFがヒスチジン側鎖のC2位にゲラニル化する酵素であることが判明した。この酵素は研究分担者の仙石研究チームと共にX線構造解析にも成功し、その機能と活性中心の関係を世界で初めて解明することができた。さらに、ラクタゾール生合成系の試験管内再構成にも成功し(Nature Comm 2020)、そのライブラリー構築に関する前準備も進めた(2報JACS 2020)。特殊ペプチドおよび擬天然物の細胞膜透過性の研究④においては、細胞膜透過性を測定するスタンダード法になりつつあるCAPAアッセイ法を研究室内で確立でき、既にこのアッセイ法を用いた活性種の検証が進んでおり、実際に細胞膜透過性をもつ特殊ペプチドの同定ができ、この研究目標についても初期目標はほぼ達成できたと考えており、この技術を活用した高活性膜透過特殊ペプチドおよび擬天然物の開発を加速させる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度において、進捗の少なかった目標は①の細胞膜透過を有する特殊ペプチドの構造膜透過性相関検討による探索基盤の確立、である。本目標は、スイスETHZのSereina Riniker教授と共同研究を組む予定であったが、コロナパンデミックで学生の派遣が困難になった環境的要因もあり、進捗の遅延が起きた。しかし、本目標は、②③④の研究目標の進捗で得られた細胞膜透過性を有する特殊ペプチド及び擬天然物が数多ければ多いほど、構造膜透過性相関検討は進めやすく、②③④の進捗が順調であることから、この研究目標はパンデミック終息後には一気に進めることができると期待できる。一方で、終息が大幅に遅れることも危惧しているため、並行して国内での共同研究者も模索していく。②③④の研究目標については、研究進捗が極めて良好であることから、これまで通りの計画に沿って研究を推進する。
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Research Products
(13 results)