2020 Fiscal Year Annual Research Report
Application of Behavioral Economics to Policy Issues: Healthcare, Disaster Prevention, Crime Prevention, Labor, and Education
Project/Area Number |
20H05632
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大竹 文雄 大阪大学, 経済学研究科, 特任教授(常勤) (50176913)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 勝 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (10340647)
小原 美紀 大阪大学, 国際公共政策研究科, 教授 (80304046)
平井 啓 大阪大学, 人間科学研究科, 准教授 (70294014)
島田 貴仁 科学警察研究所, 犯罪行動科学部, 室長 (20356215)
山村 英司 西南学院大学, 経済学部, 教授 (20368971)
佐々木 周作 東北学院大学, 経済学部, 准教授 (20814586)
黒川 博文 兵庫県立大学, 国際商経学部, 講師 (90811430)
李 嬋娟 明治学院大学, 国際学部, 准教授 (40711924)
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Project Period (FY) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | ナッジ / 医療 / 労働 / 教育 / 防犯 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナ感染症の感染対策を呼びかける効果的なメッセージの研究を行った(Sasaki, Kurokawa, Ohtake(2020))。この論文では、第一回の緊急事態宣言中に6つのメッセージをオンライン調査でランダムに送付し同一個人を4回に渡って追跡調査し、感染対策への効果を検証した。その結果、3密回避などの感染対策が身近な人の命を救うという利他的利得メッセージが実際に人との接触を避けることに短期的には効果的だった。しかし、メッセージを繰り返すことで意欲には効果が残ったが、実際の行動への影響は観察されなくなった。 大竹・坂田・松尾(2020, 行動経済学)は、豪雨災害時に早期避難を促すナッジメッセージの効果検証を行った。広島県民を対象にしたアンケート調査をもとに、仮想的に災害が発生した状況で、行動経済学的なメッセージが住民の避難意思に対して与える影響について分析した。また、8ヶ月後に行った追跡調査によって、長期的な意識や行動変容についても検証した。その結果、社会規範と避難行動の外部性を損失表現あるいは利得表現で伝えるメッセージが直後の避難意思形成に効果的であることを明らかにした。一方、追跡調査の結果によれば、避難行動の外部性を利得表現で示したメッセージが長期的な避難意識や避難準備行動につながっていた。 Lee, Ohtake (2021, Journal of Happiness Studies)は、他者の所得が幸福度に与える影響について日米比較を行った。他者意識が高い人ほど日本では不幸だが、米国では幸福であること、米国で見られた他者意識と幸福度の正の関係は、意識の高い人が下方比較するという参照集団の所得知覚に起因することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
行動経済学の政策応用として、医療、防災、防犯、労働、教育という多方面にわたる研究を行ってきた。行動経済学は、政策への応用が特に期待される分野である。中でも、日本におけるCOVID-19の感染症対策は、個人への罰則を伴った行動規制が法的にできない状況で、行動経済学的なアプローチに頼ってきた。その意味で、COVID-19の感染拡大は、本研究の緊急性と重要性を高めることになった。行動経済学の政策応用の中で、医療、教育、労働については、CODIV-19に関する研究成果を数多く、早いタイミングで学術研究として発表することができた。社会科学系の研究で、短期間に多くの引用がなされることは稀であるが、本研究課題の成果の中には、発表後短期間に多くの研究で引用されたものがある。特に、COVID-19の影響について毎月個人追跡調査を行っているものは、貴重なデータベースとなっている。また、ワクチン接種についても意向調査だけでなく、同一個人を追跡し、ワクチン接種行動についても把握している。これらのデータベースから既に多くの研究成果を生み出しているが、これからも多くの研究成果を生み出すことが期待される。社会科学系の研究では、個人の特性の影響と政策や環境の影響を分離して把握することが困難なことが多い。しかし、COVID-19の感染拡大という非常に大きなショックは、政策や環境のショックが大きく、地域的なショックの差もあるため、政策効果や環境の変化の影響を分析することが可能になる。したがって、行動経済学の政策応用について、想定を超える研究の進展があり、今後も期待以上の成果が見込まれると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
医療の行動経済学では、COVID-19に関わる行動経済学的研究を継続する。個人追跡アンケートを継続して、2年以上に渡る感染継続が、人々に与えた心理的、社会的、経済的な影響がどのように改善されていくのかについて、調査を行う。ワクチン接種についても4回目接種が計画されているため、その接種意欲と接種行動についての調査を行う。 防災の行動経済学では、避難行動を呼びかけるメッセージの効果について、就業状態に着目した異質性の分析を行う。 防犯の行動経済学では、特殊詐欺対策の警察署との共同での介入研究を継続し、その結果をまとめ論文化する。 労働の行動経済学では、COVID-19がテレワークの実施に与えた長期的影響について、JILPTの個人追跡調査を用いた分析を行う。また、オキシトシが競争選好および信頼に与える影響を女性の被験者を対象に再実験を行う。これは、妊娠出産でオキシトシンが多量に分泌されることが、女性の競争選好を弱めることで、労働市場から退出することにつながっているのではないか、という仮説を検証するものである。さらに、複数の企業の人事・総務担当者と、企業における人事、総務に関わる行動経済学的な介入研究の可能性について検討を進め、研究につなげる。 教育の行動経済学においては、2020年の全国一斉休校および2021年度のCOVID-19の第6波の流行による学級閉鎖が学力および非認知能力に与えた影響について、奈良市および尼崎市のデータを用いて分析を行う。また、尼崎市が特区として行ったそろばん教育の重点化が、子どもの学力と非認知能力に与えた影響の分析を行う。さらに、塾に通うことが、学力と非認知能力に与えた影響についても分析する。教育における手洗い教育が、成人になってからの感染対策とどのような関係があるのかについて、研究を行う。
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Research Products
(29 results)
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[Journal Article] Proactive Engagement of the Expert Meeting in Managing the Early Phase of the COVID-19 Epidemic, Japan, February?June 20202021
Author(s)
Saito Tomoya, Muto K., Tanaka M., Okabe N., Oshitani H., Kamayachi S., Kawaoka Y., Kawana A., Suzuki M., Tateda K., Nakayama H., Yoshida M., Imamura A., Ohtake F., Ohmagari N., Osaka K., Kaku M., Sunagawa T., Nakashima K., Nishiura H., Wada K., Omi S., Wakita T.
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Journal Title
Emerging Infectious Diseases
Volume: 27
Pages: 1~9
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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