2020 Fiscal Year Annual Research Report
Interdisciplinary Empirical Research Project on Disfluent Utterance Patterns
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20H05630
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
定延 利之 京都大学, 文学研究科, 教授 (50235305)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 良子 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (20347785)
舩橋 瑞貴 日本大学, 国際関係学部, 准教授 (20533475)
遠藤 智子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (40724422)
丸山 岳彦 専修大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (90392539)
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Project Period (FY) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 非流暢性 / コミュニケーション / 日本語教育 / 言語障害 / 意図 |
Outline of Annual Research Achievements |
非流暢性に対する、言語学・会話分析・第二言語教育学・言語障害研究という多分野からのアプローチを無理なくすべて収容できるような、総合的・包括的な非流暢性の研究枠組みの検討を進めた。この作業の代表的な成果としては、日本認知科学会でのパネルセッション「非流暢でぎこちないくせにうまくいく行動者の資格とは?」(2020年9月19日)を挙げることができる。 他方、母語話者・学習者・言語障害者の非流暢性を研究分野ごとに観察し、対照分析を進めた。以下、それぞれの分野ごとに代表的な成果を述べる。 母語話者の非流暢性に対する言語学的ないし会話分析的な成果の代表としては、編著『発話の権利』(ひつじ書房)を挙げることができる。 また、言語学習(言語教育)の代表的な成果としては、社会言語科学会第45回研究大会でのワークショップ「日本語教育と『非流暢性』 ―その言語的な実現と相互行為上の役割に注目して―」(2021年3月13日)がある。 言語障害研究は、コロナの影響で、Waveの代替的手法として、接触が少なく手軽にデータが取れる超音波断層撮影装置を購入し、調音動態の調査研究を進めた。 なお、本研究の実証性を確保するために構想されている、日本語母語話者の非流暢な発話の電子資料館、母語話者のように非流暢に話す音声合成システム、母語話者のように非流暢に学習者が話すための日本語の教科書の開発といった具体的なモノづくりについて、本年度から作成作業を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、採択通知を受け取ったのが8月末日であったが、そこから7か月の短期間のうちに、著書1冊、論文3篇、発表12件、招待講演3件を通じて成果を公表でき、さまざまな研究者と意見交換できたことは、準備していたとはいえ、当初の予定以上の成果であった。これは、次年度以降の展開をはかる上でも、また、若手研究者を育成する上でも大きな意義があった。 また、期間中に、学会でワークショップやパネルセッションを開催できたことも、大きな成果である。その1つは、日本語教育関連のワークショップ「日本語教育と『非流暢性』 ―その言語的な実現と相互行為上の役割に注目して―」を社会言語科学会第45回研究大会(2021年3月13日)で開催できたことである。さらに、日本認知科学会でのパネルセッション「非流暢でぎこちないくせにうまくいく行動者の資格とは?」(2020年9月19日)、は、記述言語学・コーパス言語学・会話分析・言語教育・言語障害の研究者(研究代表者・研究分担者)がそれぞれの分野を超え、さらに関係論的ロボティクス研究者・岡田美智男氏の「ぎこちない」ロボットも含めて、運動の根底と社会について論じ合えたことは大きな収穫である。以後、これら5分野が総出で学会や学術誌に投稿するというパターンが定着していく契機となった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの感染拡大の影響は現時点においても依然として予測し難いところがある。そのため、手近なところから確実に作業を進めて、成果を挙げていきたい。 審査員の所見でも指摘されていたように、このプロジェクトの生命線は、記述言語学・コーパス言語学・会話分析・言語教育・言語障害研究といった学問分野の研究を共働させるところにある。この点を堅持して、それぞれの分野のグループが自身の分野で成果を発表するだけでなく、できるだけ多くの学会や学術誌において、研究代表者と研究分担者の全員が発表・投稿し、分野間の対話を進め、学際的なアプローチを展開していきたい。 最終成果物として約束しているのは、電子資料館、教科書、そして英文の論文集という3点である。が、これらとは別に、和文の論文集も、なるだけ早期に出版し、その出版作業を通して、非流暢性に関する分野を超えた概念発想を得て、最終的な英文論文集のための足場固めをしておきたい。 また、今後の言語研究・発話研究・コミュニケーション研究への根本的な貢献となるような、新しいタイプのコーパスも開発を目指したい。
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[Book] 発話の権利2020
Author(s)
定延 利之(編著)
Total Pages
244
Publisher
ひつじ書房
ISBN
978-4894769830
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